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18.失敗は成功の元




三時間というのはひどく早く過ぎる。


……(いな)、大切な人と一緒にいる時間は、すぐに終わってしまう。

クロナともっと一緒にいたいのに時間というのは悠々きままに過ぎて行く。


今は午前二時過ぎ。

クロウとアルトの見張りの時間だ。

見張りは日が上る五時過ぎまで続く。

クロナは女子用テントへ入って行った。


クロウの耳は良い。というか五感全てと第六感までも鋭い。

だから、そこそこ距離が離れていても、クロナの声を聞き取る事が出来る。どうやら彼女はテント内でがーるずとーく? に巻き込まれたようだ。


寝ないのか、とクロウは思う。

しかし盗み聞きは失礼かと思う為、目のピントを外すように、そちらから耳を背けた。


「………」


そんな彼は今、見張りをしながら<アビスゲート>を改造している。

生きた生物を入れられるように。

本来<アビスゲート>に生き物を入れる事は出来ない。空気も音も無ければ、光も……そして時さえも存在しないのだ。

生き物を入れようとしたら、暴発してオワル(色々な意味で)。

それを、改造する。

空気と音を作り、生き物を入れられるようにする。


時が無い為、クロウ以外の生き物が入ったら、時間感覚が狂い発狂するだろうが。


「……どうやっても、9階には収まらないか……」


空間に巨大な魔法陣を描きながら、クロウは苦々しげに小さく呟く。

指先に魔力を纏わせ、魔法陣をどんどん書き換えながら。

それも、かなりのスピードで。


端からみれば、ラフ画を書いて消して書いて消しての繰り返しのようなノリに見えるだろうが、第10階の魔法陣は人に扱えぬレベルの複雑さと繊細さを持っている。

どんな学者でも、クロウのようには魔法陣を描けない。

そもそも絶対暴発させる。


「……空間座標指定方法はそのまま……四次元座標演算も変化無しで……魔力圧縮率はとりあえず11,30倍に……相対性を持たせて……気体を入れるし……重力もいじるか……エンタルピーが面倒だな……いっそ臨界させよう……11階になるなこれは……」


クロウがぶつぶつ言いながら魔法陣を高速でバラし、組み立てていく。その隣で、アルトが彼のマジックウェポンであるアサルトライフルの弾倉の整備をしていた。

アルトはもう、クロウにツッコむのを諦め……


「しまった、ブラックホールを作ってしまったか。しかも暴発するとは」


「ちょっウソでしょクロウ君何やってんの!?」


「<フェンリルファング>」


クロウは禍禍しいドス黒の雪じみた魔力を極軸方向に放出する真っ黒な球体に、あらかじめ用意していた<(イクリプス)>の上位魔法……第10階魔法<フェンリルファング>を起動させ、そこから飛び出した大型の狼のような闇が、発動前のブラックホール魔法に喰らい付くと、二つの魔法は辺りに大量の圧縮魔力雪を撒き散らしながら相殺した。

どうやらブラックホール魔法は完成しても発現がかなりスローペースなようである。


「……なかなかに使えそうで斬新な魔法だったな。闇属性は奥が深い」


「あんなの何に使うの!? この星消えるよ!?」


クロウの言葉に、もうツッコまないと決めたアルトが思わずツッコんでしまう。


「アルト、声がデカイぞ」


「あ、ごめんスレイン君」


隣のテントの男子がアルトに注意し、謝罪するアルト。


「今のは今ので別個に作るか……発生座標を任意に……いや、魔力効率が悪いが……そもそも座標指定法しか使えないな……詠唱文も作るか……」


クロウは先程のブラックホール魔法を改良していく。

闇属性の主な特徴は『侵蝕性』だが、『時空』に関するものもある。強力なものだと<アビスゲート>……四次元異空間の作成、簡単なものだとトラップマジックの隠蔽等。

……まさかそれでブラックホールなどが作れるとは、クロウにも予想外だったが。

<フェンリルファング>をあらかじめ用意していなかったら、星を喰らっていた事だろう。


「<我望むは星喰いの闇>……

 <其は崩壊を生む重蝕なり>……

 <果て無き闇は世界を貪り>……

 <其の口は閉じる事無き(まどか)

 <底無しの黒き大地>」


クロウは声に魔力を纏わせて、先程の魔法陣と同じプログラムを組みながら(うた)う。


闇色の吹雪が吹き荒れ始めた。


「<其は光すらも喰らい>

 <永久(トコシエ)の荒野を生み>……

 <全てを飲み込む禁断の歯牙(シガ)>……

 <闇を司る女神が縛りし>

 <決して抜けれぬ禁断の地>

 <帰らぬ荒塵 (クル·ヌ·ギア)>

こんなものか」


クロウは魔力を使うのを止め、魔法をキャンセルした。

第11階神話級闇魔法<帰らぬ荒塵(クル·ヌ·ギア>。

フェンリルが出て来るのとはまた違う神話の、闇を司る女神が支配する荒野の名を冠する魔法。

<ベルセルク>よりも遥かに危険で強力な、魔法。


「魔力効率の悪さと、発現・臨界の遅さ、加減ができないデメリットはあるが、強力だなこれは」


クロウが言う。

こうして<クルヌギア>は、彼が作った魔法の中で、威力だけなら二番目に強い魔法となった。




「何があったであるか!?」




そこへ、アームストロング教諭が血相を変えて走って来る。


「失敗した。そして新たな道に進んだ」


「訳が解らないぞクロウ……」


クロウは言うが、アームストロング教諭は疲れたような顔で呻く。


「説明した所で貴様が理解出来るとは思えん」


「………」


「さっさと帰れ邪魔だ」


言って、クロウはまた<アビスゲート>の魔法陣を描き、いじる。

アームストロング教諭は諦めたような顔をして、夜間の見回りの仕事へ戻って行った。





色々と理論がおかしくないか? と思った方、すみません。

相対性理論の本なんて二冊しか読んだことないもので…

まあ魔法なので大目に見ていただけると幸いです。

それでもおかしいと思ったら指摘お願いします。

尚、作者のメンタルはクソザコ豆腐メンタルです。



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