153.見覚えのある神様
毎度の事ながら意味のわからない呪文が始まった。
黄昏時の神様の力を手に集めているようだ。
かー○ーはーめー……。いかんいかん!
特に何かが変わった様子は無い。
色も身長も顔もそのまま。
でも力を集めるのは終わったみたいなので、
私にはわからない何かは変わってるんだろう。
ふと、木の神様の手を見た。
集めた力を握りしめていたのだ!
驚いた私が慌てて声ををかけようとしたら、
手を開いて私に見せてくれた。
〔私の手を気にしているようだな。
私が力を握り潰した、とでも思ったんだろう?
心配ない。これを見てごらん。〕
手の中にあったのは、ビー玉サイズの石?
木の神様の欠片より小さいけど似たような物かな。
って事はこれは神様の力の欠片…なのか。
〔これを私が預かっておく代わりに、
この欠片と同じ量の力を彼に与えるんだ。
そうすれば黄昏時の神だとは気付かれまい。
さて、ではやろうか。〕
また呪文か…。
あれ何て言ってるんだろうな。
………あれ?何も聞こえないんだけど。
木の神様は肩に触れて力を送っているようだ。
なんだ…、呪文じゃないのか…。
掌は淡く光り、力が送り込まれているのがよくわかる。
木の神様の力の色、象徴の色である若草色の光だった。
その光は徐々に黄昏時の神様の全身を覆うように広がっていく。
少しずつ力を馴染ませながら送っているようだ。
しばらくしたら、淡い光が消え始めた。
黄昏時の神様に力が吸収される速度が上がったみたいだ。
力が馴染んできたのか、
髪の毛の色がまた変わり出したのだ。
茜色と冥色のグラデから濃い紫色へと変わった髪が、
若草色の力の光を取り込んでいく…。
紫色の髪がだんだん変化していく…。
そこで、やっとわかった。
何か見たことがある気がしてたんだ…。
欠片の神様達の中に、居た!
1人だけ物静かな神様が居たんだ
抹茶色…?いや濃い抹茶色?
茶色に見えなくも…ない?
そんな色の髪をしていた、地味めな神様だ。
ちび神達を含めておしゃべりが多かった中、
端でポツンと立っていて印象が薄かったんだ。
髪色が変わって、やっと思い出した!
神様には時間の概念が無いって水神様が言ってたっけ…。
じゃあ私を送った欠片の神様達の中の1人が、
今ここにいる黄昏時の神様……。
ならこれで、神様達の正体は全員わかった!
「姿が変わったのはいいんだけど、送り込む方法はあるの?」
〔それは大丈夫。
入り込める隙間さえあるなら簡単に入れるんだ。〕
なら大丈夫か…。既に私は見てるからね。
黄昏時の神様の力は誤魔化せそうだし問題なさそう。
「大事な事話さなくちゃ!
欠片が何に使われるかとか、主にすべき事…とか。」
〔そうだな、
教えて貰わない事には何をしたらいいのかわからない。
だから教えてくれ。〕
〔それもそうか。
では、もうじき奴らが来るだろうから手短に。〕
嘘でしょもう来るの!?
なら私達も、そろそろ移動しなくちゃ!
〔やることは単純だ。
茜色と冥色の髪を持つ2人の神を見張ってくれ。
止めなくていい。寧ろ止めてくれるな。
何をしているか、見ててさえくれればいい。
そして再会した時に、私に教えてくれ。〕
〔具体的に何かあるか?〕
〔見て欲しいのは主に全般だが、
特に重要なのはこの子が生まれた時代になった時だ。
人を害そうという意志の有無、彼らの様子、目的。
とにかく何でもいい。
もしかしたらその時までは、
浄化のために水神の池の祠で眠るかもしれない。
そうなったら、目覚めた後からしっかり見ててくれ。〕
「大事な事言ってないでしょ!?
その欠片の使われる目的!!」
〔あぁ…そうか。
お前が今から入る欠片は、人を呪うために使われる。
嫌かもしれないが、周りに倣って行動してくれ。
その呪いで、死者は出ないから安心しておきなさい。〕
〔の…ろ……い…。そんな事…。〕
動揺しちゃってる!
言い方下手くそでしょ!
「本当に大丈夫!!私がその証だから。
私達そろそろここを離れなくちゃいけないの。
だから心を静めて頑張ってね!!ね?ね?」
〔……わかった。気を付ける。〕
「じゃあそろそろ行こう!
万が一にでも察知されたくない。」
〔そうだな。行こうか。〕
ご先祖様達への挨拶もそこそこに、
私達はその場を離れた。




