78.願いの化身
祖父達もなんとかショックから立ち直り、
水神様の話を一緒に待っていた。
〖生まれた時から………いや生まれる前から、
最後の子について神々の会合で議論されてきた。〗
「スケールでかくなった。」
〖それ程の事なのだ。神が呪いに関わるという事はな。
我らは人の手で穢され、人の手で呪いの力の元とされた。
天上の神々は、我らが祟り神を越えて堕ち神になることを危惧したのだ。〗
「神様にも対処不能だから?」
〖いや、祟り神ならば人に祀って貰えるからいい。
問題は堕ち神だ。儀式前に少し話しただろ?〗
「鎮められない、祀れない神。ただ奪うだけの存在。」
私が欠片の神様達に"奪われた"時の事を思い出す。
唯一与えるとすれば厄災のみ。
あの時はうっかりだったと言っていた。
奪われ過ぎたら死ぬとも言われた。
私は2回も、あいつらから殺されかけたのか。
覚えとけよ………。
〖……そなたの不穏な考えは…、一旦置いておけ。な?〗
「ふぅー……。ん。」
深呼吸をしながら話の続きを催促する。
〖続きだな。うん。えー堕ち神の何が問題かだな。
鎮められない・祀れないものの存在自体が、
長く続く神道という宗教概念を覆しかねないからだ。
その存在自体が信仰を揺るがすのだ。
信仰が揺らげば、どんなに名のある神でも消えてしまう。
堕ち神は、人にとっても神にとっても害なのだ。〗
「その堕ち神に、欠片の神様達がなってしまいそうだった……。」
〖そうだ。一度堕ちてしまえば戻ることは不可能。
堕ち神を消す役目は通常、一帯の土地神が受け持つ。要は我だ。
だが我は桜庭への呪いに使われた事に怒っていた。
堕ちはせぬが祟り神にはなりそうな程だった。
そして穢されていたため堕ち神に対処する力は残っていない。
だから天上の神々は、我らに妥協案を提示してきたのだ。〗
「それが、最後の子…。過去を見る理由は?」
〖親和性と、我の回復、歴代で最も強い力。だな。
我は土地神であると同時に桜庭家の守り神でもあったが守りきれなかった。
天上の神々はその事を汲んで『未来で結ぶを希う』と言ったのだ。
我が力を授けている桜庭の子孫が、
我らの負を全て清算してくれる事を願って。〗
「………清算?」
嫌な単語だ。
私の命で全てを終わらせる、
とか言われたら流石の私でも断るぞ。
私の命は私の物!!
〖勘違いするでない。命に危険は無い。
我らの願いを叶え、往くべき場所へ導くのだ。
そのために『未来で結ぶを希う』という言葉を目印としたのだ。
我が付けたこの目印は、
天上の神々の言葉でもあるから殊更強い力を持つ。
強い力の目印は我との強い縁となった。
目印の…、縁の化身。それが結希なのだ。
神の加護を持つ者…の方がわかりやすいかな。
だから誰よりも我らと言葉が交わせたのだ。〗
"清算"が変な意味じゃないならいいか。
……往くべき場所?
「親和性が強いのは、縁……、加護……。
水神様の回復は、授けた力を回収したから?」
桜庭の力は神の力。
死んだ桜庭は池に眠る。遺骨を目印に魂を呼ぶ。
池の中にはずっと昔の桜庭当主もいる。
おそらく……初代から。
死後に力を回収するんだ。
最後の子が育つまで……。
〖そうだ。池に眠る桜庭当主の魂。
人の身では脳が耐えられないのも、
神の力を行使しているから。
先程役目の話が出たが、眠る事自体が役目なのだ。
何度も言うが喰ったりなどせぬぞ。
授けた力の持ち主が池で眠る事で我に力が戻るのだ。〗
「池の水は水神様の力。
水が、お茶が美味しかったのは…、
水神様と親和性が強いから?」
〖その通り。神の力の込もった物は、
呪いに関わる者にとっては嫌な物になる。
だが結希は最後の子で天上の神々の加護を持つ子だから、
呪いの血筋でも神の力が込もる水を美味しく感じた。
結希以外の桜庭にはどうしても不味いんだ。〗
「私の力が強いのは?」
〖最後の子だから…と言うより、
神々との縁の言葉を持つ子だからだろうな。
『未来で結ぶを希う』という言葉に込められた願い。
それが結希と言う存在の力の1つになった。
これら全ての要素が、
力を覚醒させた結希に私の記憶の一端を見せたのだ。〗
〔父さん!結希達の会話半分位しかわからなかったけどどうしよう。〕
〔心配するな。俺は¼もわからん。〕
「おじいちゃん達への説明は後でするから待ってて!!
カナちゃんの遺影が隆延に見えたのも水神様の記憶なの?
隆延の葬儀で……なわけ無いか。
当時は写真なんて無いもんね。」
〖あれは……。神も呪いも関係ない。
桜庭隆延個人の怨念・無念だな。〗
予想外の言葉でびっくりした。
祖父も叔父も同じようにびっくりしていた。




