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58.水の中に揺蕩う声




『どんどん沈んでいく…。


 どんどん苦しくなっていく……。


 あたまが回らなくなっていく………。


 ……いしきがとおくなっていく………



 ………なんで…………なんで………………しに……た……………く…………………な……。』






とても苦しい……声だった。

苦しくて、助けてほしくて、死にたくなくて……。

深く深く沈んで……溶けて…………消えていく。


聞いたことのある声だ。

聞き覚えがあって、安心感がある。そんな声。

これは夢?それとも現実?…誰なの……?



何も思い出せないのだ。

今どこに居るのか、何をしていたのか、何をするべきなのか。

ゆらゆら揺れて…ふわふわしてる…。

それだけしかわからない。それだけしか感じない。

目が開いてるのかさえわからない。

………生きてるのかさえ、わからない……。


〘………………ょ……………っ……〙


ふと声がした。

小さな小さな声だった。

どこから聞こえたんだろう。

もう聞こえなくなってしまった。


気のせいだったみたい。

このまま眠ってしまおうかな。

ゆらゆら揺れる揺り篭に身を任せて。

夢の声の主を……助けられないかな。

もう一度聞いたら思い出せるのに。

目を閉じたら眠れるかもなぁ。

開いてたかはふめいだが。


ねむってみよう。



ゆれて、とけて、きえていく…………。




〘………………ょ…………た………よ………

             眠ったらダメだよ!!〙


?ねかせてよ……。


〘だめ!お……て……………は……て〙


きこえないよ…


〘ごめんね……………も………き……〙


もうつかれたよ


〘ぼく………かえ…………おねが……〙


かえ?かえ…かえ…


〘かえ……おうち………てつだっ…〙


おうち…かえ……かえる?


〘そ……よ………かえ………かえろう〙


かえろう、どこに?


〘わしら………やしろ……みつけて〙


やしろ……


〘すま……こんな…………かった……〙


なんなの?ほんと


〘だいじょ…………ねむっ…………め〙


……………………………ハッキリ言って!!!


〘ぎゃっ!!ごめんなさい!!!〙




あれ。わたしおこったみたいだ………。

さっきからずっとやかましくって………。

どうしようかな。

なにかをしないといけないんだっけ……。


んーーーーやっぱりねよう。

くるしそうなこえ、たすけをもとめる声。

知ってる…声……。


もう一度聞いたらわかるかな……。

忘れていることも思い出せるかもしれない。

寝るには………どうするの?



〘〘〘〘〘〘〘〘〘〘寝るなーーーー!!!〙〙〙〙〙〙〙〙〙〙


……何なの?

ずっとうるさいんだけど!!

私は寝たいの。何が問題なの!?


〘お…怒んないでよ……。ぼくたちはただ…………。〙


そもそもうるさい貴方達、誰?


〘……ごめんね、言えないよ。〙


〘君が…君自身を取り戻さなきゃダメなんだ……。〙


自分がわからないとダメなの?

じゃあどうすれば良いの?

何をしたら思い出せる?

あの声聞いたらわかるかもしれないのに…。


〘思い出すために聞くべき声じゃない。〙


〘もどかしくて堪らないのだろうがあれは良くない。〙


何で?知ってる気がするの。

何か思い出すのなら知ってる事の方がいい切っ掛けになるでしょ?

思い出さないとあなた達が誰かすらわからないのに…。



〘…………今は思い出さなくていい。〙


え?


〘眠らないように………消えないようにすればいい〙


……眠ったら…消えたらどうなるの?


〘死ぬ。遺体すら家族の元へ還れない。

全て消えてなくなるのだ。それは我らも望まない。〙


………消える………じゃあ何すればいいの。


〘おしゃべりしよう!

ぼくたちずっと話してみたかったんだ!〙


ずっと?貴方達は私の事知ってるんだ…。

……ねぇ、さっきの声は誰の声なの?

もう聞きたいって言わないから誰だか教えて。

気になっておしゃべりも出来なさそう……。


〘そうなの?おしゃべり出来ないのはイヤだなぁ。

あれはね、か〘言ってはならん!!!〙 !!!〙


!!!!!

……誰かすら知っちゃいけないの?




〘……すまないが"誰か"は言えない。

だが"何か"ならいいだろう。あれは死者だ。


死者の最期の声。最期の………その瞬間の声だ……。〙


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