異世界で賃貸マンションのオーナー(大家)になってみた
誤字や脱字があるかも知れませんが楽しく読んで頂ければ幸いです。
面白い、続きが読みたいと思った方は評価お願いします。
遥か昔に、邪神との戦いで大陸にある国々が滅亡へのカウントダウンを数えていた際に、異世界からの勇者たちが大地に召喚され、天使族、エルフ、ドワーフ、獣人、魔族、竜人と大陸に住む、種族が異世界の勇者たちに力を貸し、邪神を倒す事に成功した。
しかし、邪神の力は滅ぶことが無く、異世界の勇者はその力を地下迷宮に封印しその上に地下迷宮を管理するための国を作った。
それから1000年…勇者PTの賢者が建国した国、ルフィーナ皇国。
この国には有名な名所が4つ存在する。
1つは邪神の力が封印され、魔物や魔獣が住む地下迷宮。
1つは建国当時からある、外観が白く、綺麗な庭園がある、ルフィーナ城。
1つは貴族、平民と身分を廃止し、武、知、魔を学ぶルフィーナ学園。
最後は最近出来た、地上60階の塔の様な外観の賃貸マンション【スカイタワー】。
賃貸マンションなので契約で1週間と1か月に支払いが分かれる。
宿屋は1泊飯付で一人銀貨5枚、賃貸マンションは飯なしで1週間銀貨100枚。
高い?いえいえソロだと高いがPTで6人だと宿屋に1週間泊まるより銀貨50枚は安くなるのだ。
この世界の暦は火曜日、水曜日、風曜日、土曜日、闇曜日、光曜日、の5日間で1週間となり、一月は5週の30日である。
暦の事を考えてこの賃貸は1か月契約だと銀貨500枚から400枚になり100枚お得になり、宿屋との差は1か月で銀貨350枚も抑えられるのだ。
部屋のランクももちろんあり、2階~30階は1週間銀貨100枚部屋で1フロアに9部屋あり261部屋ある。
31~50階は1週間で金貨1枚の部屋で1フロアに4部屋あり全76部屋ある。広さも設備もランクアップしており、こちらは月契約だと金貨4枚になる。
最上級の51階~60階は1週間で金貨10枚、月契約で金貨40枚になり、1フロアに1部屋しか無く、全部で9部屋しか無い。設備どころかサービスも破格であるが金額が高いので上流階級の者しか契約出来ない。
冒険者新人サービスも行っており、ギルドカード確認でE、Dランクの冒険者には2階~30階の部屋を週に銅貨100枚、月に銀貨1枚で貸すこともしている。
「大家さん、ただいま」
身だしなみが物凄く綺麗にした年配の老人が挨拶をしてくる。
「最上階、6001号室の皇王様、お帰りなさいませ」
「元皇王だよ。大家さん」
年配の老人は息子に王位を渡して引退した元王様。
今は我がマンションの最上階で奥様と隠居生活を謳歌している。
「奥様も相変わらずお美しいですね。」
私は隣に立っている夫人にも声を掛ける。
「まぁありがとう。この年でも美しいと言われるのは嬉しい物ね」
「いえいえ、奥様はお美しいですよ。旦那様が羨ましい。」
私の言葉で元王様も恥ずかしそうに頭を掻きながらそっぽを向く。
「では大家さん、これから妻の手料理を頂くので我々は失礼するよ」
「まぁこの人ったら」
最後の最後でのろけ話をぶっこんで元王様夫婦は自分の部屋へ向かって行った。
ロビーの掃除をしているよ外はもう夕暮れで、仕事に出かけていた冒険者が帰って来ていた。
冒険者たちは大家に必ず挨拶をして部屋に戻る。
Eランクの下積みをこのマンションで過ごしCランクになってもそのまま住み続けるPTが多く、長く住んでる冒険者に取っては大家は第二の母親に近かった。
新人たちも宿屋よりも安い、この場所が住みやすいのもあり、入居者が減る事が無かった。
全ての部屋にキッチンがあり、個々で調理が出来る環境になっている。
下層はダイニングキッチンと二部屋あり、部屋は2段ベッドが1部屋に2つ備え付けられている。トイレも完備しているが風呂は1階にある大浴場を使用するしかなかった。
