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流れ星を手のひらに  作者: ただみかえで
第11章 バレンタイン
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第93話 試作

 てってけてけてけてってってー♪


 さぁやってまいりました、すばるのチョコレートクッキングのお時間です~♪


 ……と、まぁ、うん。

 なんか自分でテンション上げないと、妙に緊張してしまう。

 料理自体は最近がんばってるはずなんだけど、お菓子作りってハードルが高い。


「なに? すばる。

 力入ってるわね」

「お母さん……」

「そんなに緊張しなくても、ただ溶かして固めるだけだから大丈夫よ」

「だってー。

 今回はケ……人にあげるものだから失敗できないし」

「ふぅ~ん?」

 う、なんかすっごくニヤニヤした目で見られてる気がする……。

「なるほどなるほど。

 憧れの君への贈り物ってわけね~?

 それは気合が入るってもんだ」

「ち! ……がわなくもなくもないけど、そ、そういうんじゃなくて!!!」

「はいはい。

 なんでもいいけど、もっと肩の力を抜きなさい」

「は~い」




 今日は日曜日。

 朝からお母さんとチョコ作りだ。

 なゆにも『一緒にやる?』って聞いたんだけど、普通に買ってくるからいいとのこと。

 せっかくだからやればいいのに。

 まぁでも、いたらいたでお母さんとなゆの二人にからかわれ続けたのかも、と思うとこれでよかったような気もする。


「はい、じゃあまずはお湯を温めましょう」

「はーい」

 たっぷり目にお水を張ったお鍋を火にかける。

「沸騰させちゃダメだからねー。

 ちゃんと温度はかってやるのよ」

「大丈夫!」


 色々調べてみたところ、チョコを単に溶かして固めるだけ、とは言え温度管理がすごく大事、らしい。

 一回50℃くらいで溶かした後、30℃くらいまで冷まして、そこからもう一回温める、ってことをやるらしい。

 テンパリング、って言うんだって。

 実際、そうしないと不味くなるわけじゃなくて、やった方が美味しくなる、ってことらしくて。

 お母さんは『もっと適当でいいのに』なんて言ってたけど、どうせなら美味しい方がいいに決まってる。


 ということで、買ってきた温度計を手に……じゃない。

 お湯が温まるまでの間にチョコを刻まなきゃ。

 ビターの板チョコを開けてまな板に。

 手の熱で溶けちゃわないように、できるだけチョコ自体を触らないよう気をつけて包丁を入れる。

 思ったよりは固くないけど、そこそこに切りにくい。

 大きな塊を買おうとしたら、刻むのが大変だから板チョコにしときなさい、ってお母さんが言った意味がわかった気がする。

 こんな薄いのでさえすんなりとはいかないのに、あの塊を相手にできる気がしない。


「刻むのに一生懸命なのはいいけど、お湯も見なさいね」

「あ!」

 つい集中しちゃったけど、お湯が沸騰しちゃったらダメだ。

 慌てて温度計を入れると60℃。

 うん、このくらいでいいはず。


「ねぇ。

 ふと思ったけど、それ、先に刻んでからお湯沸かせば良かったんじゃ?」

 ……あ。

 ネットに載っていた手順通り、お湯を沸かしながら刻んだけど、よく考えたらその通りだ。

 そういう所、もっと臨機応変にできるようになりたいものだ。

 反省は後にして、お湯が冷める前に残りのチョコも刻んでしまおう。


「よし、こんな所かな」

 あらかた細かくなったチョコを見る。

「うん、いいんじゃない?」

 お母さんのお墨付きももらった。


 ボウルの縁に温度計を固定して(クリップ付きなのだ!)、刻んだチョコを入れる。

 さぁ、いよいよ湯煎だ!


「ドキドキする……」

「見ててあげるから、ゆっくりやりなさい」

「うん」

 ボウルをお湯の上に浮かべて、ちょっと待つ。

「おお……溶けてきた……」

 見ていると、底の方のチョコがとろりとしてくる。

 ヘラで少しずつ混ぜていくと全体が溶けてきて、濃厚なココアみたいになってきた。

 かき混ぜながら、温度計をじっと見つめる。

 40℃……45℃……50℃!

 パッとお湯から外して……あ! 氷水用意するの忘れ……あれ? ある……?

「すっかり忘れてたみたいだから、準備しといたわよ」

「ありがとうお母さん!!」


 溶けたチョコを固まらないようかき混ぜながら冷やして、30℃くらいまで下げて……うん、こんなもんかな。

 あとはココアを入れてゆっくりかき混ぜる。


 ココアを混ぜるのにもたもたしてたら、温度が下がり過ぎそうになったのですこーしだけお湯に乗せて固まらないようにして。

「うん、いいんじゃない?」

 最後のお母さんチェックもクリア!

「おお……うまくいった……」

 感動……。

「ほら、ボケっとしてないで型に入れちゃいなさい。

「うん!」

 危ない、ここで固まってしまったら意味がない。


「……お母さん?

 なんで、ハートの型があるの??」

 おかしい、確か星の形の型しか買ってこなかったはずなんだけど……。

「え? だって憧れの君に渡すんでしょ?

 すばるが湯煎してる間に探しておいたわよ?」

「……むぅ」

 いや、うん、ありがたくないわけじゃないんだけど。

 そのニヤニヤ顔で言われると、素直にお礼を言いたくなくなる……。

 せっかくだし……じゃなかった、わざわざ探してくれたからしょうがなく使わせてもらうけど。


 それぞれの型にチョコを半分くらい流し入れ、ドライフルーツとかナッツとかを乗せていく。

 作り方のページには『固まりだしてから』ってあったけど、そこそことろっとしてるのですぐやっちゃってよさそう。

 残り半分のチョコで蓋をして――

「できたー!」

「うんうん、上出来ね」

 粗熱が取れたら冷蔵庫で固めたら完成だ。

「簡単だったでしょ?」

「……うん、思ったよりは。

 他のお菓子も今度やってみようかなぁ……」

「ふふふ、あのすばるがこんなになるなんてねぇ……」

「な、なによー」

「ううん、いいことじゃない」

 ほんと、そのニヤニヤ顔さえなければ……。

 一生分ニヤニヤされたんじゃないだろうか……。


「で、もう一つ作るんでしょ?」

「あ、うん!

 そうそう」


 実を言うと、さっきのはケイ先輩だけじゃなくみんなの分も作ってある。

 一人だけ手作り、とか、みんなに何を言われるかわからないし。

 でも、やっぱりケイ先輩にはトクベツを贈りたい!

 ってことで、サイトに載っていた別のものにもチャレンジすることにしたのだ。

 といっても、テンパリングしなくていい分、こっちの方が簡単かもしれない。

 よし、がんばろう!



※テンパリングの手順は、明治さんのサイトを参考にしました★

https://www.choco-recipe.jp/milk/basic/basic/basic_06.html


いつも応援ありがとうございます♪

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