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10.目覚めた諸悪

桜庭隆延[たかのぶ] 最初に呪われた桜庭家の家長


土御門家 安倍晴明直系一族。幾つもの傍系がある。


「ここから本格的に呪いの話に行こうか。」


「ん、待ってました。」


やっと本題か……。



「人材育成による桜庭家の家格がある程度磐石になってから、

家長が5名変わった代に起こった変化が始まりだった。」


「年代とかは?」


「詳しくは書かれてなかったからわからないの。

当時の家長の名前は桜庭隆延。

次男だったけど兄は畑仕事が好きで弟に家督を譲ったらしいわ。


隆延は柵拉場と言う不名誉な呼び名を何とかしたいと思っていた。

彼の先代である父や祖父が全く気にしていない事にも腹を立てていた。

父や祖父も気にしていない訳ではなかったが、

悪意の捌け口として敢えて放置していたのだ。

でも隆延は嫌だったのだ。自分達の誇りが馬鹿にされているようで。

だけど何処から手を着けたらいいかも分からなかった。

だから桜庭で育てた子を奉公先へ連れて行った際に話してしまった。

『柵拉場を何とかしたい』と。

それも安倍晴明直系子孫である、土御門の当主に。」


「隆延は安倍晴明の傍系が関わっているって知らなかったの?」


「知っていた筈よ。隆延の先祖達だって気にしていない訳がない。

先祖達だって調べたし、その記録も残ってる。

調べた結果、末端とはいえ安倍晴明の傍系だもの。放置が吉だと判断した。

家督を継ぐ時にそういった事も教わってた筈なのよ。

でもよりにもよって土御門に話してしまったの。」


「放置が吉なのはやっぱり陰陽師だから?」


「そう。安倍晴明の妖怪退治の話はどこまで本当かは判断がつかないけど当時も存在した。

そして確実に本当だと分かるのは、陰陽師の占術は本物だという事。

陰陽師特有で門外不出の物だから謎が多いから、占術の方法も未知。

それでも昔から朝廷お抱えの一族なのには訳がある。

だから放置。要は触らぬ神に祟りなしって事。」


「でも…言っちゃったんだ……。」


「そう言っちゃったの。

土御門に話した結果、土御門の当主や家臣一同はすごく怒っていた。

隆延も詳細は話していないらしいけど、

陰陽師の家系には桜庭が酷い呼び名がある情報だけで十分だった。

自分達程ではなくともある程度の格と歴史と実績がある桜庭が、

先祖の代から放置を決め込んでいたのには訳があると判断し、

桜庭が手を出せない家で、桜庭への悪意を持つ家を絞り出したの。」


「優秀すぎるね。」


「長い歴史と実力は伊達じゃないわね。

もしかしたら陰陽術を使ったのかもしれないし。


そして自分達の傍系とそこに付き従う家々を割り出した土御門が行ったのは、

彼らへの粛清だった。もちろん隆延に報告した上でね。

どのみち桜庭では陰陽師の傍系には手を出せないから。」


「変わりにやって貰ったって事か。」


「そう。それが最大の間違いだった。

隆延は粛清を止めるべきだったの。」


「何もしない方が良かったって事?」


「少なくとも粛清の度合いを軽くするようにだけでも伝えるべきだった。

そうすればもしかしたら、桜庭一族への呪いもましだったかもしれない。」


「どんな呪いなの?」


「まぁ焦らないで。

粛清対象は土御門の遠い傍系数家。

そして傍系の悪事に乗っかった数名の名家子息。

後継ぎではない次男三男ばかりだった。

名家子息の方は簡単で、彼らの家への報告だけ。

そうすれば彼らの親である各家の当主達が対処する。それぞれのやり方で。



粛清対象の傍系達はそもそも

桜庭の事は関係なく問題がある家だったから、

土御門側からしてみればいいきっかけだったんだと思うの。

でも隆延が土御門に相談した事で、更に桜庭への負の感情を募らせてしまった。


肝心の粛清内容だけど、まずは破門。

これから先陰陽師を名乗ることを禁じられた。

その次に、咎の烙印を押された。

贖罪の気持ちで心が満たされた時にしか消えない烙印。消えるまでは子孫まで続くそうよ。

主にこの2つが彼らに大きなダメージを与えた。

これが桜庭の呪いの原因。」


「……要は僻みを拗らせて逆恨みして桜庭を呪ったと。

咎の烙印ってそもそも何?

何でおばあちゃんはいろいろ知ってるの?」


「隆延が本人から直接聞いたみたい。

呪いは本人の目の前でしか掛けられないらしかったし、

本当に最後の力を振り絞った呪いらしいの。

咎の烙印は詳しくは分からない。陰陽術の一種でしょうね。」


「じゃあ柵拉場の名付け親と対面したんだ。

誰だったの?もう今は居ないんだろうけど。」



「居るのよ。

今も居るの。


桜庭に呪いを掛けたのは、朝倉……朝倉育築。」

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