32.帰る物
「最後の子?なんだそれ」
「知らないの?貴方が血を吐き喉をかきむしった時、貴方自身が喋った言葉よ。」
「俺の…子供達が……死んだとき………。」
「……そう、その時。
貴方の意識は何を感じてた?それとも意識はもう無かった?」
「なんて言ってたかはわからない…けど何かを言ったような気はする…。
何かを……………【みらいでむすぶをこひねがう】。
…あんた、名前はゆきって言うんだろ?どんな字書くんだ?」
「希望を結ぶ、って字よ。おじいちゃんとカナ…奏多叔父さんが付けてくれたって。」
(さっき何か言ってたけど小さくて聞こえなかった…。こ……何だったの?)
「ゆき…結希か……。俺の……死んだ娘もゆき…なんだ。
……雪が降る日に生まれたから雪。かわいい子だったよ………。」
(子供の名前を聞きたかったんじゃないけど…。
知らないって言ってたもんね……。)
「じゃあ「俺が…言ったんだよな?」 そう聞いてる。」
「何て言ったかわかるなら教えてくれ。
何かを言ったんだ。何かを聞いたんだ。…何かを。」
「おばあちゃんいい?教えて。」
「いいわよ、もうきっと大丈夫。」
(娘と同じ名前の子に、もう危害は加えられないわ。)
「??じゃあ言うね。
『朝倉は世に1人しか必要ない。たった1人で背負い苦しめ。安倍の咎がある内は、決して消えない呪いとなれ。安倍の咎が消えた時、朝倉の血は地獄へ堕ちる。』
『私のかわいい子達よ、最後の子を守り抜け。耐え抜け。我らが目覚めるその日まで。我らが呪いを償うその日まで。
桜の畔の小さな池で清めながら待ちなさい。』 以上。」
「ん……。夢の中で見た過去の記憶と実際の俺の記憶は少しずれてるんだ。あんたが言った言葉の前半部分はわからないが、後半は俺の記憶の中の言葉に似ているが少し違う。
『桜の畔に住まう物、目覚めて故郷へ帰り着く。』
これは実際に聞いたんだ。夢でも。」
「それってもしかして…」
「そうね、菖浦さん。悪いけどまた祠へ行ってきて頂戴。山崎さん、まだ覚えてることある?」
母に指示を出した祖母は再び育築に尋ねた。
今回は母も無言で頷き、祖母の意図を理解していた。
山崎……育築……これちょっと有りかも。
「結希ちゃん?何か変な事考えてるの?」
「!!何もないよ?ねっ、山崎さん。続けて続けて。」
「はい?…他は……多分、俺が…穢した神達の言葉……だと思う。実際は聞いてない、でも夢ではいつも聞く怨嗟の声。
『帰りたい、帰してくれ、呪いたくない、社へ帰せ、水神に手を出すな、おうちにかえりたい、桜庭に触れるな、眠らせて、よせ、止めろ。………呪ってやる。』
囁くくらい小さな、でもたくさんの声だった。こっちを見つめながら言うんだ。」
最後の子についてはわからなかったが、神様の言葉は違ってたので収穫は有ったと思う。
私の予想が合っていた。朝倉の呪いはやはり…。
「山崎さん。
貴方は呪われている。私達桜庭も呪われている。
呪ったものが何か、わかりますか?」
「水神に手を出したから呪われたのでは?」
「おばあちゃん、どう思う?」
「……結希が思ってるのとそう変わらないと思うわ。」
「逆だって事?」
「そうね…逆。全て逆なのよ。
結希は…きっと奏多や明徳さんと同じなのね…。
もっと早くに教えてあげるべきだったわ、ごめんね。」
「あの、さっきから何を言ってるんだあんた達。」
私達の意味深な会話に我慢できなくなった育築が割り込んできた。顔には出してないが父も伯母も育築と同じ気持ちなのだろう。
義伯父は……どうだろう。神職だからいろいろ知ってるのかな?
「説明してもいいよね?山崎さんも当事者でしょ。」
「そうね、いいわ。結希が説明してくれる?」
「わかった。じゃあ、私達を呪ったものについて私の予想を言います。ほぼ確実だと思うけど。」




