69.水神様と幕間の話
〖1つだけ訂正を。
池に飛び込もうとしたのは田牧の神主だ。〗
「いやそこは別にいい………え?
神主って、義伯父さん?」
〖そうだ。誰よりも儀式の事を知っていたからな。
神主の繋がりで似たような事例の話を聞いていたらしい。
呪いを解く儀式は本来対象となる人物は殺さねばならんから、
お前が私に殺されると思っていたらしい。
だが桜庭の儀式は特例だ。
遠い昔に約束した我々の償いの1つ。
未来の儀式を行う子の命は奪わず守るのだ。
神の理不尽な呪いを被った未来の子を守るのが、
我やチビ共の償いなのだ。〗
だから……義伯父さん。
いつもずっと黙ってる人だったから、
あまりあれこれ気にしない人だと思ってた。
儀式を知ってて心配してくれていたのか………。
あ、あれ?
それはいい。危険な儀式だってのはわかった。
「未来の子の命を守る筈の神様達に、
私、殺されかけたんですけど。…………それは?」
〖…悪かった。本当に悪いと思ってるんだ。
信仰を無くされても当然なのはわかっている。
でもまだ無くさないでくれている事もわかっている。
信用がない事も。
そなたが死にかけたのは……本当に事故なのだ。
チビ共も、進んで力を使う気はなかった。
焦れて力が溢れてしまった……。
いや、すまない。これは言い訳だな。
そなたにはそんなのは関係のない事だな。〗
「………随分と殊勝じゃない。
わかってくれてるなら、別にいいのよ。
神様は嘘をつかない。いや、つけない。
人の言葉と違って、神の言葉には力が込もってしまうから。
冗談で生贄を差し出せと言ったら
悪神として語り継がれ、罪もない命が贄にされる。
そういう話はごまんとあるから、
嘘をついてないことだけは……信じてる。」
〖……ちょっと、トゲを感じるが………うむ。〗
義伯父と意外な行動も、水神様の態度も、
あまり現実味はないけどさっきいろいろ言った後だからか、
スッと受け入れられた。
誰も悪くは無いのだ。………いや朝倉育築が悪い?
でも育築も途中で引き返したいと思っていた。
神様との約束は結局守れなかったけど、
守ろうとしていただけ。
神様達も穢れてさえいなければこんな事になっていない。
そもそも穢れたのは育築よりずっと前からだ。
桜庭が………台頭した……頃か。
……考えても………答えは出ない。
…いろいろタイミングが悪かった!
よし、余計な事考えるの終わり!
それよりも池の話!!桜庭の葬儀の話!!
水神様が来ちゃったからまだ1つも聞けてない。
それ以外にも、たくさん聞きたい事がある。
後回しにされた話とか。
他にもたくさん……、たくさん話したい事もあるのだ。
欠片の神様達の帰る場所だって探さなくちゃいけない。
水神様にもまだ聞けてないことがある。
あれ、私結構やること多いな。
……何にせよ、水神様には2人を起こしてもらおう。
「水神様。私いろいろ忙しいみたいなんで、
おじいちゃん達を起こしてもらっていいですよね?」
〖か、確定事項みたいに言うのだな。〗
私の言葉に、口元をヒクつかせて水神様はそういった。
何を驚いているのだろうか。わけがわからない。
「確定事項でしょ?起こせるのは水神様だけだもの。」
〖そなたの意識の中だろう。〗
「私なにもしてないよ。
水神様が来ちゃったから2人は動かないんだよ。
カナちゃんの遺体で起き上がった時も、
お父さんとレイちゃんが止まっちゃったんだから。
勢い良く叩いてもダメだったんだよ?」
〖………叩いたのか。〗
「いやそれはいいんだって。2人を起こして?
水神様が離れれば起きるのなら今はどっか行ってて。」
〖どっか行けって…………
神に向かってなんたることを!!
あっ…………に、睨むな…。相当怖いぞ。〗
睨むなって……失礼な!
ちょっと半目で見てただけなのに…。
ムカつくけど進めてくれるならいいや。
………やっぱりムカつく!!
「で、起こしてくれるの?くれないの?」
〖わかった!"起こせば"良いのだろう!!!〗
???
変な所強調するな……。まぁいい。
私は2人が起きるのを待つだけだから。
そう思っていたら、水神様は手を翳した。
光が溢れ出した手のひらを、…………私に向けていた。
光に………包まれた……。