中層は部屋数が4つに増え、専用の浴槽も付いてくる上に、家具も備わっている。
上層は部屋数はかなり多く、貴族の屋敷よりも上流な家具なども設置されている。
料理に関してもマンションの大家さんに依頼する権限もあり、料理の苦手な貴族夫人でも安心設定。
え?下層や中層で料理が出来ない方はって?外で食べてきてください。
日付が変わる前に大浴場を清掃して私の一日は終わります。
基本は、マンションの維持などに一日を費やし、合間合間に住人とのコミュニケーションをするのが私の日課になります。
しかし、この日課も崩れる事件も勿論発生します。
今日はそんな事件の一つは紹介しましょう。
「大家さん!助けてください!」
私に助けを求めるのはこの国のトップ、現皇王様です。
「隣国と和平同盟の対談で使者が来るのだが御持て成しを全く考えていなかった。」
何と…大事な対談の使者様が来られるのにそのおもてなしを考えてなかった王様。
まぁ彼は最近、親から王位を譲られてまだ慣れていない所に、国同士の大事な対談が発生したのだから慌てるのも無理は無いが…
「大家さん、おはよう。朝からどうしたのかね?」
皇王様の御父君、隠居爺さんがマンションから現れた。
その姿を見て息子が父親に涙目で詰め寄った。
「このくそおやじ。大事な対談を纏めてから王位を譲れよ!」
「はっはっは。苦労してるようだな。あの国は好戦的で資源が欲しいから、かなり和平交渉が難しくて困っていたのだよ。」
話を聞くにこの爺さんも嫌らしくて纏めて息子に放り投げたらしい。
「全く、貴方は若い頃と変わらないですね。皇王様が可哀そうですよ」
「いや。面目ないが嫌な物は嫌だ。」
「それに好戦的なのは国同士ではなく貴方たちの間柄が問題なのですよ。お互いに矛を収めればまとまる話を…」
私はため息を吐きながら隠居爺さんに言うが、「儂は悪くない、奴が悪いのだ」などとぶつくさ呟いてるあたり、反省はしていないようだ。
「まぁ今回は少し手伝ってあげましょう。二人のクソガキの後始末をその子供が行うのがかわいそうなので…」
私のにらみを見て隠居爺さんはそそくさと逃げる様にマンションへ戻って行った。
今回のおもてなしは対談の前日に我がマンションの開いている上層階に泊まる様にするのと、ここの屋上の空中庭園での食事会などで気分を良くしてもらい、翌日の対談をスムーズに進めるプランになる。
空中庭園は現在は春の為、この世界では東国の島国にひっそりと自生していた桜が満開なので和食をメインに考える。
使者が来るのでこのマンションのセキュリティーはどうなのかと疑問に思う方が居ると思うがこのマンションの防衛はこの国の城よりも強固なのだ。と言うかこの世界で最高峰と言う自負がある。
現に隠居したとは言え発言力のある元皇王の隠居先としても選ばれるほどであるので、防犯は完璧だしそこも売りなのだ。
当日までに準備するものや予定を把握する必要もあるので、皇王から初日のプランを拝借して、準備を進めた。
使者の訪問は国のトップ以外には伏せられていたのだが、当日国へ来た使者様はかなり貴族志向の強い方でしかも、この国より自分の祖国の方が優位に立っていると思っているのか、かなりの私兵を連れてやって来た。
勿論、国境沿いの検問でも一悶着があり、報告が上がってきているが、かなり困った人物の様だ。
「何だ此処は!この国は私を愚弄しているのか?」
夕刻になり、我がマンションに帰ってくる住人を差し置いて、門前で騒ぐ一団が居た。
正直、頭が痛くなりそうだったが笑顔で対応しようと思い、この日の為に召喚した子たちを引き連れて使者様(笑)を迎えに行った。
正直、国の使者としては常識不足で自身の対応が祖国の対応と取られて戦争にでもなる可能性もあるのに何故、問題となる行動を取れるのだろうか?
