緑に囲まれた山道で
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ラリマーの町を出て、小さな丘を越えると、そこには大きな山が連なっていた。
「うわー、山じゃん……。ベルナ登りたくなーい! 迂回しようよー」
「でも、見た感じこの山相当長く続いてる。登った方が早いと思うぞ」
「えー、ほんとに登るの? 嫌だなー。あ、そうだ! オリヴィアさんの意見も聞いた方がいいよ! 雇い主なんだし!」
ベルナは目を輝かせてリカルドに提案した。
「まぁ、確かに雇い主ではあるが……」
「私ならどちらでも構わない。リカルドの判断に従おう」
前を歩いていた二人の会話を聞いていたのか、オリヴィアがそう言う。
「残念だったな、ベルナ。じゃあ、山を登るぞ」
リカルドは山に続く道に向かっていった。
不服そうに頬を膨らませたベルナも、しぶしぶその隣に並んで歩いていく。
その二人を先頭に、六人は山道に足を踏み入れた。
幸い山道は整備されていて、道に迷うことはなさそうだ。
草や木が無造作に生えている中に、土の道が続いている。
その道を、六人は二列に並んで歩いていった。
「あー、もう、ベルナ疲れたー。サイラス君、おんぶしてよ」
ベルナはサイラスに向かって両手を伸ばす。
上目遣いで、可愛く首を傾けることも忘れない。
「え、あ」
サイラスはベルナのお願いにどうしたらいいのか分からず、オロオロし始める。
「おい、ベルナ自分で歩け」
「リカルドさんは邪魔しないでよー。私はサイラス君と話してるんだから!」
「ったく。サイラスが困ってるだろ。悪かったな、こいつが変なこと言って」
リカルドがベルナの首根っこを掴んで前を向かせる。
ベルナが諦めた様子なのを見てサイラスは安堵の息を漏らす。
「サイラス、嫌なら断っていいんだからな。特にこいつの言うことはしょうもないことが多いから」
「あ、あぁ、うん……」
「まぁ、気楽にいこうぜ」
サイラスの歯切れの悪い返事に苦笑しながらリカルドも前を向いて先に進む。
その様子を後ろから見ていたディックは、サイラスに憐みの視線を向けていた。
「俺も最初はあんな感じだったな……」
「そう? 少し違って見えたけど」
「え?」
「あなたは少し嬉しそうだった。でもあの子は本当に困ってた」
「は、はぁ? 嬉しくなんか……」
「あの子、十四歳で護衛の仕事してるなんて、なにか事情がありそう」
弁明するディックを無視して、アリアは隣を歩くディックにしか聞こえない声で呟いた。
「事情って?」
「さぁ」
「まぁ、分かるわけないよな。これから何か分かって、力になれたらいいけど」
「そうね」
二人の目の前の大きな背中は、どこか頼りない。
それが年齢のせいなのか、彼が抱えているかもしれない事情のせいなのかは分からない。
そんな背中をディックはじっと見つめていた。
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