灰色の景色 2
続けて読んでいただいて、ありがとうございます。
私事で投稿予定日を大幅に過ぎての投稿となってしまい、
申し訳ございません。
ディックたちがコラルらしき村に着くと、リカルドが何人かの人と話をしていた。
それを見たオリヴィアがスタスタとその輪に近づいて行って、リカルドたちに声をかける。
「それが生き残りか?」
「おう、オリヴィア、来たのか。どうやら生き残りは、これで全員みたいだ」
「もとの人数が分からないから、なんとも言えないな……」
「この村の人口は、もともと八十人くらいだよ。それがこんなに減ってしまって……」
リカルドとオリヴィアの会話を聞いていたのだろう。
老いた男性が弱々しい疲れ切った声でそう呟いた。
それを皮切りに、生き残った村人たちがぽつぽつと話し始める。
「これからどうしたらいいんだ……」
「家族も家も畑もなくなってしまった……」
そこに、村人たちの暗い雰囲気とは正反対の明るい声が割り込んできた。
「これってルインがやったの? だいぶ派手にやられたねー」
それは、いつの間にか村人たちの方へ来ていたベルナの声だった。
ベルナは辺りをキョロキョロと見回しながら、これはひどいねー、なんて言っている。
ベルナと一緒に来たディックたちは、そんなベルナの態度に焦り始める。
周囲には焼けてしまった建物や、畑が広がっている。
そんな光景を見ても能天気なベルナに、村人も眉を顰めた。
「おい、ベルナ、お前よくこの雰囲気でそんな態度とれるな。このままじゃ村人の反感買うから黙っててくれ」
この状況を見かねたリカルドが小声でベルナに注意する。
「えー、せっかく雰囲気を明るくしようとしたのにー」
「自分の村がこんなことになったんだ。明るくなんてできないだろ、普通」
「そんなもんかなー。ま、いいや。ベルナ、黙りまーす」
そう言ってベルナが黙ると、ディックたちもほっとした表情になる。
ベルナが黙って静かになったところで、オリヴィアが話しを切り出した。
「連れが失礼な態度をとっておいて申し訳ないんだが、この村で何が起きたのか教えてはもらえないだろうか?」
そう言ってオリヴィアは頭を下げる。
それにつられたのか、サイラスも一緒に頭を下げた。
きつめの顔の美人と大男という、見た目が怖い二人に頭を下げられたことで、村人は若干困惑しているようだ。
ひそひそと小声で相談している。
しばらくすると、リカルドと年が変わらないくらいの若い男が一歩前へ出て話し始めた。
「異変が起きたのは、昨日の晩でした」
どうやら話してくれることになったようだ。
「寝ようとして布団に入ったところで、爆発音が聞こえました。それで慌てて外に出たんです」
男はそこまで言うと、辛そうに拳を握りしめた。
「外に出ると、畑は火の海でした。そして、そこから広がった火が畑のそばの家を焼いていました。俺には何もできなかった。ただ、その火から逃げることしか……」
「消火は?」
アリアが問いかける。
すると、今度は中年の女が答えた。
「無駄だったよ。水をかけても消えなかった。あれはたぶんアビリティの炎だったんだろう」
「水で消せないなら、よほど強い能力者の仕業……。やはりルインか」
オリヴィアがそう呟くと、女がそれに反応した。
「たぶんそうだよ。ほら、あんた」
そして女は一人の女の子の背中を押して、オリヴィアの前に押し出す。
茶色の髪の毛を二つに結ったその女の子は、涙の溜まった目でオリヴィアを見上げた。
「その子がどうしたんだ?」
「この子が犯人から伝言を預かったって言うんだ。そうなんだろ?」
「う、うん」
「教えてもらえるか?」
女の子の目線に合わせてしゃがみ込んでから、オリヴィアは優しく微笑んだ。
それに少し安心したのか、女の子は話し始めた。
「あ、あのね、男の人が『俺たちルインは、次はアンバーに向かう』って旅の人に伝えるようにって」
「そうか、ありがとう」
オリヴィアは女の子の頭を軽く撫でると、立ち上がってディックたちの方を見る。
「この子はこう言っているが、どう思う? ルインが名乗るのはよくあることだから、今回もルインの仕業だとは思うが」
「旅の人にって……まるで俺たちが来るのが分かってたみたいな言い方じゃないか?」
ディックが疑問点を口にすると、アリアもそれに同意する。
「そうね。次の標的がアンバーなのも気になる」
「俺たちの次の目的地だもんなー」
「うん。ラリマーで盗聴されたのかも」
「ねぇねぇ、そんなことより、これからどうするかの方が大事じゃない?」
ディックとアリアが話しているところに、今までおとなしく黙っていたベルナが割って入ってくる。
「アンバーに行くか行かないか。どうするの、リカルドさん?」
「そりゃ、ルインの襲撃よりも先に着いて住民を避難させるに決まってんだろ。オリヴィアとの契約のこともあるしな。行くしかないだろ」
「うんうん、そう言うと思ってた。オリヴィアさんたちもそれでいいの?」
「あぁ、構わない」
「そっかそっかー、じゃあ早く出発しちゃおうよ!」
そう言って村から出ていこうとするベルナ。
それを見て慌てたように、村人が騒ぎ出す。
「ちょっと待ってくれ」
「俺たちはどうしたらいいんだ」
「少しくらいなにか手伝ってくれたっていいだろ」
腕にすがられて、リカルドは困ったように眉を下げる。
ディックとアリア、サイラスも歩いていくベルナと自分たちを引き留める村人を見比べて困っているようだ。
「落ち着いてくれ」
騒ぐ村人の間に、オリヴィアの凛とした声が響いた。
「この村には、王都から定期的に作物を回収に来ているんだろう? 次の回収はいつだ?」
「あ、明日だけど」
「それなら、その時に事情を話して助けてもらってくれ。それまでの食料は置いていく。私たちも先を急いでいるんだ。悪い」
そう言うと、自分のカバンからそこにいる人数には多いくらいの食料を取り出して村人に渡した。
そして、踵を返してベルナに続いた。
もう村人たちが何か言うこともなく、ディックたちも二人の後を追いかけて村をあとにした。
お読みいただいて、ありがとうございました。
今後の投稿は不定期となりますが、
また読んでいただけると嬉しいです。




