76.現れたのは…。
水神様が映した映像は……。
「え、着物?着物…じゃない。
これ、陰陽師が着る服じゃない?狩衣。
義伯父さん神社でたまに着てるよね?」
「陰陽師じゃなくても、昔の貴族は着てたんだよ。」
「これ……、いや違うか?」
水面に映った人物……というか風景は、
とても昔の人達の暮らしだった。
平安?鎌倉?……江戸では無い気がする。
だが、肝心の人物はどこにもいない。
と言うより数名映ってるからどの人かわからない。
しかも皆後ろ姿だけ!うなじと烏帽子しか印象がない。
皆、建物の中に入っていく。
ここ…どこかで……。
「顔は?」
〖まぁ待て。……………偉そうだな…。〗
「居ないもの扱いがお好みのようだね。」
〖わかった!悪かった!!もうすぐ来る!!〗
「信用も信頼も、ゼロどころかマイナスだもんね。
神なのにポンコツって…………あ、いや。神だから……かな?
人が微生物の個々を見分けられないように、
神も人の個々を見分けられない?
だから力の配分も過剰になって殺しかける。
桜庭の守護神とは言うものの、
"人"への扱いは桜庭だろうがそうじゃなかろうが一緒なんだ……。」
〖そんな事はない!!!〗
「意識と無意識は別物でしょ?
小さすぎるものを認識するって、
それに対して何かをするって大変だもの。
目に見えない生物は顕微鏡で見るしかない。
人にとっても肉眼で見えないものがある。
神も一緒なんだろうなって、思っただけだよ。
そう言う事にしといたら?
それならポンコツでも問題ないと思うんだけど。
むしろ、それだったら私心から謝るよ。」
そう、そうなのだ。
私は別に殺されかけた嫌味で言ったつもりなどない。
大きすぎるものが、小さすぎるものを認識する。
不可能ではない事だがとても大変なのだ。
今までの物言いだって本当に、
心の底から謝りたいと思った。
水神様達が神様基準で物事を言っていたように、
私達も人間基準で物事を考えてしまっていた。
悪かったな…と本当に思ったのだ。
神の手違いで死にかけた事はまだ許さないけどね。
〖そんなわけ………ない。
我らは、お前達桜庭に感謝こそすれ、
認識してないなど……、そんな事…………あり得ない。〗
「感謝してる人間を普通は殺さないけどな。」
「本当だよ。
最後の子、希望の子である結希すら殺しかけた。
結希が今言った事が事実なら、
僕らも一番納得できるし神様達にとっても理由が立つ。」
「ね。でもまぁ、今は般若の正体……あ、やべ。」
「ゆ~き~ちゃ~~~ん??」
いろいろ落ち着いていた雰囲気を
自分でぶち壊してしまった。
これは………秘技・土下座!!!
「ごめんなさい!!!」
「……………まぁいいや。進まないし。
ほら結希、ちゃんと見て。結希しかわからないだろ?」
「はいぃぃ……。」
流されただけだろう…。
きっと後から………、ダメだ。想像してはいけない。
叔父の言う通り私しかわからない。
しっかりしろ。
………映像の中で、襖が開いた。
「あ!!!この人!!!
キツい雰囲気の今入ってきたこの人!!!
両サイドの人も似てはいるけど違う。
この人達はもうちょっと優しそう。
真ん中。真ん中の人!!この人誰?水神様!!」
「…………え…僕、こんな顔なの?
狐と鬼が混ざった見たいな…キッツい顔……。」
「お前じゃなくて、結希が見た遺影の話だろう。
まぁ、怒った時の雰囲気は似てるな。顔じゃないぞ。」
「…………ちょっと……気を付けよう…。」
…叔父と祖父のこそこそ話は聞かなかった事にして、
水神様の反応がない。また何か考え込んでるの?
〖………そんなわけ………〗
「あ"ーーもう考えるのは後にして!!この人誰なの!?」
水神様の胸ぐらを掴んで揺さぶった。
力の限り揺さぶった。
何度目かの揺さぶりで、ようやく我に返ったようだ。
〖………?なんだ?〗
「あの真ん中の人誰なの!?」
「あ、あぁ。あやつは桜庭隆延。
呪いを受けた張本人だ。両隣は兄と父だな。
新当主の披露目挨拶だろう。」
池、桜、祠、遺影………。私が見ていたのは……、
呪いが…始まった……頃の姿と…人物………だったのだ。




