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チャリンコ・チャリオット  作者: 怠慢兎
第1章 ーワンパク ワンダー ワールドー
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1.長期胎在期間終了

あらすじ

 異世界転生の特典(チート)に“長生き”をお願いしました。

 ドクン...ドクン...ドクン...


 全身を優しく包み込むあったかいおフトンの中で静かにしていると自分の心臓の音が聞こえてくるようだ。

 規則的に聞こえる心音はなんだか心地良く、もう一度深く眠りについた。


 ドクンドクンドクンドクンドクン


 次に目を覚ました時、前よりも心臓の間隔が狭くまるで運動しているかのように激しく揺れていた。

 自分は寝ているのに何故か揺さぶられている。

 目を開けて周りを確認したいけど眠くて目を開けられない。

 伸びをしようとして脚を動かした気がするけどそれ以上自由には動けなかった。

 脚を動かすとピタリと揺れが収まった。

 相変わらず心音は激しい。


「☆+^<%°? 〆€→#>÷!」


 心音とは別にくぐもったような音がする。

 緩急をつけた言葉のようにも思えるがほとんど聴き取れない。

 一旦は収まった揺れがまた始まった。

 まるで休憩するかのようにこの揺れは定期的に停止するが結局どうすることも出来ないのでまた眠ることにした。


 ドンッドンッドンッドンッドンッドンッ


 激しい上に物凄く揺れる。

 揺れると言うか叩かれてるようだ。

 流石に五月蝿すぎるので負けじと脚を動かすが全く効果無し。

 明確に自分を認識したのは既に随分と前で、あの夢のような良くわからない世界が本当に事実であったことは嫌が応にも理解していた。

 それからもう大分時間が経っている筈が、未だに産声を上げる瞬間が訪れない。


 ドンッドンッドンッドンッ!


 ぎぇー! うるせえー! 頭が狂っちまいそうだ! ナニしてるか知らないが、俺に与える影響考えろや! 前世でもそんなんした事無いわ! 畜生! 畜生………


 虚しくなったので聞こえない振りして不貞寝した。程なくして音は止んだ。


 ドクン...ドクン...ドクン...


 今日は平和な心音だ。

 俺の意思が覚醒してから恐らく既に24ヶ月は経過しているだろう。

 しかし未だ腹の中、0歳児なのだ。ここまで来ると外から聞こえる声など、学習してある程度は理解出来るようになってきた。


「……おー、お前はまだ産まれんのかぁい? ワシは首をどこまで伸ばして待てばいいのかのぅ?」


 知らんな。

 恐らくこの野太い声が俺の父親なのだろう。

 この声で甘ったるく話されると気色悪くすら思う。


「まだまだかかりますからねー。パトロさんが言うにはあと2カ月で産まれるかもしれないそうよ」


 この美人だと思わせる様な綺麗な声の持ち主が俺の母親だ。なぜ断言するのかと言うと、毎日胎内を通じてハッキリとこの声を聴いているからだ。

 しかし2カ月! それでやっと俺は産まれるのか! もう2年くらい腹の中で過ごしている気がする。

 そう思うとここもそれほど悪くはなかったような気になってくる。

 と言うよりも、長過ぎる! 前世で長生きしたいと願ったが、このまま腹の中で前世より長生きするのかと心配したよ。


 それから体感で約半年後、俺は産声を上げた!


______________


 プトロ王国暦312年、世にも珍しいエルフとドワーフの子供が産まれた。

 ホリウス山脈の麓、ケテルの森(通称・ゴブリンの森)の奥地の岩山にある岩窟住居で産まれた。


 んげぇー! んぎぁー! んがぁー!


 自分で出しておいてなんだが、変な産声を上げたもんだ。

 あれだけ長い間お腹の中に居たのに、発声器官が十分に発達していないようだ。

 ここでこの世界の言葉で「天上天下唯我独尊」みたいなことを言おうとイメージトレーニングをしていたのに無駄になった。


 へその緒を切られた俺はあの野太い声の持ち主に抱き抱えられた。

 わかっていたけど目もあまり発達していないのでぼんやりとしか見えない。

 それでもわかることがある。

 なんだこのヒゲもじゃ。

 顔面髭だらけ、まるでライオンの(たてがみ)のようだ。

 無意識に髭を握ると思いの外柔らかかった。


「コラッ! 髭をそんな風に掴むんじゃない! 痛っ!?」


 うるせえ! 耳元でがなり立てるな! こちとら目も喉も発達してないが、耳だけはきちんと使えるんだよ! 毟り取ってやるぞ!


「おうおう、なんとも元気なせがれじゃわい、髭を毟り取られん勢いじゃ。エリー、任せるぞい。ほれ」


 今度は敷布団に寝かされた、おそらく母親であろう人の側に運ばれた。こっちは逆に綺麗な色白の細面に見える。

 やはり顔のパーツはぼやけているが、それでも整った顔立ちをしているんだろうなと感じた。


「初めまして、私の、私達の赤ちゃん♪」


 んなぁ~


「応えたよ! 今返事してくれた!」

「エリーに似てなかなか賢いようじゃな。頭の作りがエリー似なら、ひょっとすると身体の作りはワシ似かのぅ?」

「それはまだまだこれからよね~。

 それじゃあそろそろごはんにしましょうね~。

 アレ持って来てシルバー」


 視界の端で何かが蠢いた。

 目を向けると鈍く光る銀色のゼリーの様な塊が移動していった。

 それから少ししてそれは戻ってきた。


「ハイ、ごはんでちゅよー。

 これは私が錬金術で作った人工ミルク。

 味は知らないけど栄養たっぷりだから食べてね~」


 今なんつった? 味見もして無いもの食わせる気かよ!? しかも自作の。

 大丈夫なのか?

 結局食べたが無味無臭だった。


 母親の名前はエリーと言い、父親はバウロ、あの銀色のゼリーは水銀スライムのシルバーと言うそうだ。そしてこの世界に漸く産まれた俺の名前はエルドワーフ、エルフとドワーフのハーフのエルドワーフ!

 両親のネーミングセンスに俺は元気に泣き声をあげた。

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