第94話 出発
PiPiPiPiPiPiPi…………
「うぅ……ん」
時計を見ると6時。
なんだかんだで早起きにも慣れてきたなぁ。
前は目が冷めてから動き出すまで時間かかったけど、すんなり起きられるようになった。
体を起こしてぐぐーっと伸びをする。
部屋の中は温かいけど、窓が結露してる所を見ると今日も寒そうだ。
よし、今日もお弁当作り頑張ろう!
いつものように卵焼きを作って(もうほとんど失敗しなくなった)、お弁当箱に詰めていく。
「今日からハワイか~」
「ハワイ?」
つい口から出てしまった言葉に、お母さんが反応する。
「うん、2年生が今日から修学旅行なんだって」
「ああなるほど」
別に、いまでも毎日一緒にいるわけではないし、冬休みの間なんかはそれこそ1週間くらいは会わなかった。
……んだけど、なんというか会いたくても会えない所にいる、っていうのは寂しく感じてしまう。
「そういえば、お母さんって海外行ったことあるの?」
「海外旅行は、新婚旅行で行ったっきりねー」
「へー、そうなんだ。
どこ行ったの?」
「ラスベガス!」
「お、おお……」
予想外の答えにびっくり。
「カジノ楽しかったわよー。
あなたも、いつか行ってみるといい経験になるわよ」
「うん、確かにおもしろそう」
「すばるもなゆたも。
ギャンブルで身を滅ぼすタイプじゃないと思うしね」
「あはは、それは大丈夫!」
何より勝てるとも思えないしね!
「おねえ、お母さん、おはよー」
「おはよー、なゆー」
そんな話をしていると、なゆが降りてきた。
「何が『大丈夫』なの?」
「あのねー、お母さんたち新婚旅行でラスベガス行ったんだって!」
「へぇー」
びっくりなゆに、さっきの話をする。
「確かに、ギャンブルにハマる度胸はないね」
うんうん……って!
「度胸の問題なの!?」
「え? だって、おねえ。
コンビニで1回500円のクジ引くのに30分くらい悩むじゃん」
「う……確かに……」
あのクジ、ついやりたくなっちゃうんだよねぇ。
おっきなぬいぐるみとか飾ってあると特に。
でも、大きな景品があるやつって、1回あたりが高くて。
バイトもしてない高校生じゃ、500円は大金なのだ……。
「うーん、バイトしてみたいなぁ……」
「……おねぇ、どこからそういう話になったの?」
「や、コンビニクジって高いよね―、って思って」
あれ、なんか首をかしげられたぞ?
わかりやすい説明だと思ったんだけどなぁ。
「あんたたち学校バイト禁止じゃないし、勉強に支障がでない範囲でやってみたら?」
「うん、なんかちょっと考えてみる!」
バイトか~。
今まで考えたこともなかったけど、ちょっと楽しそう。
◇
「あ、ケイ先輩!
おはようございまーす」
「あら、おはようすばるん、なゆたちゃん」
「おはようございます」
学校へ着くと、ちょうど校門の前でケイ先輩に会った。
一旦学校に集合する、ってのは聞いてたけど、さすがに忙しくて会えないだろうな、って思ってただけにびっくり。
でも、すっごく嬉しい!
「おねぇ、にやけすぎ」
「うぐ……」
なゆたさん、耳元でコソッとツッコむのやめてもらえませんかね?
「どうしたの?」
「い、いえ!」
ほら、怪しまれたじゃん!
「ふわぁぁぁ……う、ごめんなさい……」
大きなあくび。
ケイ先輩にしては珍しい。
「どうしたんですか?
あ、楽しみで眠れなかった、とか!?」
「あのね……小学生じゃないんだから。
午後の便で行くんだけど、7時間くらい乗って到着したら今日の朝なのよ。
で、飛行機の中でぐっすり寝てリセットしようと思って、昨日ほとんど寝てないのよ」
「ほわぁ、時差ってすごいんですね……」
19時間だ、ってのは知ってたけど、午後出てその日の朝に着く、ってのはなんとも不思議だ。
「気をつけて行ってきてくださいね」
「ふふ、ありがと。
じゃ、点呼取ったりしないとだから、行くわね」
「あ、あの。
メッセージ送ってもいいですか?」
「もちろんよ。
こっちも、面白い写真とか送るわね」
「はーい。
いってらっしゃーい!」
「うん、行ってきます」
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