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第二話 無音の城

眩い光の中、遥は目を開けると、白銀の髪を持つ女性が静かに立っていた。彼女の存在は、人間離れした美しさと威厳に満ちていた。遥はその女性を直感的に「女神」と感じた。


「あなたが……私をここに連れてきたのですか?」

遥の声は震えていたが、女神は微笑みを浮かべ、静かに頷いた。


「そう。あなたを選び、この地へ導きました。」

「選ばれた……?どうして私が……」


女神は遥の問いを無視するように、柔らかな声で語り始めた。

「あなたはこれまで、たくさんの痛みと寂しさを抱えて生きてきましたね。それでもなお、人を思いやり、未来を信じようとしてきた。その強さが、あなたをこの地に導いたのです。」


遥は、胸の中に込み上げる感情を抑えられなかった。涙が自然と頬を伝う。

「でも、私は何も成し遂げられなかった……何も……」


女神はゆっくりと遥の手に触れた。その手は温かく、まるで全ての痛みを包み込むようだった。

「あなたがまだ気づいていないだけ。あなたの存在が誰かの光になるときが来る。それはこの地で始まるのです。」


遥は困惑しながらも、女神の言葉にかすかな希望を感じた。


女神は、目の前の空間にふわりと浮かぶ光の球体を見せる。その中には、感情のない人々が彷徨う城の映像が映し出されていた。


「この地は『無音の城』。感情を失った者たちが集う場所。そして、そこにあなたが送り込まれた理由がある。」

「私が……ここで何をすればいいのですか?」


女神の瞳は、深い悲しみと期待の色を宿していた。

「あなたには、特別な力が与えられています。触れることで相手の感情を映し出し、それを癒すことができる力です。しかし、それには代償があります。」


遥は息を呑んだ。

「代償……?」


「癒すたびに、あなた自身の感情が薄れていくのです。」


遥は恐怖と戸惑いを感じたが、女神の静かな声は続いた。

「それでも、この地で彼らを救うかどうかは、あなた自身が選べることです。けれども……」


女神は最後にもう一度、優しい笑みを浮かべた。

「救うことで、あなたもまた、新たな未来を手に入れるでしょう。」


遥が次に目を開けたとき、そこは異世界の城の前だった。女神の言葉が耳に残る中、彼女は目の前の不思議な風景に圧倒される。灰色の空、感情のない人々、そして静寂だけが支配する世界――。


(次回へ続く).

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