赤い髪の少女の予知
続けて読んでいただいてありがとうございます。
今回から一回の投稿分が短くなります。
今後、これくらいの分量で毎日投稿を予定しています。
ディックとリカルドが宿屋に戻ると、部屋から廊下に出てきたアリアとベルナに出くわした。
「あれ? どこかに行ってたの?」
「あぁ、こいつの武器を調達してきた」
「へぇ、見せて見せて! あ、これね?」
「あ、おい!」
ベルナはディックが持っていた剣を奪い取って鞘から抜く。
「へぇ……、なかなか個性的だね! 嫌いじゃないよ、こういうの!」
「おい! 返せよ!」
ベルナは物珍しそうにブンブンとディックの剣を振る。
ディックはそんなベルナに手を伸ばすが、ベルナはそれをサラッと躱した。
「簡単に武器を取られるディック君が悪いんだよー。返して欲し……っ」
剣がベルナの手から床に滑り落ち、鈍い音を立てる。
その剣の横に、ベルナは両手で頭を抱えて蹲った。
慌てて駆け寄ろうとするディック。
しかし、その前にアリアが手を伸ばしてディックを止める。
「待って」
「でも……」
「たぶん、予知だ」
リカルドが静かに告げる。
「予知……。予知って、いつもこうなのか?」
「あぁ、そうだ」
「……そうなのか」
それからは、誰も話すことはなかった。
アリアはベルナの隣にしゃがみ込んで様子をうかがっているが、ベルナに触れることはしない。
廊下には、ベルナの荒い息の音だけが響く。
その間、三人の心配そうな視線がずっとベルナに向けられていた。
しばらくすると、呼吸の落ち着いて来たベルナがゆっくりと立ち上がった。
それを側にいたアリアが支える。
「ありがとう、でも大丈夫! もう何ともないから!」
強がりのようにも聞こえるそのベルナの言葉。
しかし、強がりではないようだ。
ベルナは、アリアが支えていた手を離してもしっかり立っている。
それに顔色も悪くない。
「落としちゃってごめんねー」
そう言って床に転がっていた剣をディックに笑顔で渡すベルナはすっかりいつも通りだ。
剣を受け取ったディックは、急に元気になったベルナにポカンとしている。
アリアとリカルドは動じていないことから、おそらくいつもこうなのだろうと推測できる。
ディックに剣を返した後に、ベルナは、心配かけてごめん、と謝ってから、真剣な表情になった。
「次はアンバーっていう所みたい。何かから逃げてる人がその地名を言ってる場面を見た」
「アンバー……」
アリアはそう呟いて自分の部屋に入って行く。
三人もそれに続いて部屋に入った。
アリアは、リュックから地図を取り出した。
そしてそれを全員に見えるように机に広げる。
「ここか」
最初にアンバーの文字を見つけたらしいリカルドが、地図を指さす。
そこは、ラリマーの東。
ディックの村からラリマーまでの距離の五倍は距離がありそうな場所だった。
読んでいただいてありがとうございました。