真っ赤な火の村 2
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「あー、気持ちよかった! やっぱりお湯に浸かると身体の芯まで温まるねー」
ベルナの声が聞こえてくる。
どうやら女性陣が温泉から帰ってきたらしい。
「お姉さん、案内ありがとう! じゃあねー」
そう聞こえた直後、キィっと扉が開いて、ベルナを先頭にアリアとオリヴィアも家の中に入ってきた。
三人の髪はしっとり濡れていて、いつもと少し雰囲気が違う。
ディックは少し顔を赤くして、三人から目線をそらした。
「三人ともおかえり。次は俺たちの番か」
「先に入らせてもらってすまないな」
「仕事の依頼人に先に入ってもらうのは当然だろ、気にすんなよ」
「ありがとう」
オリヴィアはお礼を言いながら、眉を下げて微笑んだ。
今まで凛々しく吊り上がった眉が下げられると、オリヴィアは、普段のきつい印象が一変して、優しそうな顔の美人になった。
「あんな顔もできるんだな……」
ディックは、しばらくの間オリヴィアに見惚れていた。
そんなディックの腕がグイっと引っ張られ、ディックは我に返る。
引っ張られた腕を見ると、自分の腕を掴んでいたのはベルナだった。
「ねぇねぇ、リカルドさん、オリヴィアさんにだけ優しいと思わない? ずるくない?」
「はぁ……。それはベルナの日ごろの行いのせいで、ベルナに対して当たりが強いだけだろ?」
「えー、そんなことないって! 絶対私たちに対する態度と違うよ。 ね、アリアちゃんもそう思うよね?」
「別に」
「じゃあ、サイラス君は?」
「……」
突然話を振られたサイラスは、困ったように首を傾げた。
「おい、ベルナ! サイラスをいじめるなよ。ディックとサイラスは風呂の準備しろ」
その一言でベルナから解放されたディックとサイラスは、それぞれ支度をする。
「リカルドさんは、私のことが嫌いなんだー」
「めんどくさいからやめろ」
ベルナの嘘泣きと、それを適当にあしらうリカルドの声を聞きながら、ディックはラリマーで滞在中に調達していたカバンの中で、衣服と剣以外のものを下の方に押し込んで、カバンを肩にかける。
サイラスも準備ができたのか、リュックを背負った。
「皆さん、準備ができたのであればご案内いたします」
「あぁ、頼む」
リカルドの返答を聞いたヴィンスが扉を開け、男性陣は温泉に向かって出発した。
村の近くは、焚き火のおかげで明るかったが、しばらく行くとその大きな明かりはなくなり、ヴィンスが手に持っている小さなランプだけが光っていた。
しかし、道がしっかり整備されているおかげで迷うことはなさそうだ。
ディックは、その道が気になるようでキョロキョロと辺りを見回していた。
そして、何か思いついたのか、前を歩いていたヴィンスの肩を掌でトントンと叩いた。
「そういえば、山の道も整備されてたけど、あれってヴィンスさんたちがやってんの?」
「そうです。あの道は私たちが麓の町に買い物に行くときにも使うので、ついでに」
ディックの質問に、ヴィンスは優しく答える。
「へぇ、やっぱりそうなのか。麓の町っていうとラリマー?」
「えぇ、ラリマーともう一つ、逆側に農業の盛んな町があるんですが、その二つの町にはよく行きますね。皆さんはラリマーから来られたんですか?」
「そうだよ」
「水害があったと聞きましたが、大丈夫でしたか?」
「まぁ、なんとかな」
答えたのはリカルドだった。
「そうですか、ご無事でなによりです。さぁ、もう着きますよ」
ヴィンスがそう言って指さす先には、木々に囲まれた池があった。
ただし、その池の底は薄っすら赤く光っており、普通の池とは違う。
「すっげー!早く入ろうぜ!」
ディックはそう言うとその池に駆け寄っていった。
それに苦笑しながらも、ヴィンスやリカルド、サイラスもそれに続いた。
そんな四人を急かすように、冷たい風が四人の近くを吹き抜けていった。
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