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流れ星を手のひらに  作者: ただみかえで
第12章 卒業
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第109話 卒業式

いよいよ卒業です……

「これより、第32期 流星大学附属女子高校卒業式を開始します」


 とうとう来てしまった。

 トラ先輩とステラ先輩の卒業式。

 ゆっくりと先輩たちが入ってくるのをじっと見つめる。

 ……壇上で。

 ううん、選挙の時もそうだったけど、このまま事あるごとに司会をさせられるんじゃないだろうか、とちょっと怖い。

 というか。

 ケイ先輩のお願いを私が断れるとも思えないので、きっとこの未来は確定事項なんだろうなぁ……。

 先輩の役に立てるからいいけど。


 あ、トラ先輩たちの組が入ってきた。

 やっぱり、あのキレイな金と銀の二人はとてもよく目立つ。

 出入り口から入る光を後ろに背負った姿は、まるで映画の1シーンみたいだ。

 そのまま隣の流星大に通うって言ってたから、遠くに行くわけじゃないんだけど。

 けれど、やっぱり寂しいのは寂しい。

 とはいえ、司会をしながら泣くわけにもいかないので、気を引き締めなければ。

 すでに崩壊しそうな涙腺にカツを入れて堪える。

 ああ、逆に司会でもやってなければずっと泣いてそうだし、よかったのかもしれないなぁ。

 ふぅ。




カチッカチッカチッカチッ


 広い体育館に、時計の音がゆったりと響く。

 いつもはガヤガヤしているのに、なんだか不思議な気分だ。


 式は何事もなく進んでいた。

 卒業証書授与も終わり(通りすがりに、トラ先輩とステラ先輩に「がんばって」と言われた時が一番泣きそうで危なかった)、学園長のご挨拶が続く。

 これが終わったら、いよいよケイ先輩の送辞だ。

 自分が喋るわけではないのに、なんだかすごく緊張してきた。


「――あなたたちの目の前に広がる、明るい未来に幸あらんことを。

 大切な3年間に関われたことを誇りに思います。

 卒業おめでとう!!」


 パチパチパチパチ


 割れんばかりの拍手が体育館内を満たす。

 いつも思うけど、うちの学園長ってほんと生徒のこと大切に考えてくれてるってのがよくわかる。

 だから、みんな耳を澄まして聞くんだよね。

 時計の音が気になるくらいに。

 中学の校長先生の話なんて、こう言っちゃうと怒られるけど、誰も聞いてなかったもんなぁ。

 別に悪い校長先生だった、ってわけでもないんだけど。

 長くない、ってのもあるのかもな~。


 っとと。

 聞き入ってる場合じゃない。

 拍手が止んできたら、私のお仕事だ。


「続きまして、送辞。

 在校生代表、冷水 (ケイ)!」

「はいっ!」


 私の呼びかけに大きな声で返事が返ってくる。

 後ろの在校生席から、ケイ先輩がゆっくりと歩いてくる。

 まっすぐ前だけを向いて、ぴしっとした姿勢で。

 遠くだからちゃんとは見えないけど、キュッと引き締まった顔にはいつもより凛々しく見えて、けど少しピリッと張り詰めてるようにも見えた。

 当たり前だけど、先輩でもやっぱり緊張するよね。

 う、一瞬忘れていた緊張が蘇ってきた……。

 一歩一歩近づいてくる先輩の足元をじっと見つめて待つ。

 時間の流れが遅くなったかのようだ。


タン……タン……

カチッ……カチッ……


 規則正しいリズムで床を踏む上履きの音と時計の音だけがする、静かな体育館。

 

 そうして、壇上に上がる階段の前まで来ると、上を見上げた先輩と、下を見つめたままの私の視線が重なる。


「……ふふっ」


 え?

 その瞬間、ほんの少しだけ先輩が笑った……ような気がした。

 ちょうど私しか見ていない所だから、きっと誰も気づかなかったと思うけど。

 今はもう、さっきまでの真面目な顔。

 けれど、あれ? なんかさっきまでのピリッとした感じはない。

 緊張が少し解けてる??

 でもなんでだろう。

 歩いているうちに落ち着いた、とかだろうか。


 ……もしかして、私、変な顔してた!?

 え? それで笑ってたの!?

 ま、まぁ、緊張が解けたのならそれでいいんだけど……。


 階段を上り、壇上中央へ向かっていく。

「ありがと」

 通り過ぎる時に、そう一言を残して。


 うう、やっぱり変な顔してた確率が高いなぁ。

 たぶんケイ先輩にしか見られてないだろうからいいけど……あとで聞いてみよう。

 あ、でも、ちょっと怖い気も……。


 ステージ中央、演台の前に着くと、大きく深呼吸をしたケイ先輩。

 キリッと、前を向いてから一拍おいて口を開く。


「送辞」


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