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07.柵拉場

父方親族 桜庭家 

母方親族 瑞樹家 

  参列者は母の両親と兄のみ。


伯母の嫁ぎ先 田牧家 

  参列者は晃太と晃太の母

怒涛の弔問客ラッシュがやっと終わった。



お通夜は滞りなく進んでいたが、

明日の葬儀が親族のみの弊害で想定以上の弔問客が通夜に集中した。

私も途中までは室内に座り読経を聞いていたのだが、

葬儀社の人達から香典返しが足りなくなりそうだと言われ対応に追われた。

追加分の依頼、読経後の食事の場所、上座用の座布団は出してあった筈が行方不明などなど、

叔父の人望の賜物なのか喪主で式のプランを決めた父のせいなのか、

とにかく忙しかった。


葬儀社職員も葬儀プランに合わせた人数だったので最小限だったらしく、

記帳テント担当に殆どの人が入ってしまい、

その他の作業をする職員が居なかったのだ。

両親は喪主夫婦、祖母と伯母は血縁者、

母方の親族はあまり関わりが無くて気安く声をかけられない。それに結構なお年。

唯一義伯父にはヘルプを出せそうだったが居眠り中。

クソッタレ!!!


父には後で小言を一言二言三言言うとして、

てんてこ舞いの中、何とか通夜を終えたのだ。




意識が飛びそうな今、

祖母から聞かされる予定の詳しい話……無理じゃないかな。


弔問客が一通り落ち着いて私自身が食事にありつけたのは夜の10時過ぎ。

お酒が入った親族一同は手伝いなどしてくれる筈もなく、

お焼香だけでもという弔問客への対応はやっと父に押し付けられた。

大好きな叔父の事が嫌いになりそうな中、

自宅玄関を閉め、喪服を脱いでメイクも落として

楽な格好で祖母達から詳しい話を聞くことになった。


本音は寝たくて堪らないが、

祖母達は話をするなら明日の葬儀前でなければならないらしく

濃いブラックコーヒーを淹れて席に着く。

意外にも母の両親もこの場にいた事の驚きが、

ほんの少しだけ疲れを吹き飛ばしてくれた。



「私が結希ちゃんに話したのは水の神様の呪いまでだったね。」


「ちょっと待って母さん。結希にあの事話すの!?」


「黙ってなさい麗花。結希は夕方のあんたと晃太さんの会話を聞いていたのよ。

その前にも朝倉が余計な事を言ったせいで奏多の件はもう隠せない。」


「……結希、本当に私達の話聞いていたの?」



震える声で私に訪ねる伯母は、

悲しみというより絶望の眼差しをしていた。



「義伯父さんに、朝倉さんが謝って来たことを聞きたくて探してたの…。

何も知らないならそれでいいし、何か知ってるなら教えて貰えるかなって思って…。」


伯母の顔色がさっきよりも悪くなっていく。


「レイちゃんは休んでるし暇なのが義伯父さんだけで、

でもレイちゃんの部屋から話し声がして、聞くつもりは無かったんだけど…。」


「聞いていたのね………。」


「うん…。ごめんなさい。でも私も混乱してたの。」


「そうね、仕方ないわ……。

母さん、話を止めてごめんなさい。続きをお願い。」


「じゃあ続けるわね。呪い云々は取り敢えず後にして、

桜庭家の成り立ちから話しましょうかね。」



想像以上に重たそうな話で少しだけ後悔しつつも、

今日1日だけでキャパオーバーの量のモヤモヤを解消するために覚悟を決めた。



「桜庭は、桜の庭と書くわね。それは昔からずっと変わらない。

でも桜庭家の先祖達というよりその周りの人、

つまり遠い昔の近所の人達は、嫉妬と嫌悪感を込めてこう呼んだの。


   "柵拉場"  と……。」

当初の葬儀プランは自宅葬なので30人~40人程度の予定だった。父からしてみればそれでも多いかな位。

実際は叔父の友人知人や父の友人知人が主に沢山来すぎて倍以上に。

参列出来る人数は上限があるので入れない人達はお参り後に帰って貰った。


小言を言われた父は大慌てでプランの選択ミスを土下座で謝っていた。

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