31.カナちゃんは…
「ずっとずっと昔から、桜庭家は水神様を祀って来た。それこそ桜庭隆延よりずっと昔から。
貴方が言った"桜庭敷地内にある筈の神社"、と言うものは存在しないの。少なくとも桜庭隆延の時代には既に神社は無かったのよ。」
私も桜庭の歴史話で初めて水神様を知った。
そもそもどんな神様なのかとか、家の信仰宗教とか気にしたこと無かった。仏壇と神棚があるし宗教に拘りが無いのかなとさえ思っていた。
神棚で祀るのはどんな神様だとか、仏壇のご先祖様はどんな人だったのか考えたことも無かった。
(20年この家で暮らしてたのに…何にも知らなかったんだなぁ…。桜庭の呪いも水神様も。
カナちゃんは…知ってた……んだよね。
16年前は既に知ってて、私を水の中から引き上げてくれた。
きっとカナちゃんも私が溺れたとは思ってなかった。
水の中が怖くなかったのは守られてたからだったんだ。)
「水神信仰の家なら、今も昔も……勝ち目なんて無かった。今も目の前の壁すら越えられない。
いくら桜庭奏多を殺したところで、意味なんか無かったんだ……。」
今こいつは殺した意味が無かったと言った。
ふざけているのだろうか…。
「じゃあ貴方はもう桜庭を諦めてくれるのかしら?」
祖母は育築の言葉を無かった事のように話しかけた。
「どうせ殺せない。諦めるとかじゃないんだ。
諦めようが諦めまいが、殺せない。ただそれだけだ。
桜庭奏多は生きてるだろ?」
「は?」
つい声が出てしまい、祖母に睨まれた。
私と同じ顔をしてるのが父と伯母…………あれ?
「なんでそう思ったの?」
祖母の質問に育築はポカンとした表情で言った。
「??俺は足場が崩れるようにほんの少しだけ地面を抉ったんだ。残った力でね。
でもその時桜庭奏多に雨が降ったんだ、守られてたんだろう?棺を開けないのもそのせいだろ?死体がないから開けられない。
……………え、違うのか?」
さも当たり前のように言う育築は、私達の反応に不思議がっていた。
(さっきの言葉はそう言うことか。
"殺した事は無駄だった" と言う意味じゃ無い。
"殺そうとしたけど無理だった" と思ってるんだ。
でも……でもカナちゃんは…………。)
私は混乱を必死に抑え込んで、祖母の隣へ行った。聞きたいことがいくつもある。
育築にも……祖母にも……。他の皆にも。
喋っていいのか不安だったので祖母にとりあえず聞いてみた。一応小声で。
「おばあちゃん。あのさ、おばあちゃんと山崎さんに聞きたいことあるんだけどいい?
っていうか普通に喋っていい?」
「あっ、待って。
山崎さん、もう騒がないわよね?孫が聞きたい事あるんですって。」
なんで山崎に聞くんだと思いつつ、返答を待った。
「好きにしろよ。騒がないかって……もう騒げねぇんだから。」
「大丈夫みたいよ結希。おばあちゃんも聞きたいことあるから順番にしよう。
結希からいいよ。」
「え、えーと…。じゃあまず、最後の子って何を指すかわかりますか?山崎さん。」




