第90話 初詣
今回から第3部スタートです!
年が明けた。
あのクリスマス会から1週間、あっという間だったなぁ。
宿題やったり(冬休みは少なめだからいいよね!)、大掃除したり。
そうこうしているうちに、毎年恒例の家族旅行の日になって。
お父さんのこだわりで、大晦日~元旦はいつも温泉に来ることになっている。
普段あまり遠くに行くことなんてないから楽しいんだけど、渋滞がひどいのだけはなんとかならないかなぁ……。
みんなおやすみだしね、しょうがないとは思うんだけど。
「おはよー」
旅行から戻って今日は1月2日。
ゆっこたち中学の頃からの仲良しグループと初詣に行く日だ。
「あれ、お父さんは?」
リビングに降りてくると、いつも早起きのお父さんの姿がない。
「ああ、昨日の運転疲れで腰が痛いって寝てるわよ」
「なるほど……すごい時間かかったしねー。
そんな無理して行かなくてもいいのに」
「そう言わないのよ。
娘たちと旅行に行くの楽しみにしてるんだから」
「ふぅん……そういうもん?」
「そういうもんよ。
ま、行ける間は付き合いなさいな」
「はーい」
◇
「で、今日は2回めになるわけ?」
「そうなんです。
なので、初ではない詣でですね」
今日は生徒会・天体観測部チーム合同の初詣だ。
といっても、ステラ先輩は帰省してていないし、トラ先輩もそれについていったとのことで、現役生のみだけど。
それに、私となゆは昨日ゆっこたちと行ってるから、スミカ先輩に言ったとおり2回め詣でだし。
こうやって休みの間もみんなと会えるのが楽しいからいいのだ。
昨日もすごく楽しかった。
ゆかりが約束通り彼氏を連れてきていたので、散々みんなにからかわれてたけど、それを上回る勢いでノロケ回っていたのは面白かった。
「あの大人しいゆかりが、好きな人を前にするとあんな風になるなんてねぇ……」
中学の頃には見たことのない姿に、思わずつぶやいたら、
「おねぇも人のこと言えないよ?」
ってなゆが言うもんだから、矛先が私に向いて大変だった……。
「ふぅ……」
「どうしたの? すばるちゃん、ため息なんてついて」
「あ、えっと……」
どうしよう。
いくらスミカ先輩が、私のケイ先輩への想いを知ってるとは言え、好きな人のことでからかわれて大変だった、なんてみんなの前では言えない……。
そうだ!
「お、おみくじが末吉だったので、今日こそは大吉を引きたいなー、って」
「あー、『末吉』って一応『吉』ではあるけど、なんというかすごく微妙な気分になるよね」
「ですよねー。
どうせなら『凶』が出てくれたほうがいっそスッキリするのに」
「確かに」
しかも、『恋愛』の項目、『難しい』って書いてあって余計落ち込んだな……。
「私は大吉だったので、今日は引かない」
隣で、ふふん、とドヤ顔なゆが宣言する。
「いいなー。
ボクも大吉引きたい」
最近なゆのドヤ顔率が上がっている気がする。
あまり表情を表に出さなかったので、いいこと、なのかな?
ドヤ顔メインなのはちょっと気になるけど。
「てか、おみくじってそんな何回も引くようなもんだったっけ?」
今日こそは! とそっと気合を入れている横からマキちゃんのツッコミが入る。
「う……だってー」
少しでもいい結果を引きたいオトメゴコロを理解して欲しい。
「おみくじって~~、別に1回だけ~~、な~~~~んて決まり、ないよ~~~?」
「そうなの!?」
かのちゃんからの助け舟に思わず大きな声を出してしまった。
横でミクちゃんも同じリアクションをしている。
「そうだよ~~~。
気に入らなければ、10回でも~~~100回でも~~~引いていいんだよ~~~」
「そ、そんなには引かないけど、もう一回くらいはやりたいかな」
何回引いてもいいからって、大吉が出るまで引き続けるのもなにか違う気がするし。
「おねぇ、知っててリベンジしようとしてたわけじゃないんだ」
「えへへ」
なゆは知ってたみたいだ。
もう、それならそうと昨日言ってくれたらいいのに!
「それにしても、さすがに誰も振り袖着てきてないですね」
ぐるっと全員を見ても、普段着のままだ。
「さすがに、着付けも大変だしね」
そう言うケイ先輩の着物姿、見たかったなぁ。
「ん?」
「あ、いえ!」
つい想像(妄想?)しながらじっと見てしまい、目が合ったケイ先輩に不思議そうな顔をされてしまった。
クリスマス会での告白。
アレ以来、ケイ先輩と会うのは初だけど。
何事もなかったかのようにいつもどおりだ。
もちろん、周りにみんながいる中、変に気まずくなっても嫌だけど。
全くなんの反応もない、ってのも寂しいなぁと思ってしまう。
もちろん、焦るつもりはないんだけど……。
「ほら、ぼーっとしてると迷子になるわよ?」
「はーい」
みんなは話しながら少し先に行っていた。
遅れている私に気づいていないわけではないけど、ケイ先輩が待っててくれていたので任せることにしたんだろう。
「行きましょう」
ケイ先輩の横に並び、そっと手を繋ぐ。
『その『いつか』ができるだけ早く来るよう、いっぱいアピールしちゃいます!』
あの日、言った言葉を思い出す。
気持ちを伝えたことで、先輩に対して『想い』を隠さなくてよくなったせいか、なんだか欲張りになったのかもしれない。
柔らかく笑う先輩が好き、って改めて思う。
繋いだ手から、私のドキドキが伝わるんじゃないか、なんて事を考えながら先輩を見ると、なんでもないかのように(本当にそうなのかもしれないけど)いつもの顔だ。
ちょっとだけ悔しい。
その後。
引いた『大吉』のおみくじに、
『恋愛:焦らずじっくり待て』
って書かれていて、神様には何でもお見通しなんだなぁ、としみじみ思ったものだった。
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