39.桜庭家当主
「私……?。あの、そもそも本物の桜庭って?」
父じゃないけど目が回りそうだ。
結構纏まったと思ってたんだが……。
そして私の名前。嫌な想像なんてするんじゃなかったかな……。
「本物の桜庭。抜きん出て優秀と言うわけではないけれど、圧倒的な察知力・洞察力を発揮する人。
"一を聞いて百を知る"という言葉の権化かしら。」
「そんなすごい能力持ってないよ……。」
「突然なの。突然覚醒する。
奏多のきっかけは10歳の時の熱だった。
明徳さんは、麗花が生まれた時だって言ってたわ。お義父さんの時は…ちょっとわからないけど、30歳は越えてなかったらしいわ。」
「その覚醒の時期は一定じゃないんだな?」
「そうよ突然、前触れもなく。
お義父さんが亡くなる前に明徳さんに言ったそうなの。
まるで何かに意識を操られてるみたいだって。
自分の意思で自分の口で話してるのに、全然知らない筈の事を見てきた様にスラスラ言える。
そんな感じだって。」
(それ……さっき身代わりの話してた時……。
知らない話をしてるのに知ってたみたいに……。
見てきたみたいに話してた…。
…………だからおばあちゃん、あの時『やっぱり桜庭なのね』って言ったの?)
祖母の言葉は心当たりがありすぎた。どう考えてもおかしいのだ。桜庭の歴史や呪いの話を知ったのはほんの数時間前。
何にも知らなかった筈なのに、祖母も語っていない情報をペラペラと話していた。
「結希、結希ちゃん。こっちを向いて。」
「…………な……に…?」
祖母に呼ばれて意識が戻ってきた気がする。
意識が遠くなっていたわけではないが…。
「結希。きっと心当たり、あるよね?戸惑ってるよね?
いろんな情報を詰め込みすぎてパニック寸前よね?
だから今は考えないでいい。考えるのは後にしなさい。」
「け……結構………既に…色々後回し…してるけど…。
夕方から…さ……。」
「それはそうよね。
1個、おじいちゃんから話してもらった事教えてあげる。
とりあえず口に全て任せてみるの。口から出る言葉に。
おじいちゃんが奏多に話をする時はそうしたって。」
「……なるようになれみたいに?」
「そうよ。奏多がね、おじいちゃんに言ったんですって。
『お父さん水神様の化身みたい』って。話してる時だけね。」
「そ…そうなの?おじいちゃんが水神様?変な感じだね。」
「そうよ。後になって考え込んでグチグチ言ってたけどね。
だから、怯えずにいていいのよ。別に人格が変わるわけでもないんだし。考えるのは後でもいいって事よ。」
祖母に励まされたからなのか、祖父や叔父の話を聞けたからなのかわからないが、色々後でもいいかと思えた。
………それにしても情報多すぎだ。
「母さん。結希の様子を見たら何となくわかったが、各代に1人って事は昔も居たのか?その…本物が。」
父が察してくれた事が意外すぎて、モヤモヤより驚きが勝ってしまった。
「今までの桜庭の当主はみんな本物の桜庭が務めてきた。隆延の代がおかしかったのよ。
山崎さんが言った通り、その代の本物は隆延の兄だった。でも当主になったのは隆延。
別に先代…隆延達の父親がミスをしたんじゃない。敢えて隆延に当主を任せた。その方がいいと思ったから。」
「…隆延を当主にしない方が不味そうだったから?」
「そう。隆延は善人ではあったけど、同時に出世欲も強かった。
もし兄を当主にしたら、隆延は家に反抗するようになる。それだけならいい。
最悪桜庭と敵対してる家に協力をするようになると、隆延の父と兄は察した。
桜庭には災害感知に敏感な人達がたくさん保護されてるからね。
それこそ桜庭に掛けられた呪いよりもっと悪いことが起きるかも知れなかったから、それを防ぐために隆延を当主にしたの。
だから、隆延の代だけが特殊で後は本物が当主だった。」
「変な言い方だけど、山崎さん……間違えた。
朝倉育築に呪われた事は不運だけど、幸運だったんだね……。」
本物の桜庭(洞察力や察知力が強い者。)
桜庭隆延の父・祖父・兄
桜庭結希の叔父・祖父・曾祖父
基本はこの人達が当主になる。
桜庭家の事業(保護した人達に就職先を見つける斡旋業)については、朝倉・山崎両名は夢で知ってます。




