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04.不可解な死

私は居間を後にした。

気まずかったのもあるが、何となく…そう何となく感じていた違和感の一端を垣間見てしまった気がしたのだ。



葬儀社の人達と話していてわかったのだが、お通夜だけ参列者を迎えお経を読んで貰い、明日の葬儀は親族のみで他は一切受け付けないという流れだった。

祖父の時とだいぶ違っていたがそういう場合もあると言われたので一応納得していた。


閉じられた棺の小窓も損傷が激しいと言われれば納得していたが、遺体を確認したのが父だけなのが少し気になっていた。


不幸な事故、あまりにも不幸な事故。故意でもなく、悪天候でもなく、不意の出来事。

仕方がなかった・避けられなかった・予想できなかった。

誰が悪いわけでもないが到底納得出来なくて受け入れられなくて…。


そして伯母の言葉。  『気をつけて』

恐らく叔父との最後のお別れの事ではない。

じゃあ何なのか。何を気をつければいいのか。

確かめる術もなく持て余していた疑問を更に深めるような朝倉からの意味深な謝罪。



朝倉は"何か"を知っているのだ。

祖母も両親も伯母も。この家の誰もが叔父の死を悲しんでいない。そして受け入れている。

伯母は実感がないと言っていたけど、違う。

実感がないんじゃない。不意の出来事じゃない。


    "ついに来てしまった" 


そう、来てほしくはないが来るかもしれない出来事………そんな感じだ。

伯母は部屋で休んでいる。

義伯父は何かを知っているのだろうか…?

後でそれとなく聞いてみよう。



「結希さん!」

そう思って歩き出した時、誰かが私を呼び止めた。


「あなたは、朝倉…さんと一緒にいた……」


「山崎と言います。急にお名前ですいません。皆さん桜庭さんなので…その…」


「大丈夫です。ややこしいですよね、名前でいいですよ。ところでどうされたんですか?」


「ありがとうございます。あの桜庭さん…先輩の事なんですけど…」


「!はい。」


「本当に事故なんだと思うんですけど、

ご家族の皆さんの様子が少し気になってしまって…上司もあんな感じなので…。」



いいタイミングで私と同じ疑問を持つ人が現れた。

この人が一番事故の瞬間を知っている。


「事故の時、何か気になることとか無かったですか?」


「事故の時ですか?特に変わった事は無かった筈です。」


「些細なことでいいんです。突然何かが飛び出した・落ちてきたとか…」


「突然…特に………あ。

雨が少しだけ降りました。

傘も要らないくらいの小雨だったんですけど、

ほんの数十秒程度のよくある通り雨見たいな感じで。」


「雨………」



伯母は言っていなかった。

伯母も知らなかったのか気にしていなかったのか、

あるいは敢えて隠したのか。



「ほんの少しの雨だし工事現場の人達も気にしていなくて、

それに事故の瞬間はとっくに止んでいたので

自分も気にしてなかったんですが…。

本当にそれくらいなんです。その雨で足場は崩れないだろうし…。

僕も初めて言ったかもしれません。」


「山崎さん!ありがとうございます!」



私は山崎さんへのお礼もそこそこに駆け出した。

義伯父の元へ………。

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