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ベルナデットは天敵と遭遇する


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 ランベールの名誉のために言っておくと、決して彼は悪気があったわけではなかった。

 むしろベルナデットなら喜ぶだろうと思い、完全なる善意で行ったのだ。


「ベルナデット、少しいいかい?」

「お父様! どうしたのですか? お仕事は?」

「ちょっといいものを貰ったんだ。お前が好きそうだと思って早く見せたくて一旦帰ってきてしまった」

「まあ! 何でしょう?」

「ついてからのお楽しみだよ。さあ、おいで」


 にこにこと嬉しそうなランベールに連れてこられた先はリビングで、部屋にはジェレミーとリディとアランが先に来ておりみんなでカーペットの上に置かれた小さな箱の中を覗いている。

 ベルナデットはわくわくしながらその箱に近づき、覗き込んだところでぴしりと固まった。


「どうだい? 可愛いだろう。クレマンの家で生まれたらしくて……」


 ランベールは嬉しそうに説明していたが、ベルナデットは全く聞いていなかった。

 箱の中にいたのはゴールデンレトリバーの子犬だ。まだ生まれてそれほど経っていないようで、小さくコロコロとしている。

 その可愛らしい姿に先に来ていた3人の子供たちは釘付けになっていたのだが、ベルナデットは蒼い顔をしてよろよろと後退った。


「お嬢様?」


 その様子にちょうど向かい側にいたアランが気づき、不審に感じて隣に回った。

 するとベルナデットは隣に来たアランにぎゅっとしがみついた。その体は震えている。


「お、お嬢様?」


 あまりにベルナデットらしくないその反応にアランは戸惑い、同時にいつもと違う弱弱しい姿にドキドキしていた。


「こ……」

「こ?」

「こわいぃぃぃぃぃぃ!!」

「え」


 ギャン泣きである。


 というのも、ベルナデットの前世での死因はこのゴールデンレトリバーだったのだ。しかし別に襲われたわけではない。

 ベルナデットは前世で心臓が弱かった。そして生まれてからほとんどの時間を病院で過ごして育ったため、動物と触れ合う機会など全くなかった。

 それが14歳のあの日、調子が良いからと先生の許可が出たので看護師さんと一緒に病院の近くの公園まで散歩に行ったのだが、そこにゴールデンレトリバーの男の子が散歩のため小さな女の子に連れられて歩いてきた。

 初めて近くで動物を見た彼女は、その姿を興味深く見つめていた。

 その時悲劇は起こった。

 ゴールデンレトリバーの男の子は視線に気づき、人懐っこかった彼は遊んでもらおうと全力で彼女の元にかけてきた。

 飼い主の女の子はその力に敵わずリードを離してしまう。

 突然すごいスピードで迫ってくる大型犬に恐怖を感じた彼女の心臓が嫌な音をたて、彼女の意識はそのままブラックアウトしたためその後のことはベルナデットは知らない。

 ただ飼い主の女の子のトラウマになるようなことがなかったことのみを切に願った。


 そんなわけで、ベルナデットは犬がトラウマなのだ。

 アランはしがみついて震えるベルナデットを抱きしめて、その背を優しくさすりながら部屋の出口へと誘導した。

 震えながらしがみついて泣いている姿に、守ってあげたいという気持ちと愛しいという気持ちが湧いてきてアランは戸惑った。


(いや、相手はあのお嬢様だぞ!? 出会い頭に人を殴って気絶させるし、隙あらば剣術の訓練してるし、ぼくより全然強いお嬢様だぞ!?)


 そう自分に言い聞かせるものの、自分の腕にしがみついて弱弱しく震えて泣いているベルナデットにアランのドキドキは止まらない。

 しばらくしてベルナデットが落ち着いて、恥ずかしそうに赤い顔で言い訳をする姿を見て更に心臓がせわしなくなったところでアランは観念して自分の気持ちを受け入れた。


(とりあえずお嬢様より強くなろう)


 アランはその時初めてそう決意した。

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