98.気になる事
教えてくれない事は聞いても無駄だ。
ならここに来た時から気になってた事を聞いてしまおう。
『お互い』って事は木の神様も気になる事があるのかな?
「木の神様が気になる事って何?」
〔君をここに送ったのは、水神じゃなくて欠片の神達?〕
「そうだよ。」
〔穢れた力で君たちを呪ったわけでしょ?
堕ち神になりそうな程の恨みを持っていたと君は言った。
でも君が生まれた時代に欠片の神達がいたってことは、
踏み留まったってこと。なんでなの?〕
「穢れてはいたけど神様としての善性も少し残っていた。
何人もの神様がいた事も関係したかもしれない。
意見の相違…とかね。
だから天上の神々が出した妥協案を受け入れた。」
〔その妥協案は最後の子だね。
天上の神々の加護が関係しているんだろう?〕
「そう。
『私のかわいい子達よ、最後の子を守り抜け。耐え抜け。我らが目覚めるその日まで。我らが呪いを償うその日まで。』って言葉。
これは水神の守りで呪いが反った事・神との約束を破った罰で、
痛みに悶える呪者の口から発された桜庭に対する言葉。
穢れた神の力が入った欠片を媒介にした、
欠片の神様達、水神様、天上の神々の総意の言葉。」
〔最後の子…。目覚める…。償う…。
血脈断絶の呪いに抗い、目覚めるまで耐えろ。
目覚めたら償う……ということだね。
呪いが反ったのと神との約束はまぁ、想像できるよ。〕
「呪いを解くにあたって必要な犠牲や生贄を、
ゼロにすることが償いだって。
未来の子に重荷を押し付けた事を、
欠片の神様達も申し訳なく思ったらしいよ。」
申し訳なく思ったっていうのも、
私を殺しかけて辛そうな顔も、
消えそうな私を引き留める声も、
全部嘘だった…だなんて思えない。
だから危険だと思ったけどここに来た。
ここに来た事で、
"グレー"から"グレーよりのブラック"になったけど…。
〔そうだったの。
後はぼくには特に大きな関係は無いだろうから、
気にはなるけど別に良いよ。思い付いたら聞くし。
今度は君の気になることを聞くといい。
答えられることは答えよう。
その後は、まぁその時に考えようか。
君は夢を辿って過去に来たのなら、
時間の概念は気にしなくていいだろうし。〕
気になる事ねぇ。
ここに来て気になった事は聞いてみよう。
何も教えてくれない神様達とは違うと信じて。
〔……なんか、憎々しそうな顔しちゃってどうしたの?〕
「ここに来る前、何も教えて貰えなかったなって。
毎度毎度雑なんだよね。
貴方は教えてくれると信じてる、からね。」
〔水神だものね。あいつは雑で有名だよ。
君は…、何も悪くない。悪いとすれば運かな。〕
「あはは、運が悪いね。しっくり来た。
じゃあ質問いくつかしたいから聞くね。
ここの物って、私触れる?」
〔そこから!?
本当に…、何も教えてもらってないなんて……。〕
驚くよね。やっぱりおかしいよね。
笑うしかないよねぇ………。あは。
その頃の水神の様子はというと……。
〖…………なんだか、悪口を言われている気がするぞ。〗
「仕方ないでしょ。
水神様も、あっち側にいる神様達も大事なこと教えてないもん。」
「だな。過去でどう探せばいいかとか、
人や物に触れる事は出来るのかとか、
何も教えてないんだからな。」
〖……………あぁ、人は知らないんだったか。〗
やっぱりポンコツちゃんでした。




