真っ赤な火の村
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しばらく歩くと、薄暗がりの中に明かりが見えてきた。
その明かりはだんだん大きくなってきて、それが大きな焚火だと分かった。
そして、その火の回りを囲むように、十軒くらいの家が建っている。
ディックは火を見て一瞬立ち止まったが、すぐに頭を振って歩き出した。
そんなディックの隣を歩いていたサイラスは、怪訝そうな顔をしたが、言葉をかけることはなかった。
ディックたちは、木の柵に囲まれた村の中に入る。
すると、外にいたのは、火の番をしていると思われる青年が一人だけだった。
その青年は、物珍しそうにディックたちを見ている。
それに気が付いた、案内してくれた男性がリカルドに軽く頭を下げた。
「じろじろ見られてますね、すみません。こんな山奥の村に客が来るのは珍しいので」
「いや、大丈夫だ。それより、あの火が気になるんだが」
「あぁ、あれはモンスターを寄せ付けないために焚いてるんです。この辺りは風熊が出るので」
「なるほどな。風熊は火が苦手だからか」
「そういうわけです」
男性とリカルドが話していると、好奇心を抑えられなかったのか、青年が歩いて近づいてきた。
「ヴィンスさん、誰ですか、その人たちは?」
「この人たちは、俺が風熊に襲われているところを助けてくれたんだ。だからお礼をしたくて連れてきた」
「風熊に襲われたって、大丈夫ですか?」
「あぁ、ケガもないから心配いらん、じゃ、俺は家に帰るから。今日の火の番はよろしくな」
「はい、任せてください。皆さんもごゆっくり」
そう言うと、青年は火のそばに戻っていった。
そんな青年を見送ってから、男性、ヴィンスは村の少し奥の方に向かって歩き出した。
「今更だけど、ヴィンスさんっていうんだねー。なかなか渋くてかっこいい顔してるよね。あ、私はベルナっていうの。よろしくね。ほら、みんなも自己紹介しないと!」
「お嬢さんお上手ですね。でも、おじさんを褒めても何も出ませんよ。自己紹介はなくても、皆さんの名前は会話の中でだいたい把握できました」
「ほんとにかっこいいから褒めたのになー。ただ、ちょっとお風呂に入りたくて、美味しいものが食べたいとは思ってるけど」
「こら、ベルナ、寝る場所を借りられるだけでありがたいと思え」
「いえいえ、風呂も食事もご用意しますよ。美味しいかは分かりませんけど」
「助かる、ありがとう」
ヴィンスの家は村の一番奥にあった。
ヴィンスは家の中にディックたちを招き入れる。
「お風呂なんですが、少し離れたところに温泉がありまして……」
「温泉!」
「え、えぇ。もともとは池だったんですけど、数年前から火土竜が住み着いて温泉のようになっているんです」
「へぇ、土竜種の火属性なんて珍しいな」
「リカルドさん! そんなことより温泉だよ、温泉! 行くよね? 行くしかないよね?」
「分かった、分かった。ヴィンス、温泉に案内してもらえるか?」
「はい、分かりました。ただ、脱衣所がないので、男女別で、女性は村の娘に案内させますね」
「ありがとう、手間かけてすまねぇな」
「いえ、命の恩人のためですから」
そう言うと、ヴィンスは家から出て行った。
おそらく、温泉まで案内してくれる娘を探しに行ったのだろう。
一方、女性陣は温泉のことで盛り上がっている。
「女の人って何であんなにお風呂が好きなんだろうな……」
ディックの呟いた言葉に、リカルドもサイラスも苦笑いを浮かべた。
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