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暫くぎゅうぎゅうと戯れた後、今日はリディ達がいつもお茶をしているという場所へと向かうことにした。
「せっかくだからグレースとエステルも誘いたいわね」
「では一度私たちの教室を覗いてから行きましょうか。もういないかもしれませんが、いつもは私とエステルの教室で勉強をしていますので」
「あら、グレースの教室ではないのね」
「そもそもが私が1人で勉強していたのですが、それを知ったグレース様が『エステルもご一緒させてもらえないかしら?』と仰ったのが始まりでして。それまでは放課後になったらエステルがグレース様の教室まで迎えに行っていたのですが、私たちの教室が2階でグレース様の教室が3階なのと、グレース様のクラスの方がHRが長いことから、『私がそちらに行った方が効率的だし、エステルもただ教室の前で待ちぼうけているよりリディと勉強していた方が有意義でしょう?』と」
「確かにその通りだわ」
今の話を聞いてうんうんと頷くベルナデットにリディは苦笑した。
「普通のご令嬢であれば、自らが侍女を迎えに行くなどという発想にはならないものですよ」
「そうなの?」
「一般的なご令嬢ならばそれが普通です。お嬢様はまあ言わずもがなですが、グレース様もあまり普通のご令嬢らしくはないですね」
「つまりグレースはエステルをとっても大事にしているということね!」
恐らくリディの言っていることの意味を1割も理解していないであろうベルナデットがいい笑顔でそう言ったので、リディも笑顔で「そうですね」と返した。
ディアマン家のご令嬢である時点で一般的なお嬢様である必要などないし、そもそもリディにとってはベルナデットがベルナデットらしく幸せであることが最重要事項であるため、彼女がご令嬢の何たるかを分かっていないことなどどうでもいいことなのである。
2人が階段を上っていると、階段の上にカロリーヌとイザベルが居た。2人はこちらに気づいていない。
上りきるまであと数段というところまで近づいたのでベルナデットが声をかけようと口を開いたが、それより先にこちらから見えない位置から誰かがイザベルを呼んだ。
話中に声をかけるのも憚られ、カロリーヌにだけ一声かけようかと思い彼女の顔を見たところで、彼女の様子が可笑しいことに気づいた。先程まで確かにイザベルを見ていたその目には光が無く、虚ろな顔でぐらりと階段の方へその身を投げ出した。カロリーヌに背を向けているイザベルは気づいていない。
「カロリーヌ殿下!!」
リディが悲鳴に近い声で叫んだことでイザベルが弾かれたように振り向いたが、カロリーヌが居た筈の場所にその姿はない。
慌てて視線を階段の方に向けると、数段下でベルナデットに抱き留められている姿を見つけてほっと息をついた。
「カロリーヌ、大丈夫?」
「え、ええ。ありがとうベルナデット」
「何があったんですか?」
「うーん、自分でも良く分からないのだけれど、急に立ち眩み? がして」
「体調が悪かったの?」
「いいえ? それに今はもう何ともないわ」
「本当? 無理はしちゃ駄目よ?」
「本当にもう何ともないの。心配してくれてありがとう」
ベルナデットから見ても今のカロリーヌは顔色も悪くないし無理をしている様子もなかったので、念のため支えながら階段を上がって少し歩いたところで彼女から離れた。
カロリーヌの話を聞いてからずっと眉間に皺を寄せて険しい顔をしながら何事か考えていたイザベルが、結論が出たらしくひとつ頷いてベルナデットに問いかけた。
「ベルナデット様、申し訳ありませんが少しの間カロリーヌ殿下のことをお任せしてもよろしいでしょうか?」
「え? え、ええ。それは構わないけれど……」
「ありがとうございます。ではよろしくお願い致します」
ベルナデットの了承を聞くなり走り去ったイザベルを見て、ベルナデットだけでなくカロリーヌも首を傾げた。




