51. 何もナシよりマシ@
先程までと撃って変わって店員さんが急によそよそしくなってしまった。怯えと腫れ物に触るような態度だが、気にしない。
ぶっちゃけ自転車でだいぶ満足しちゃって、あれ以上を期待していないからかも知れない。
改めて並べられた品物は最初に比べて随分と数が少なくなってしまった。
「さっきの奇行でどういう人間か理解しましたよ。改めて、本気で君に相応しいと思う物をここに並べさせてもらった。散々急いでるって言うのに二度手間を取らせて本当に済まない」
最初からそうしろと思うが今は目の前の物を吟味するのが優先だ。使える物があるかどうかで今の謝罪が報いるかどうかが左右されるのだから。
最初に手に取ったのは古びた一組のグローブ。シンプルな指無しタイプの硬質革製品で、使い古して柔らかくなるどころか、長年放置して固くなった手袋というよりも置物のようだ。
「そちらは“求道者の手袋”、とある高位の僧兵が使っていたというグローブで、長年の酷使に耐え抜いた素晴らしい逸品です。中古品ですがその強度は健在であり、奇跡的にも君の手のサイズにピッタリの様なので一押しです。」
確かにサイズはピッタリだ。握り心地は丁度良い石ころを握り締めた感じで、本気で力を込めても石のように粉々に砕けたりはしない。
次はゴーグル。眼鏡の部分がガラスと思いきやアクリル樹脂の様な質感を持っていて興味を唆られた。
「そちらは護衛専門クラン“防御走行”と同型のゴーグルでございまして、中でも前衛向けにカスタマイズされたこのゴーグルは正面からの銃弾は勿論のこと、同クランの百人隊長“破顔のイシス”が頭突きに使用しても問題無いと太鼓判を頂きました大人気シリーズとなっております。」
一応武器としても使えるということか、それだけ頑丈ということなのだろう。
三つ目は大口径銃と専用弾だ。これ見よがしに置かれているのは銃弾の方で片眉を上げて目をやると、苦笑いしながら説明を始めた。
「こちらは対大型魔獣用に開発された“焦熱徹甲弾”です。この鉛の弾頭内部には特別な鉱石が封入してありまして、目標に衝突した瞬間、膨大な熱が発生して体表を溶かし貫きます。毒性もありまして、当たりさえすればほぼ確実に死に至らしめる事が可能ですが、空気感染する恐れがありますので……」
「却下! さっさとしまえ!」
説明を聞く限りそれは劣化ウラン弾とまるっきり同じだ。危ねぇな! 放射能がどの程度認知されているか知らないが早急に仕舞わせた。
「やっぱり銃が嫌いなのかぁ……」
「やっぱりって思うなら出さないで」
店員の様子から察するにあまり危険性は認知されていなさそうだ。
気を取り直して、4つ目は腰鉈だ。四角い刃物で、サイズ感は異なるが某ヤンデレが持ちがちな武器っぽい。
先端が鎌のように小さく反り返っていて、藪を払うのに便利そうだ。藪道を通るならばだが。
「そちら、王都の老舗工房“開翼”を長年に渡り率いた大親方による“51の傑作”の内の一振りにございまして、切れ味と信頼性は抜群だと自負しております。余りにも高額な為にケースに仕舞われて居りましたが、この機会にと思い……まし……」
「肩叩きに丁度良いから貰うよ、飾ったまんま使われないのも勿体無いし」トントンッ
先っちょの返し部分がイイ感じに肩に食い込んで気持ち良い。それに腰から吊るしとけば、丸腰に見えなくなってもっと行動し易くなるだろう。
「……そ、それでいかがでしたか?」
「うん、3つとも貰います。特にこのグローブ、素手で握るよりもずっと良い感じです」
「ほっ、そうですか」
ゴォン! ゴォン! ゴォン!
店員が露骨にホッとするのも束の間、ドアが乱暴に3回ノックされる。それを聞いた店員がすぐさまシャキッと立ち上がると素早く廊下へ出て行ってしまった。
しかし直ぐに戻って来た。後ろに赤ら顔のドワーフを2人連れて。
「おーー! 君かぁ!? イェナ様の秘蔵っ子ってぇのは? オルァーはブランディン=ロックドリルって者だ。よろしく」
「はいどうも、では用事は済んだのでこれで失礼します。(ダッ)グェッ!?」
風よりも素早くその脇をすり抜ける……ことは出来なかった。
ドワーフが旧友と会っていると聞いた時に何か引っ掛かる気がしていたんだ! ドアが開いた瞬間に覚えのある心音がして確信に変わったが最早後の祭りだ。
「ンぁ待てやエルドワーフ。親に何の相談も無しにどこへ行くんじゃ?」
新作の投稿を始めました。よければご覧ください。
・『フォーマンセル+NEW FACE』
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超あらすじ
VRMMOに新規キャラでログインしたら、メイン&サブキャラ全員集合状態
ログアウトしたら、プレイヤーはサブタイトルに閉じ込められてしまいました。




