真っ赤な火の村 5
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ディックとヴィンスが村の奥の方に進んでいくと、ベルナの声が聞こえてきた。
村人と何か言い争っているようだ。
「だから、早く逃げないと危ないって言ってんじゃん! ほら、行こう! 途中で風熊に会っても、私が何とかするから!」
「いやじゃ。誰がよそ者の言うことなんか聞くか!」
「そうだそうだ! よそ者は信用できん」
「だいたい、こうなったのもお前たちのせいじゃないのか?」
「あー、もう! 今はそんなこと言ってる場合じゃないでしょ!」
ベルナの言うことに誰も耳を貸そうとしない。
そんな状況に耐えきれなくなったのか、ベルナの手が剣を握ろうと動く。
それに気が付いたディックは、慌ててベルナのもとに駆け寄った。
「おい、それはまずいだろ」
「だって、こうでもしないと動いてくれそうにないんだもん」
「だからって……」
ディックは言葉に詰まる。
ベルナの言い分はもっともで、脅しでもしない限り村人が動く気配はない。
今はまだ風熊の標的になっていないからいいが、いざというとき、逃げる気のない二十人以上の村人たちを、ディックとベルナ二人でかばうことは難しいだろう。
「みなさん、落ち着いてください。この人たちは……」
「黙れ! お前がこんな奴ら連れてくるからこんなことになったんだ!」
同じ村のヴィンスの言うことも、興奮している村人たちには届かない。
「ねぇ、ディック君、脅さないって言うならどうするの?」
「そ、それは……俺たちで全部倒すしか……」
「はぁ……それ本気で言ってんの? ざっと見た感じ十匹はいたよ。いくらアリアちゃんたちが強くても全部倒すのにどれだけかかるか……」
ベルナは自分の言葉を途中で引っ込めた。
そしてポカンと口を開けて、空を見上げる。
ディックは首を傾げながら、ベルナの視線の先を追った。
すると、そこには、三匹の風熊が宙に浮いていた。
そして、その風熊たちは一斉に落下を始める。
グキッだかボキッだかグシャッだか、よく分からない音を立てて三匹の風熊は、ただの肉塊になった。
「……あれってサイラス君のアビリティだよね」
「……あぁ、たぶん。重力っていうから、相手を地面に押し付けるとかそんなアビリティだと思ってたけど、あんなこともできるんだな。」
「できるみたいだね。サイラス君のおかげで案外早く片付いちゃいそう」
「そうだな」
風熊が次々と宙に浮くのを、ディックとベルナ、そして村人たちもただぼんやりと眺めていた。
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