ベルナデットは兄に勝ちたい
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ベルナデットが12歳になったとき、兄のジェレミーが魔法学園に通い始めた。
ベルナデットの前世である日本では魔法など存在しなかったが、この世界では全ての人が訓練をすれば魔法が使えるようになる。
その為この国では身分に関わらず全ての子供たちは16歳から3年間、学園に通い魔法についての正しい知識を学ぶことが義務化されている。
学園は全寮制で、長期休暇以外は家に帰ってこない。
「ということで、この3年間が勝負だと思うの!」
ベルナデットが学園へと向かうジェレミーを見送った後のエントランスにて高らかに宣言した。
「何のですか?」
「決まってるじゃない! お兄様に勝つことよ!」
「まだ諦めてなかったんですね」
「当たり前じゃない! ということでアラン、付き合ってね!」
『恋人として』という意味だったら嬉しいのにと思いながら、アランはため息をついてベルナデットの特訓のお誘いを了承した。
「え? お嬢様アランとお付き合いなさるんですか?」
分かっててわざとらしく聞いてくるリディをアランが睨んだが、リディはそれに気づかないふりをしながら驚いた顔でベルナデットを見ている。
「なんでそうなるのよ、そんなわけないでしょ? 特訓よ! 最近アランにも負けるようになってきてしまったのよ! これは由々しき事態だわ!」
「ぐっ……」
アランはベルナデットの「そんなわけない」という言葉にダメージを受けた。
そんなアランの様子を見てリディはほくそ笑む。
リディは別にアランのことが嫌いなわけではない。ただベルナデットのことが好きすぎるので、自分と同じくらい好かれているアランをたまにこうして牽制しているだけだ。
アランもそのことはよく理解しているため特に2人の仲が悪いわけではなく、種類は違うが同じベルナデットを好きな者同士普段は仲は良い方だ。
「アランもお兄様には勝てないけれど、うちに来たばかりの頃はあんなに弱かったアランが今じゃ私と同じくらい強くなったんだもの。きっとそこにお兄様に勝つヒントがあるはずだわ! それにお兄様は3年間は寮生活、つまりうちにいるときみたいに剣ばかり振るってはいられないはずよ!」
「けれど学園では騎士団の精鋭が剣の指導を行っていると言いますし、そもそもあのジェレミー様が寮に入ったからと言って鍛錬を怠るとは思えませんが」
「正論が痛いわ!」
ベルナデットはダメージを受けたように険しい顔をして胸をおさえたが、それも一瞬のことだった。
「それならば今まで通りがんばるだけだわ! アラン、行くわよ!」
「お嬢様、午前中はマナーのお勉強です」
「うぐっ……仕方ないわね。この情熱はアドリエンヌ先生にぶつけることにしましょう」
「お嬢様のそういうところ素晴らしいと思います」
ベルナデットはアランに特訓の準備をお願いした後、微笑むリディを連れてマナーの先生であるアドリエンヌの待つ教室へと向かった。




