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彼岸の頃も色褪せて  作者: 雨宮吾子
始:天つ空は那辺にありや
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01

 未だ名もなき(あめ)の水平線上に水晶の舟が浮かんでいる。それは誰を運ぶでもなく、物質を運ぶでもなく、ただ言葉を超えた何かを載せている。漕ぎ手のない水晶の舟は、それでもゆっくりと推進してくる。それは人の犯さざるべき領域なのであろうと思われる。しかしそれが聖域であるとするなら、誰の名において権威を持つに至ったか。そして誰の発した声において、誰の流した血において、権威を確立するに至ったか。それは未だ杳として知れない。

 では、水晶の舟が運ぶものは何であるか。それは謂わば原器である。人間の原器である。

 神なき世界に神を、人なき世界に人を。

 そのようにして、世界は開闢を迎えたのである。天に星が満ち、地に人が満ちたのである。タウマゼインは古代ギリシャに生まれたが、それ以前にもまたタウマゼインは存在した。古来より人は蒼き天蓋を仰ぎ、そこに神を見ていた。一方で地平線の彼方より来たりし異なる者もまた、崇拝の対象とされた。

 しかし、人が偽りの自立を果たし、世界が人の手の中に収められたと思われたとき、人は信仰すべき神を見失った。人が観念の中に神を生み出したのは当然の帰結であった。爾来、神話という言葉の持つ重みは甚だしく空ろになった。烏滸がましくも新たな神話を創るつもりはない。唯、私というものを統合するために書き記すのみである。

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