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「引き受ける人」の名前  作者: straycat
5/5

第5話 結果から逃げない人

ここまで、

言葉の意味や翻訳の話から始まって、

役割や組織、

そしてそれを引き受ける人の姿を

遠回りしながら見てきました。


最後の話では、

新しい概念を足すことはしません。


これまでに出てきたものを、

少し違う角度から

静かにまとめ直すだけです。


誰かを称えるためでも、

何かを定義するためでもありません。


ただ、

「結果から逃げない」という振る舞いが、

どんな場所で、

どんな形で続いてきたのか。


その輪郭を、

最後にもう一度だけ確かめます。

undertaker という言葉は、

 今ではほとんど

 起業家や事業家の文脈で使われることが多い。


 最初に思い浮かぶのは、

 挑戦する人、

 リスクを取る人、

 新しいことを始める人。


 たしかに、それも間違いではない。


 でも、

 それだけだと少し足りない気がする。


 undertaker が引き受けているのは、

 挑戦そのものではなく、

 その結果だ。


 成功も、

 失敗も、

 途中で起きる面倒ごとも。


 誰かの判断を、

 自分の名義に載せ替える。

 そういう役回りを含んでいる。


 ここまで考えてきて、

 ふと、古い名前が頭に浮かんだ。


 アルキメデス。

 諸葛亮孔明。


 どちらも、

 歴史では英雄として扱われる。


 けれど、

 彼らの仕事をよく見ると、

 派手な勝利よりも、

 破綻を遅らせることに

 多くの力を使っていた。


 アルキメデスは、

 都市を永遠に守ったわけではない。


 ただ、

 すぐに滅びる未来を、

 一日、また一日と先延ばしにした。


 孔明も、

 天下を統一したわけではない。


 それでも、

 国が今日を越えて

 明日を迎えられるように、

 調整を続けた。


 どちらも、

 世界を変えたというより、

 世界が壊れる確率を下げ続けた人だ。


 ここで、

 undertaker という言葉が

 少し違って見えてくる。


 起業家でも、

 請負人でも、

 英雄でもない。


 もっと静かな役割。


 現代の言葉で言うなら、

 こう表現するのが近いかもしれない。


 組織が壊れずに

  明日を迎えられる確率を、

  静かに上げ続けている人。


 その人は、

 前に出ない。


 評価も求めない。


 成功しても、

 「まあ、うまくいってよかったですね」

 で終わる。


 失敗したときだけ、

 名前が呼ばれる。


 それでも、

 引き受ける。


 なぜなら、

 誰かが引き受けないと、

 確率は確実に下がるからだ。


 undertaker は、

 結果を支配する人ではない。


 結果から逃げない人だ。


 だからこそ、

 英語では一つの言葉で足りた。


 請負も、

 事業も、

 その本質は同じだった。


 一方で、

 日本語ではそれを

 一つの言葉にしなかった。


 しなかったからこそ、

 多くの人が

 名前のない役割を

 引き受けてきた。


 それが良かったのか、

 悪かったのか。


 それは分からない。


 ただ、

 もしあなたの身の回りに、


 ・トラブルが大きくなる前に

  静かに処理されている

 ・判断が暴走しそうなときに

  少しだけブレーキがかかる

 ・誰も気づかないうちに

  今日が終わっている


 そんな場所があるなら。


 そこには、

 名前を持たない undertaker が

 いるのかもしれない。


 この話に、

 教訓はない。


 ロールモデルも、

 用意していない。


 ただ、

 そういう人たちが

 確かに存在している、

 ということだけは、

 覚えておいてもいい気がする。


 世界は、

 派手に変えられなくてもいい。


 壊れなかった、

 という事実だけで、

 十分な日もある。


 undertaker は、

 そういう日を

 一つずつ積み重ねてきた人の、

 古い名前なのだと思う

お正月企画で短編書いてみました。


読んでいて気になることがあったら、

よければコメントもらえたら嬉しいです。

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