159.呪われた隆延
力の渦がようやく収まったと同時に、
感じていた圧も消えていた。
これなら近寄れるだろうけど、いいんだろうか?
「そろそろ近づいても大丈夫かな?」
〔うん、もう大丈夫そうだ。
力はほぼ出しきったみたいだし、
例えまた何かしたとしても大した力にならないだろう。〕
「じゃあ行こう。
歩いたら足音するし、私の力で移動しよう。」
彼らが見えやすい場所に移動した。
もちろん身を隠せる上で声もしっかり聞こえる場所。
これぞ特等席!静かに見ようね!!
「貴様私に何をした!?
謝罪の気持ちを用意したと言うから着いてきたんだぞ!
父上も兄上も、まだ私を心から認めてくれていない。
我々への嫌がらせを終わらせれば認められるのに…。」
「ふん!貴様が認められるわけ無いだろうが!
貴様みたいな間抜けが、なぜ当主の座に就いたのか…。
まぁだからこそ、
桜庭への積年の恨みを晴らせたんだから感謝しなくてはな。
ハハハハハハハハハ!!!」
多分、今の育築は強がってるんだろう…。
未来で彼は言っていた。
本当は止めたかった、呪いたくなかった、…と。
隆延が善人だと感じながらも、
自分達がおかしいんだと感じながらも、
神との約束で止まることは許されなかった。
でもやっぱり見栄が勝ったんだろうな…。
呪いはおそらく失敗している。
水神様の守りで殆ど反された筈。
それなのに成功した振りをして隆延を煽ってる…。
〔なぁ、聞いてもいいか?〕
小声で木の神様が話しかけてきた。
「どうしたの?」
〔あの男……どっちも男か。
高笑いしている男には、
そなた達桜庭より強い呪いがかかっている。
最初に会った時に教えてくれた、
"神との約束"と水神の守りによる"呪詛返し"だろう。
それはわかるんだ。
だけどなんで、桜庭の方も呪われてるんだ?〕
「………え?たった今術が発動してたでしょ?
桜庭の呪いは完璧には防げなかったから、
私にまで呪いが続いてるんでしょうが……。」
何を言ってるんだろう…。
私の呆れた視線を感じたんだろう木の神様は、
慌てて言葉を続けた。
〔ち、違うぞ!
そなたにまで続いてる呪いの事じゃない!
それとは別の、あの男個人の事だ。
あの男だけが持つ負の感情の塊。
呪いと言ったのは間違えた。悪かった。
だがあれは呪われた者と同じ色…なんだ。
家からここに来るまでは何も無かったんだぞ?〕
ボケたのかと思ったけど違ったらしい。
隆延が呪われてる?桜庭の呪いとは別で?
しかも家を出てからさっきまでは何も無いって…。
「私は何も聞いてない……。
と言うか、教えて貰えなかった事があるの。
それが桜庭隆延の事について。
怨嗟がどうとかは少しだけ言ってたけど、他は全く。
水神様は、私がここから戻ったらちゃんと話すって…。
そこに関係するのかもしれない。」
ますます隆延は危ない奴って気がしてきた。
ここに来る前もいろんな話を聞いてて、
妙な感じがしていた。
彼には、後世に伝えられてない重要な何かがある!!
〔そうか。
そなたにもわからない、知らされてない事か…。
なら、この後も彼を追った方がよさそうだな。
ある程度情報を仕入れた上で、
水神を絞り上げて吐かせるとしようかな。〕
わーたのもしー…。
私以上の意気込みだ…。
これはもしかしたら、
私が殴らなくても木の神様がボコボコにしそう。
水神様を叱れる数少ない神様だろうし。
まぁ、私も殴りはするけどね。
いかんいかん。
向こうではまだ話が続いてる。
しっかり聞かねば!!




