08.光と影
「…柵拉場?
なにその変な当て字。いつの時代の話?」
「いつからそう呼ばれ出したのかはわからないけど、
江戸時代より前にはそう呼ばれてたらしいわ。」
「ちょっと待って。スケールが大きすぎて理解が…。」
「ある程度理解してくれればいいわ。
外で聞かなければ録音してもいい。だから取り敢えず一通りは話すわね。」
「わかった録音する。待ってねスマホ……待って…あった。
いいよおばあちゃん、お願い。」
「柵拉場と呼ばれた原因は、当時の桜庭家がやっていた事なの。
身分性がきっちりしていた時代に貧富関係なく色んな町や村のはみ出し者達を集めて教育していた。
少しだけ周りより優れていても、劣っていても異常者扱いの時代だった。
少しどころか出来過ぎ、出来なさ過ぎとなれば化物扱い。
そんな時代に桜庭はそういう人達を受け入れた。」
「理由は何だったの?」
「それはね、集めて教育をした人達をいろんな所に斡旋するためよ。
今で言うハローワークみたいな物かな。
演算が出来るようになった人は商家…お店だったり、
文字の読み書きさえ出来れば色んなお城や名家の奉公人や家人として仕えることが出来た。
他にもいろいろあるけど省くわね。」
「すごいことしてたんだね、昔の桜庭さん達」
「そうね。そんな中、どこにも出されない人達もいたの。
どんな人だと思う?」
「出来が悪い人?」
「残念。どんなに出来が悪い人でも最低限の読み書きは出来てたからね。
正解はね、超能力者。」
「は?そんなの現代にもいないじゃん。」
「超能力者は昔と今じゃ全然意味が違うの。
今は天気予報って当たり前だけど昔は違う。
ちょっとした雨や晴れの予報は普通の人でも出来てたの。
自分達の仕事や暮らしに直結するからね。
でも大きな災害となったら話は変わってくる。
今は地震予想とか竜巻とか危険な気象現象もある程度分かるようになったし対策も出来る。
丈夫な建物が存在して身を守れる。
昔はそんなものは無いから危険な災害を予想する人の事を、災害を呼ぶ人だと思い込んでいた。」
「今もたまにいるよね。危ない天気が分かる人って。」
「今だと科学的にきちんと証明されて、普通より感覚が鋭いだけって分かってるしね。
気圧の変化に敏感な人は豪雨とか台風とか分かるらしいし。
突風とか地震とかも計測器より早く分かる人だっている。
でも昔は違う。そういう人達は当時だと化物どころか災厄そのものだと言われたりした。
だからそういう人達は桜庭家に残って、感じた災害は桜庭家の名で時の権力者に伝えたりしていた。
別に無理やりと言うわけでもなくて、衣食住は完璧で安全。お金も貰って自由に暮らしてた。
桜庭家にしてみれば、ある程度の家の格を上げられたしウィンウィンだった。」
「何で格を上げるのが嬉しいの?富とか名声みたいな事?」
「ちょっとは当たってるけどね。
富も名声も大事なんだけど、それだけじゃない。
取り扱うのが災害なだけに、危険な家だと思われる可能性もあったから、
消すより使える家だと思われる必要があったの。」
「殺されるってこと!?」
「その可能性もあったってこと。
考えることは庶民だろうが偉い人だろうがそんなに変わらない。
危ない奴、はみ出し者、化物は排除が当たり前の時代だからね。
だから家の名前、桜庭と言う格を上げて権力者のために尽力する事が大事だった。
実際に災害の忠告を受けた権力者の一人は、
事前に町民を避難させたりして権力者は褒め称えられた。
町民から権力者への称賛は、権力者から桜庭家への称賛になっていた。」
「世渡り上手だったわけだ。」
「そのお陰で戦が起きても桜庭には手を出さない・巻き込まないが暗黙の了解になった。
でもそれが、柵拉場と言われた原因でもあった。
評判が上がっていくのと比例して上がっていくのが、
嫉妬・嫌悪・恨み・猜疑心等々負の感情。
結希ちゃんが最初に言ったよね、変な当て字って。
負の感情を持つ人達が付けた、
"拉致して柵に閉じ込める場所"で柵拉場。」