74.見守る者と怒る者
泣き疲れて今にも寝そうなのを何とか耐える。
まだわからない言葉があったから。
「あの、役目って何?
水神様の力になったら皆消えちゃうの?」
「かっ、顔……ふっ、涙でぐちゃぐちゃ…。
鼻水垂らしてないだけ成長した証だろうね。っぷ」
「う、うるさい!
死んだカナちゃんが悪いんだから!!
…………違うな。水神様が悪い!!」
〖いい加減怒るぞ!!!〗
「で、役目って?」
〖なぁ…。〗
「…役目な、役目。
水神様を回復させること…だろ?父さん。
魂が池に入らないと役目が果たせない、
としか聞いてないんだ。」
〖……泣くぞ。〗
「まぁそんなものだ。
俺は起こされるまではずっと眠ってたから、
何かをしなくちゃならないとかは無かった。
眠ってるのが仕事…でいいとは思うが……。
親父も眠ってるんだぞ?他の人達も。
別に喰われるとか、吸収されて消える…なんて事も無い。
池の中は、そういう殺伐とした感じは無いんだ。」
「ふーん。人喰いは……魂だけど、無いんだ。」
〖人喰いなぞするものか!!〗
「まぁ池に魂が在る事が前提だがな。
池に入ったからって消えるわけじゃない。
今のところは眠るだけだな。」
〖なぁ………。〗
「そっか、わかった。」
生贄みたいなイメージだったけど、
そんな危険なものじゃないらしい。少し安心した。
「じゃあ、えーっと……。あ。
見守ってたって言ってたよね?
寝てたのに見てたってどういう事?」
「これは簡単だ。夢で見るんだ。
水神様はいくらポンコツでも水の神様だ。
その力のついで…と言うか影響で、
水がある所の映像を俺達が眠っている夢の中で見れるんだ。
雨だったり川だったり、水道だったり。
世界中は流石に無理だろうが、
少なくともこの地域一帯は水を介して見通せる。」
「えー。超能力みたいじゃん。」
世の超能力者もビックリな力に、
ただただ驚いた。
欲しいかって言われたら…、
私は要らないかもしれない。
「だが、ただ見るだけだ。何も出来ない。
転びそうな子も、車に轢かれそうな猫も助けることは不可能。
ただ見てるだけ……っていうのも考えものだな。」
ほらやっぱり。見てるだけだった。
どうせすごい力なら、
"どこでも○ア"みたいな力なら欲しいな。
いろんな移動が楽そうだから。あ、いやそれはいいの。
「それで、私の事見守ってたくれてたの?」
「俺は……お前じゃないんだ。」
「は。」
「父さんが見守るのは、母さんしかいないもんね。」
「ば、馬鹿そういうんじゃない。
ただ俺は、アイツに早いうちからいろいろ背負わせた。
だから見届ける責任がだな…「わかったわかった」」
少し、安心した。
祖父母の仲の良さは近所でも評判になるくらいだ。
祖父の葬儀の時の無表情な祖母の顔は忘れられない。
惚気話はたくさん!次行こ、次。
「『自分が殺したと思ってる』
これは…、カナちゃんの未練話聞いての想像だけど、
水「ちょっと待って、未練話って言い方嫌だ。」は?」
「僕が未練タラタラみたいな印象になるだろう?」
「いや、当たらずとも遠からずだ「黙って。」はい。」
〖おい娘よ。器の子怖すぎ「あ"ぁ"?」あっ。〗
うん。めちゃくちゃ怖い。
桜庭家で一番おおらかな人は誰と言われたら、
知り合いは皆叔父を挙げるだろう。
呑気・お人好し代表は父だ。能天気も。
そして私達家族内で共通の意見は、
桜庭家で一番、怪物級に怖いのが叔父なのだ。
そして叔父が怒った時は口を噤むべしとも言う。
一睨みだけで胃がキュッとなる。
ここまで怒ったのは久しぶりかもしれな……い………。
この顔何かで見た…。こんな人知らないのに。
知らない………知らない………ああああ!!
「水神様!!この顔!!この怖い顔!!」
「…………………」
〖む、娘よ。その怖い顔がこちらを見ておる……。〗
「知ってる、めちゃくちゃ怖い!
でもこれ!これだよ!!この鬼の形相……一歩手前!」
「…………………」
怖い、怖すぎる。無言が余計に怖い。
でも違う!今は怖くても喋らないといけない時!
ええい、女は度胸!!!
「カナちゃんの遺影の顔!!
見たことない、知らない人だって思った遺影!!」
〖!!!………!!!!!〗
驚いた水神様は、
怖い気持ちを何とか押さえつけて叔父を凝視していた。
………何かに気が付いたようだ。




