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03.不幸な死

朝倉 叔父の職場の上司

山崎 外回りを一緒にしていた叔父の後輩

「結希ちゃんどれくらいこっちにいるの?」


「数日はいるよ」


「そうなの。奏多も結希ちゃんがいてくれると嬉しいと思うよ。」


「うん…そうかな……。カナちゃんもういないんだっけ。」


「実感無いよね。私もまだ棺の中の奏多は見れてないの。」



伯母が言うには、叔父は事故後暫くは息があったらしいが搬送中に亡くなったらしい。

不幸な事故、突然の事故だったのだ。


いつもの外回りの最中、いつも通る道で、いつもの時間。

風一つ吹いてない穏やかな晴れの日に、突然工事現場の足場が崩れて叔父を押し潰した。

外回りに一緒に行っていた人は毎回自販機で飲み物を買うため、叔父はいつも先に行くそうだ。

叔父の分の飲み物まで買ってから走って追いかける、これがいつもの日常だ。

工事現場も数週間前からあったので、事故の日に変わった事は無かったらしい。



それなのに叔父は死んだ。

見るも無惨な姿で。



「痛かったよね…カナちゃん」


「そうだね。」


「レイちゃん、私全然涙出ないよ…、

全然悲しくないの。まだ何かの間違いだって思うんだ。」


「わかるよ。喪服なんか着てるけど、まだ夢なんじゃないかって思ってる。」



伯母も同じ気持ちでいるんだと、ほんの少しだけ安心した。

祖母も両親も涙一つ無く私を迎えた理由をやっと理解した。

叔父の訃報を、まだ誰も現実だと思えていなかったのか…。


  ………誰も?



「レイちゃん、遺体確認に行ったの誰だろう。おばあちゃん?お父さん?」


「確か陽人だったと思うよ、母さんは途中まで行ったけど無理だったみたい。」


「そうなんだ…。だからまだ見ない方がいいっておばあちゃん言ったんだ。お父さんから聞いてたから。」


「そうね、母さんもまだ見れてないから私達と一緒で実感無いんだろうね。」


「明日には火葬だし出来れば最後のお別れしたいから会えるかな。」


「……最後………だね」


「レイちゃん?」


「……………。」



伯母は口を噤んでしまった。

悲しみが湧き出てきたのか、それとも具合でも悪いのか。

取り敢えず伯母を休ませようと思い、伯母の部屋に連れて行った。

着物なので完全に楽には出来ないだろうがベッドに横になるだけでもマシだろう。


「お寺さん来るまで休んででいいからね。」


「ありがとう…。」


「お水持ってくるね。」



「結希ちゃん」



伯母には似つかわしくない強い口調で私の名を呼んだ。

「どうしたの?」


「………」


「レイちゃん?」


「気をつけて」


「どういう意味?」


「………」


「……わかった。」


伯母は私の返事を聞くなり眠ってしまった。

伯母が言っていた意味はわからないが、おそらく心配してくれたのだろう。

伯母の事は気になりつつもまだやる事があるのでキッチンに戻った。


戻る途中で祖母達に報告しておこうと通り道のついでに居間に寄った。

叔父の職場の人はまだ祖母達と話し込んでいたので一番端にいた父に伯母の事を伝えた。

すぐに下がろうと思っていたのだが、叔父の職場の人に話しかけられてしまった。


「こちらのお嬢さんは?」


「この子は私の娘で奏多の姪になります。」


「初めまして、桜庭結希です。」


「!!!」



私が挨拶するなり職場の人は勢いよく土下座をした。

「申し訳ありません!誠に申し訳ありません!」


「!?」


「私共の不手際でお嬢様には多大なご迷惑を「朝倉さん」!!!申し訳ありません…」


祖母は朝倉の言葉を遮り、私には謎まみれの謝罪を止めさせた。

この部屋の中で驚いているのは私だけらしい。

祖母と父は憎々しげに朝倉を睨み付け、母は悲しげに私を見つめていた。


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