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Sync(2)
今宵わたしはいかように歩けばいい
軋む胃の奥にしゃがみ、
染みだす珈琲に溺れながら
両手で
両手で顔を押さえて、
ふかく
ふかくにちぢこまり
喉いっぱいに叫びたい
泥沼の空へむかって
はりあげて
かぶりをふり、
掻き毟り
ひざを抱えてうずくまり
ちからいっぱいに
叫びたい
篝火のない仄暗い井戸にも
追憶から疋音がざわつく泉にも
こだまの響かぬ山へも
どれもに
報せることもなかった筈の
雄鶏の徒言を
わたしも理性も、
そのわたしを止めはしなかった。
一緒に
叫んでやりたかった。
参考文献:
宮部みゆき『名もなき毒』幻冬舎,2006年.
T.S.エリオット著・岩崎宗治訳『四つの四重奏』岩波文庫,2011年.