162.帰り道を、歩く。
ゆっくりと、呆然とした様子でひたすら歩いている。
怪しい怪しいと思ってはいるけど、
少し心配になってしまうくらいの様子だ。
歩くと言うより、足をただ前に動かすだけ。
まるでゾンビみたいだ。
それだけ育築の姿が衝撃だったんだろうか?
それとも呪われた事?……どっちも?
それとも別の何か?
〔あいつは大丈夫なのか?幽鬼のようだぞ?
呪った男よりもひどい状態なのはおかしいだろう?〕
心配してるのは私だけじゃないみたい。
隆延個人の呪いが何かしてたりしないだろうか?
「彼には、今呪いが2つかかってるんだよね?」
〔呪いのようなものだ!呪いとは違うぞ。〕
「いやどっちでも良いんだけど、
呪いって最初に言ったのは自分でしょ?
どのみち正体がはっきりしないものだろうし、
呪いじゃないんなら"呪いもどき"でいい?」
〔まぁ、それでも良い。
彼には桜庭の血筋にかけられた呪いと、
その…呪いもどきがある。〕
相伝の謎の術の後から出た呪いもどき。
突然、現れたもの。
「その呪いもどきって、彼に何かしてたりする?
弱らせるとか、魂を削るとか…呪いっぽい事。
血筋の呪いは別に問題無いと思うんだけど…。」
〔呪いも呪いもどきも、どちらもただ存在するだけだ。
何か悪さをしてるような感じは無いな。
よっぽどさっきの光景が衝撃だったんだろう…。
だがあの姿は…、もっと別の……。〕
最後の一言はよくわからないが、
呪いとかで問題があるわけじゃなさそうだ。
じゃあ、やっぱり森での出来事全般かな…?
打たれ弱い…みたいな。
嘘で呼び出され、呪われ、術者の惨い姿を見た…。
普通、どれか1つだけでもショックで傷付く…よね。
私も豆腐メンタルだし、
同じ事があったら泣いちゃうよ……。
「「〔〖誰が豆腐メンタルか!!〗〕」」
「様子はおかしいし心配だけど…、
周りに何かするわけでも無いし歩いてるだけだから、
様子見するしかないよね…。」
〔どうせ人への手助けも私達は出来ないんだ。
考えてもしょうがないだろうから、
とりあえず追うだけだな。〕
あ、そっか。
私達は幽霊と神様だから、
普通の人には手出し出来ないんだっけ…。
じゃあ山の中じゃなくて道を歩いても良いのでは?
「気付かれないかを気にする必要無いなら、
山から出ても良いんじゃない?
いい加減ここ歩きにくいよ…。」
〔駄目に決まってるだろう。見える人間もいるんだから。〕
「見えたっていいじゃん!
通行人の振りでもしてれば怪しくないって!」
〔……そなたは何を言っているのだ?〕
何故かアホを見るような目で見られだした。
なんで?別におかしい事無いでしょ?
〔そなたの服装で万が一見られてみろ。
奇天烈な怪談となるだろうな…。〕
「服?そんな変な服着てないよ!
普段着……………あ。
駄目だ。時代が違ったんだっけ…。」
和装の時代だ。こんな格好昔には無い。
ゾンビみたいな様子の隆延以上に怪しいんだった!
〔忘れてたんだな……。
それなら余計に気を付けた方がいい。
帰る場所がある者が帰る場所を忘れたら、
二度と帰れなくなるんだからな?〕
……嘘でしょ?
帰れなくなるって…。それは、だめ…。
しっかりしなくちゃ。
帰る場所を忘れず、黙って山の中を歩こう。
帰れなくなるだなんて、
今まで頑張った事が無駄になってしまうから。




