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◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「はぁ、怖かったわ……」

「お疲れ様ですお嬢様」


 ベルナデットは自室に戻ると勢いよくベッドに飛び込んだ。

 レティシアに連れていかれたのはサロンで、「長いこと馬車に乗っていて疲れたでしょう?」と労いの言葉をかけられてから紅茶とお菓子を並べられた。

 しかしその目は相変わらず冷え冷えとしており、ベルナデットが紅茶を一口飲んだタイミングで「それで?」と一言尋ねられた。

 ベルナデットはその威圧感に冷や汗を流しながら後ろに控えるリディに助けを求めようとしたのだが、「私は貴女に聞いているのよ?」と逃げることは許されなかった。

 結局ベルナデットはフオと率先して戦ったことから自らこの髪型をリクエストしたことまで全て白状し(男子制服の事はなんとか隠し通した)、その後小一時間レティシアから叱られることとなった。

 ちなみにレティシアの怒りを和らげようとして買ったお土産だったが、何と説明しようかということで頭が一杯だったベルナデットはその存在をすっかり忘れており、思い出したのは一通り説教が終わった頃だった。


「こういう時は身体を動かすのが一番だわ! マティアス先生かブリジット先生はいらっしゃるのかしら?」

「今日はお二方ともいらしていないようですよ」

「そうなのね。ならアラン……は怪我をしているんだったわね。お兄様は忙しいのかしら?」

「どうでしょう? ご本人にお尋ねしてみては? お忙しかったとしてもお嬢様が行けば喜ばれると思いますよ」

「うーん、そうかしら? まあリディがそう言うのなら行ってみるわ!」


 ベルナデットは元気にそう宣言して、ジェレミーの部屋まで駆けて行った。



「お兄様! お時間はありますか!?」

「ベル、ノックをした後は返事を待たなければいけないよ?」

「次回から気を付けますわ!」


 ジェレミーの部屋に着くと辛うじてノックはしたものの、ベルナデットは返事を待たずにそのままの勢いで部屋に飛び込んだ。

 ジェレミーは仕事中ではなかったようだが、部屋にはフェリシテがおり「もしかして邪魔をしてしまったかしら」と申し訳なく思った。

 それが顔に出たのだろう、ベルナデットを見たジェレミーが嫌そうに顔を顰めた。


「お前が何を考えているかは知らないが、たぶんそれは的外れだからその顔をやめろ」

「何を考えているのか分からないのであれば、的外れかどうかもわからないんじゃないかしら?」

「お前の性格とその顔から大体想像はつく」


 そんなに分かりやすいかしら? と首を傾げたベルナデットがフェリシテを見ると、彼女も笑いながら頷いたので、ベルナデットはフェリシテに尋ねた。


「本当にお邪魔ではなかったかしら?」

「なんでフェリシテに聞くんだよ」

「だってお兄様は照れ屋ですから本当の事を教えてくれそうにありませんもの」


 ベルナデットの言葉にジェレミーは自覚はあるらしく、顔を顰めはしたが反論することは無かった。


「ふふ、ベル、本当に大丈夫よ。ただ夏季休暇の間にベルと何して遊ぼうか話していただけだから」

「まあ! その話し合い、私も混ぜていただけませんか?」

「勿論。ベルは何がしたいの?」

「お兄様やお姉様と久しぶりに手合わせがしたいですわ! あとピクニックにも行きたいし、街にも行きたいです! それから……あ! また魔物退治のお手伝いもしたいですわ!」

「ベルは相変わらずだな」


 やりたいことの大半に戦うことが入っており、ジェレミーは呆れた顔をした。手合わせや魔物退治は勿論だが、ベルナデットの言うピクニックや街に行くというのも過去ジェレミーと出かけた時に何かしらトラブルが起きたことがあるのでそれを期待しているのだろう。


「じゃあそれはするとして、他にも何かやりたいことが見つかったらいつでも言ってちょうだいね。夏季休暇はたっぷりあるのだから」

「確かに私は夏季休暇ですが、お兄様とお姉様はお忙しいのでは?」

「せっかく可愛い義妹が帰ってきているのだから、ベル優先に決まってるじゃない! ねぇジェレミー?」

「別にそういう訳じゃないが、ベルと遊ぶ時間くらいあるから大丈夫だよ」

「本当? ならよろしくお願いしますわ!」


 ベルナデットのうきうきとした顔を見て、ジェレミーとフェリシテも笑顔になった。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「ベル、学園生活はどうかしら?」

「とっても楽しいですわ!」


 とりあえずまずは学園での話を聞かせて欲しいとフェリシテに言われ、ベルナデットは彼女の隣に座って嬉しそうに学園でのことを話した。


「そういえばグルナ先輩に会いましたわ! 手合わせをしていただいていますの!」

「エリックと? あなたたち面識がなかったのによく分かったわね?」

「シャルル殿下に紹介していただきましたの」

「待て。ちょっと待て。ベル、誰に紹介してもらったって?」

「シャルル殿下ですわ。本当は殿下と手合わせがしたかったのですが断られてしまって、代わりにグルナ先輩を紹介してくれましたの」

「何をしているんだお前は……」


 ベルナデットの話を聞いてジェレミーは頭が痛いと言うように顔を顰めて額に手を当てた。フェリシテは驚いた顔をしている。


「別に私が無理やり迫った訳じゃありませんわ。授業中に窓の外から矢が飛んできてそれを私が対処したので、同じクラスのカロリーヌ殿下が助けられたからとシャルル殿下が自分に出来ることなら何でもお願いを聞いてくれると言ってくれたのよ。だから私が昔お兄様から聞いた話を思い出してシャルル殿下に『手合わせをして欲しい』とお願いしたのだけれど、それは出来ることに入らなかったらしくて代わりにグルナ先輩を紹介してくれたの」


 ベルナデットとしてはこの上なく丁寧にそうなった経緯を説明し自分の正当性を主張したつもりだったのだが、それを聞いたジェレミーは頭を抱えてしまい、フェリシテも困った顔で笑った。


「すっかり忘れてた。そうだよ、シャルル殿下はベルの1つ上、カロリーヌ殿下はベルと同じ歳だったわ。ベル、好き勝手に振舞うのはもう諦めるが、首を刎ねられるようなことだけはしないでくれよ」

「失礼ね。そんなことしませんわ」

「結構ギリギリなんだよなぁ」

「私もちょっと心配だわ」


 ベルナデットは至極当然だと言わんばかりにそう答えたが、ジェレミーだけではなくフェリシテにまでそんなことを言われてしまい、仕方なく口を尖らせながらも渋々と頷いた。

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