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第七話 迷いの中で

 遙は深い森の中で立ちすくんでいた。

 目の前には、二つの選択肢が並んでいる。

 しかし、どちらを選ぶべきか、彼女はどうしても決めることができなかった。


 心の中で何度も問いかけた。


「過去を捨てることで、私は本当に前に進むことができるのか?それとも、過去を背負いながら生きることで、私は強くなれるのだろうか?」


 妊活に取り組んでいた日々のことが、今も鮮明に浮かんでくる。

 何度も何度も涙を流し、焦りと不安に包まれていた自分。

 その頃の記憶は、まるで鋭い針のように胸に刺さる。

 しかし、あの時の自分を捨てることができるだろうか。

 過去の痛みを無視して生きることができるのだろうか?


「過去を背負いながら生きるなら、もう一度あの辛さを味わうことになる…でも、それが私の一部であり、私を形作ったものだと思う。もし、過去を切り捨ててしまったら、今の私が消えてしまうような気がする。」


 遙は、深く息を吐き出し、目を閉じた。

 その中で葛藤が渦巻いている。

 自分の過去に引きずられることなく前に進むべきだという思いと、過去の痛みを否定せずに生きるべきだという思い。

 どちらが正しいのか、どちらが自分にとって一番良い選択なのか、それが分からない。


 目の前に現れたのは、その人物だった。

 彼は静かに遙を見つめているだけで、何も言わなかった。

 ただ、じっと彼女の心の動きが収束するのを待っているように見えた。


「私は、どうすればいいんですか?」


 遙の声は、震えていた。

 自分でもその震えが何なのか分からない。

 ただ、心の奥底で何かが壊れそうな感覚がして、足元がふらついていた。


 その人物は、無言で遙の方へ歩み寄り、静かに肩に手を置いた。その重さが、遙に少しだけ安堵を与える。


「答えは自分の中にある。ただし、その答えを見つけるのは、簡単なことではない。」


 遙はその言葉にしばらく黙って耳を傾けていた。

 彼女は心の中で答えを探し続けていた。

 過去を捨てるのか、それとも背負い続けるのか。

 その選択にどれだけの時間をかけても、答えは出なかった。


「私…まだ答えが見つかりません。」


 遙は、やっとの思いでその言葉を口にした。

 そして、すぐに自分がどれだけ苦しんでいるかを、誰かに伝えたかった。


「過去を捨てることが、こんなにも辛いなんて思わなかった。捨てたら、もう一度振り返れない気がして…。でも、背負い続けることも怖い。今もあの頃の苦しみが胸に刺さっているから。」


 その人物は、静かに遙の肩に手を置いたまま、無言で彼女の気持ちを受け止めていた。

 そして、ようやく言葉を口にする。


「今は、無理に答えを出さなくていい。ゆっくり考えて、答えが見えてきた時に、選べば良い。それが、お前の選択だ。」


 その言葉に、遙は少しだけ安心した。

 しかし、同時にその安堵が本当に自分にとって必要なものなのか、分からなくなった。

 時間が必要だ。答えが出るまで、まだしばらくは迷い続けることになるだろう。


「わかりました…。少し時間をもらってもいいですか?」


 遙はようやく、心からその言葉を口にできた。

 心の中のモヤモヤが少しだけ軽くなったような気がした。


 その人物は、静かに頷いた。

 そして、遙に優しく微笑んだ。


「もちろんだ。焦らなくてもいい。お前が納得できる答えを見つけた時に、次の一歩を踏み出せば良い。」


 遙はその言葉に、深く感謝の気持ちを込めて微笑んだ。今はまだ答えが出せない。

 けれども、自分のペースで心の整理をつけ、最良の選択をしよう。その決意が、少しずつ彼女の心に芽生えてきた。


 遙は再び歩き出した。

 進むべき道は、まだ決まっていない。ただ、今はその道を歩みながら、自分の心を見つめ直していくのだ。


(次回へ続く)

数ある作品の中から今話も閲覧してくださり、ありがとうございました。


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