始まりの朝
ドンッ ドサ
雨降る道路の真ん中で、自分の体温が下がっていくのがわかる。もう、まぶたを開けない・・・。
00領の際にある村:リオッサ
チュンチュン チュンチュン
朝、孤児院から最初に出てきたのは年長の婦長だ。そして、かごの小鳥を払う。
「…今日からあなたもうちの家族よ、・・・あら泣かないわね、この子。」
手馴れた手つきで子供を抱っこする。しかし、婦長は笑みを作るが胸には複雑な感情が取り巻く。
「こんな辺境でもこれで5人目。見ないようにするためにここまで来たのに・・・。」
空が遠く感じる。風がなでるように冷たく感じる。
「だめね、弱気になっちゃ。精いっぱいやるために、ここまで来たんだから。」
建物に戻る彼女の歩きは、力強かった。
ん-----ン
ずいぶん長い間寝た気がする。なんだか朦朧とするし、みょうに頭が重い・・・。
僕の名前は、玉城 サトシ 24歳 大学4年 就活中・・・だったと思う。
そして、逃れようのない寒気とともに、意識が消え・・・て・・・・・・・!ってあれ!?生きてる?
我なんか頭で考え事している、ゆえに我、生きてる!?
目を開くが、まぶしい、というよりぼやけていて光があることしかわからない。
だが、まあ、生きてるっぽい・・・。まあ、とりあえず、良かった。
目はまだ使えないが、注意してみると物音が聞こえる。そして、人の声も。が、何を言ってるのかわらない。まだ、耳もぼんやりしているみたいだ。
かなりの時間、ただ寝てすごしていた気がする。これはまさか、植物状態というやつか?
やばい、天使のビートというアニメに影響されて、免許の裏には番号1に○してんだぞ。
得もいえぬ不安が襲う。周りへの迷惑。そしていつ目覚められるのか、というか、そもそも目覚められるのか。そう、僕はまだ到底覚醒と呼べるほど意識がはっきりしていない。
そんな不安が掻き消えるじたいが!なんかお尻がベチョベチョする!うわーー気持ちワリ―!
そうか、植物状態だから、トイレにも!うわーーーー。この状態になって一番意識がはっきりした。ナースの人にどんな顔をすれば・・・、今だけは目は覚めないでほしい。
「マデーラおかあさん、この子声でたよー。」
「あら、ちょっと待って・・・」クンクン「タリア、これでお尻とオムツ洗っちゃってくれる。」
タリアと呼ばれた少女は、これまた慣れた手つきで、オムツをはがし、水の張った桶につけ、茶色の部分だけ洗う。「マーデラおかあさん、なんかこの子すごい変な顔してる。」
別室で料理の準備をする婦長に届くよう、声を張る。
「最初はそんなもんよー」
婦長は手を休めることなく、声だけ返す。
冷たい!お尻が冷たい、水か!というか、脇を抱えて持ち上げられてるぞこれ、どゆことだ!?
・・・・というか、植物状態って、触覚ってあるんだっけ・・・?
車椅子バスケの”現実”を描いたマンガじゃ、神経麻痺は、痛覚とか、触覚もじゃなかったか?
そして、今ちょっと声出たぞ・・・「ぁああっ」 !
声が出る!「おあおー(おはよー)」が、上手くしゃべれん!、が、声は出る!(意思伝達はできる)
なんか希望が見えてきた!(気がする)