表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/56

02.実家にて

桜庭陽人[はると](46) 結希の父で長男

桜庭菖蒲[あやめ](45) 結希の母で旧姓は瑞樹


田牧麗花[れいか](49) 結希の伯母で桜庭家長女

田牧晃太[こうた](51) 伯母の夫で義伯父


桜庭志乃[しの](69) 結希の祖母

午後3時過ぎ、私は実家の前にいた。

家の玄関を開けるとすぐに香ってきた線香の香り。

嗅ぎ慣れない香りに噎せそうなのを堪えて家の中に入る。



居間に入るなり目についたのは、控えめな祭壇に飾られた笑顔の無い叔父の遺影だった。


叔父はこんな顔だっただろうか。

天真爛漫では無かったが穏やかに微笑む人だった。

記憶の中の叔父は優しくて、でもイタズラ好きでよく私と一緒に叱られていた。


立ち尽くす私に気付いた祖母が声をかけてくれていたが、私は答えることができなかった。

あまりにも違いすぎて混乱していたのだ。

これは誰なんだろう、家を間違えたんじゃないか、その考えだけが頭を支配していた。



「───結希ちゃん」



ふと聞こえた声は母の物だった。

それほど大きな声ではなかった筈なのに、何故かはっきり聞こえた。

混乱していた頭がだんだん落ち着いてきて今の状況を思い出した。


(カナちゃんのお通夜なんだっけ。)

「結希、奏多にお線香あげてね」


祖母の言葉にゆっくりと歩き出す。

祭壇の前に座り、手を合わせる。

遺影を近くで見つめると、やっぱり別人みたいだ。

別に痩けてる訳でも太ってる訳でもない。何かが違うのだ。

棺の中を見てみようと思ったが小窓が閉じられていた。


「結希ちゃん、お顔を見るのはもう少し落ち着いてからがいいよ」


職場での事故としか聞いていなかったが、もしかしたら損傷が激しいのかもしれない。

棺の中を見るのは一旦諦めて祖母達の元へ行くと、正月ぶりの親族一同殆どが揃っていた。

祖母、父、母、伯母、義伯父。



「みんな久しぶり。」


「久しぶり、結希ちゃん。」


「結希、遅かったな。」


「仕方ないでしょ、数日休む分の仕事今日終わらせてたんだから。」


挨拶も早々に義伯父に文句を言われてしまった。

彼の性格的に文句ではなく只の感想なのだろうが、会社でのイラつきを思い出してしまった。

それを察したのかどうかは知らないが、これ以上何か言われることは無かった。



『葬式』というものは祖父以来だ。もうすぐ七回忌の法要ではなかっただろうか。

祖母も伯母も母も和装の喪服に身を包み準備を整えていた。喪主は父が務めるらしい。

私は洋装でいいとの事なので、持ってきた喪服に着替えるため脱衣所へ向かった。

軽くシャワーを済ませてから着替えてメイクも整えた。


両親も叔父も実家に住んでいて、私は就職すると同時に職場に近いアパートに引っ越した。

自室に荷物を置いてから居間に戻ったら、数名の弔問客が来ていた。叔父の職場の人らしい。


弔問客対応は主に祖母や両親が担当するので、私は伯母達と別室にいた。

葬儀社の人達とある程度の流れを確認しながら、伯母に詳しい話を聞いてみた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