従者たちの報告会5
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side:アランとリディ
「遅い」
「仕方がないでしょう? お嬢様が大量に買い占めた屋台の食べ物の処理という名の女子会をしていたのだから」
「いつもそんなに仕方なくないんだよなぁ。集合時間変えるか?」
「変えたとしてもそれに合わせて更に遅くなるだけかと」
「遅刻しない努力をしてくれ」
アランはため息をつくが、それはポーズだけで実際のところ別に怒ってなどいないことをリディは分かっている。
「アレが例のお嬢様ね」
リディの言葉にアランは嫌そうな顔をした。
「正統派のお嬢様って感じね。小さくてフワフワしてて守ってあげたくなる感じ。自分の武器もしっかり分かっていて、世渡りが上手そう。押しが強いというより、相手を不快にさせずに上手におねだりするタイプね。ちょっとコレット様を思い出したわ」
「だから会わせたくなかったんだよ。絶っっっ対お嬢様は好きだろうから!」
頭を抱えたアランにリディは納得した。ディアマン家でも散々コレットに邪魔されてきたアランだ。その辺はリディより余程敏感に感じ取ったことだろう。
「まぁ相手は侯爵令嬢だし、常識外れなことはしないでしょう。普通に親睦を深める分にはお嬢様の為にもいいんじゃないかしら?」
「そんなこと言って、お嬢様がそっちの道に引きずり込まれたらどうするんだよ」
あっさりとローズとの交流を認めたリディに、アランがじっとりとした視線を向ける。
それに対しリディは呆れた顔で肩を竦めた。
「どうするも何も、前から言っている通り私はお嬢様が幸せならそれでいいの。もしお嬢様が彼女と共にあることを望んだ時は、私はそれを全力で応援するだけよ」
1ミクロンも迷わずそう言い切ったリディに、「お前はそういう奴だよ」とアランは項垂れた。
「まあ私のスタンスはそうなのだけれど。心配しなくてもそんなことにはならないと思うわよ?」
「何でだよ?」
納得いかないという顔で聞いて来るアランに、リディは何と答えるかしばし考えた。
リディの頭に過ったのはアランとローズの密会を覗き見た後のベルナデットの様子。記憶にある限り、ベルナデットがあそこまで動揺しているのを見たのは初めてだった。
それにコレットに似ているということは、どんなに親密になったとしてもベルナデットにとっては庇護対象や家族愛のカテゴリーに分類されるだろうということは容易に想像出来る。
その辺のことがこの男は分かっていないのだ、とリディは呆れたが、それを親切に伝えてあげる気は更々なかった。
「強いて言うなら」
「言うなら?」
「女のカンかしら?」
「根拠ゼロじゃないか」
「何言ってるのよ? これほど完璧な根拠はないでしょう?」
「あーはいはい」
ひらひらと手を振ったアランに、そう言えば、とリディが話題を変える。
「貴方のルームメイト、シリルだったかしら? 彼とは何か話したの?」
「ああ、あのやり取りで全てを理解して謝られた。その上で『俺にはお嬢様を止める力は無いから頑張れ』だと」
「丸投げじゃない。なかなかちゃっかりしてるわね」
「そういう奴なんだよ。お嬢様に頼まれたからってしっかり橋渡し役もやる気みたいだし」
「恋敵の連絡係なんて、まるでピエロね」
「言うな」
この件に関してはリディの協力は得られそうにないことが分かり、アランは深くため息をついた後今後の立ち回り方を考えるべく早々に解散した。




