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イケメンさんと恋仲  作者: 藤の和
2/2

好きの気持ち

月曜日――

「咲奈、おはよー」

「おはよう」

昨日の出来事は一体何だったんだろう。眠れない程では無かったが、朝は少し早くに目が覚めた。

「ねぇ梨乃、好きになる時って、どんな感じ?」

「えー何それ、なんかウケる」

ひどい。何が『ウケる』だ。こっちは真面目に聞いてるって言うのに!仕方ないでしょ、初めてなんだから。

「もしかして、好きなやつできた?」

そう。何だか、昨日のイケメンさんの事が忘れられないのだ。あの爽やかな笑顔に惚れてしまったのかも知れない。

「うん・・・多分」

自分でもよく分からない。恋愛ってこういうものなの?昨日の事を思い出しながら、私は答えた。

「それ多分じゃないね。顔、赤いよ」

えっ!うそ、全然分からなかった!頬に手を当ててみると、確かに顔があつい。これが、好きって事なのかな。

「咲奈って、結構ツンデレな感じ~?初々しいねぇ~」

「やめて!もうこの話終わり!」

駄目だ、どんどん顔があつくなるのが自分でも分かる。早くこの話を終わりにして、昨日の事も忘れよう。

バイトの帰り道、またラーメンを食べに行こうとしていた。今日こそ塩ラーメンを食べようと思い、半分イケメンさんに会えるかも知れないと思いながら歩いていた。

「いらっしゃい」

元気のいい声で、店長が声をかける。周りのお客さんを見渡して見ると、仕事帰りのサラリーマンばかりだった。

「やっぱり、運命なんてないか」

独り言のように呟き、私は塩ラーメンを頼んだ。あれから散々、梨乃に説教(?)されていた。運命かも知れない、なんて思った私がバカだった。こんなにも、昨日会ったばかりのイケメンさんに、心が揺れるだなんて、自分でも驚いている。

「すみません、塩ラーメン一つ」

やっぱり塩ラーメンは美味しいよね!なんて、自分を元気付けるように、心の声で言った。その時・・・

「あ、昨日のお嬢さんだ」

一瞬誰かと思い、顔を上げて見て見ると、そこには昨日の爽やか系イケメンさんが座っていた。

「塩ラーメン、本当に好きなんですね」

ニコっと笑うその笑顔。胸が高鳴ったのを私は感じた。また、会えた!どうしよう、なんか緊張してきた。最初って何言えばいいんだっけ?じ、自己紹介かな!?そうだ、名前だ。

「はい、好きです。あっ私、藤田咲奈って言います」

「咲奈さん、ですか。可愛い名前ですね」

えっ・・・。か、可愛いだなんて初めて言われた。なんかドキドキしてきた。

「昨日、ポケットに紙切れがありませんでした?さすがに気付かないかな」

あっそうだった・・・すっかり忘れていた。 多分机の上に置きっぱなしだったと思う。まだ『好き』と自覚していなかったし、疲れてそのままシャワーを浴びたため、記憶から遠ざかっていたのだ。

「いえ、気づきました!すみません・・・考えなしで」

「いいですよ、ちょっとイタズラしちゃいました」

照れたように、『しのさん』は笑った。東雲の最初の二文字『しの』をから取って『しのさん』。なかなかのネーミングセンスだと思う。

「そういえば、今日は執事さんはいないんですか?」

昨日はしのさんの隣に座っていた執事さんが、今日は見当たらない。どうしたんだろう?体調が悪いとか・・・そんな訳ないよね。

「はい。今日は咲奈さんと二人でお話したくて」

「そ、そうでしたか・・・何のお話ですか?」

「それは、咲奈さんの好きな物とか、嫌いな物とか・・・とにかく咲奈さんについてたくさん知りたいです」

そんなに聞かれても困る。大体何でそんな事言わなくちゃいけないんだろう。私の方が聞きたいくらいなのに。

「しのさん!先にラーメン食べちゃいましょう!」

じゃないと、せっかくの塩ラーメンがのびてしまう!それは絶対に嫌!・・・私はもう、食べ終わったけど。

「うわ、ホントだ。美味しくなくなっちゃう!」

しのさんが食べ終わるまで、私は課題である勉強をしていた。暇な時は、こうやって勉強するのが一番落ち着くのだ。

「ご馳走様でした。あっ咲奈さんって、どこの高校何ですか?」

「私は・・・中高一貫の高校で、箕島高校って言います」

しのさんは、お坊ちゃんだから、もっと頭の良い高校だろうな。

なんか自分が言った事に恥ずかしさを感じる。しのさんから見て私は、どんな風に見られているんだろう。

「あの咲奈さん・・・」

「は、はい!」

「・・・僕の事『碧空』って読んで下さい」

「あっ、『しのさん』って呼ばれるの嫌でした?」

自分でもなかなかのネーミングセンスだと思ったのに、でも思いつきで考えた呼び名だし、気に触るのかな?

「嫌ではないんですけど・・・碧空って呼ばれた方が嬉しい・・・」

なんだ、そういうことか。ホッと胸をなでおろし、緊張しながらも、下の名前で呼んでみる。

「碧空・・・でいいんですか?」

「はい。僕も『咲奈』って呼んでもいいですか」

コクっと、頷く。そして碧空が・・・

「・・・咲奈」

「はい・・・なんかドキドキしますね」

そ、そうですね。とぎこちなく言う碧空に、私は少し笑ってしまった。碧空の方がこういうのは慣れてるはずなのに、以外にも緊張しているみたいだ。まるで、付き合い始めた恋人のように。

それからの私達は、お互いの事について話しあったり、最近の出来事などを語っていた。昨日会ったばかりなのに、驚くくらいに意気投合している。 なんだかんだで、楽しいなと思ってしまう。

家まで送ってもらう時も、車の中でたくさん話した。私も、碧空のことが知れて嬉しかった。今日、話した事を忘れないようにしよう。また会った時まで、ずっと・・・

「今日はありがとうございました。楽しかったです」

「こちらこそありがとう。咲奈の事たくさん知れて良かった」

またね、と言って碧空は帰って行った。碧空と話していた時間が楽し過ぎて、『寂しい』だなんて思ってしまう。

「明日もまた、会えますように」

三日月の空を見ながら、私は神様にお願いをした。



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