「何か問題でも御座いましたでしょうか?私はここのオーナーを務めているサーラー・オルフェンスと申します。」
私は無駄に豪華な衣服に身を包んだ狸腹の男に頭を下げてお伺いした。
豪華な衣装がお腹の無駄な脂肪でパッツンパッツンで正直、笑いが出そうだが無表情で対応する。
背後で召喚した子たちが肩を震わせて居たので少し殺気を飛ばして大人しくさせた。
「問題も何も、こんな塔で夕食とかこの国は何を考えているんだ?普通は王城でディナーじゃないのか?塔の中に押し入れるなど罪人扱いも良いとこだ!」
使者の方は大変ご立腹の様だが、私兵団の中には噂や他国の情報に敏感な方が居るのか、噂のマンションを見上げながら王城を見る様な眼差しの者も居た。
自分が使者として向かう国の情報を一切知らないこの人は何故選ばれたのだろうか?少しあの子に人選の選び方を尋ねに行かないと行けないですね。
「ここはそのような罪人施設ではなく、宿の様な宿泊施設ですよ。ただし長期利用者や最上階などは隠居した貴族様方の住まいにもなっておりますので、申し訳ないのですが、住人に被害が出るような行動は慎んで貰えると助かります。もし、約束を破られた場合はもし分けないですが食事会を中断させて頂く場合もございますので悪しからず。では最上階へ案内致しますので静かに付いてきてください」
少し早口でしかも、住人に害になる行動があれば放り出すと忠告して屋上の空中庭園へ案内する。
エントランスの端に大型の魔導エレベーターがあり、20名は楽に運べる優れもので、スピードも速くすぐに屋上に到着する。
ちなみに、エレベーターはこの世界では古代施設(古代文明の遺跡)か我がマンションしかない為、使者の貴族と護衛の兵士はビックリ顔だった。
扉が開くと開放的な空と色とりどりの花が咲き乱れる中、目的の場所まで案内する。
目的の場所では大きな桜の木が1本、綺麗に咲き乱れてその下にはテーブルと椅子が準備されていた。
「ここが晩餐の会場になります。」
先に来ていた、皇王とその家族はすでに席に座っており、使者の貴族を席へ導き座らせると料理を運ぶように配下の者に伝えた。
料理は空中庭園の桜に合う、和食で御前にした。
「では今宵の桜に乾杯」
珍しい料理にビックリしていた使者だが、皇王の音頭に合わせて料理を口にする。
「何だ…この料理は!こんなに繊細な味は始めてた。美味い」
貴族と言うことでかなりの食通だと思うが、この世界の料理は素材はともかく味付けや技術は発展途上な部分があり、私が作る料理はかなり珍しい物になる。
何より皇王や隠居した爺が「王宮よりも旨い」「毎日食べたい」などと言い、奥様(皇妃様)なども私に料理を教わりたいと言ってきた程だ。
楽しく食事を終えると使者の方が席を立ち頭を下げた。
「皇王様、私は正直、この国を見下していたし、この和平条約に我が国に利益などあるのだろうか?と疑問を持っていた。しかし、今日の晩餐やこの技術、何より、自然も取り入れる国造りなど、我が国では考えられない物で私は衝撃を受けた。」
使者は今まで思っていた本音を語り始めた。
「この和平条約、私は全力を持って我が国とルフィーナ皇国を繋ぎたいと思います」
初めの険しく気難しそうな表情は鳴りを潜め、ただのデブッチョのおおらかな親父と化した使者は皇王様を握手を交わした。
「あの食事会のあとはとんとん拍子で条約内容を決まって、今では関税を無くして物流が行き来しているのだからな…」
箒で門の前を掃きながら独り言を呟く。
色々な事があるが私はこの仕事を楽しんでいる。
えっ?私の秘密が知りたい?それはまた機会があればお教えしますよ。
さて、今日はどんな日になるだろうな?
freedomfantasyもよろしくお願いします。
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