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ベルナデットは王都で買い物をする


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「なんだかとっても心許ないわ。普通のご令嬢はいつもこんな不安な気持ちなのね」

「普通のご令嬢というか、それがほとんどの人間にとっての普通なんですよ」


 夏季休暇初日、ベルナデットとアランはそんな呑気な会話をしながら王都の中心地を歩いていた。




 最初のテストを乗り切り(決して良い成績では無かったが)、エリックとの手合わせも2度程行い(エルネストとの関係も聞いた。小さい頃からの腐れ縁らしいが、ベルナデットのことをわざわざ話したりしないだろうから安心していいと言われた)、あっという間に夏季休暇がやってきた。

 夏季休暇前の魔力制御の授業ではやっと身体強化についての内容に入り、ベルナデットは漸く身体強化しない方法を身につけた。魔力を循環させる魔道具に魔力を流し込む機能がついたものを使って感覚を覚えさせられたのだが、その際にベルナデットは「あれ? もしかしてあの図書室へ通った日々って無駄だったのでは?」と切ない気分になったのは余談である。



「コレットにお土産を買って帰ろうと思うの!」

「そうですね。喜ぶと思いますよ」


 帰り支度を終えた馬車の前、ベルナデットの提案にアランが笑顔で頷いた。


「ついでにお父様とお母様、お兄様にマティアス先生、アドリエンヌ先生、ブリジット先生……」

「リストを作りましょうか。あと、その『ついでに』って絶対に渡す時に言っちゃ駄目ですよ」

「分かっているわ! それでアラン、お土産を選ぶのを手伝って欲しいの」

「勿論です。帰りが遅くなるとコレット様が怒……悲しむと思うので、リストを作ったらすぐに行きましょうか」

「ありがとう! そうね! 私も早くコレットに会いたいし、急いで選びましょう!」


 アランが御者に王都の中心部まで連れて行ってもらうよう指示し、ベルナデットは走る馬車の中で急いでリストを作った。


 歩いて行けるような距離であった為、馬車はあっという間に目的地に到着した。

 アランに続いてベルナデットが馬車から降りると、続いて降りてくると思われたリディはそのまま馬車からひらひらと手を振った。


「リディ? 行かないのか?」

「ええ。私はちょっと今からやらなければならないことがあるの。買い物はお嬢様と2人でよろしく」

「は?」

「お嬢様、朝の約束、よろしくお願いしますね」

「任せてちょうだい!」

「え」

「じゃあ、お嬢様とのデート楽しんで」

「ちょっ!? 何を……!?」

「さあアラン早く行きましょう! コレットが待っているわ!」

「あ! お嬢様! 走らないでください!!」


 初めての王都での買い物に浮かれながら走るベルナデットを、リディに揶揄われて赤い顔をしたアランが慌てて追いかけ、そんな2人をリディが笑顔で見送った。



「お嬢様、リディも連れて来た方が良かったんじゃないですか?」

「いいえ。実はリディに急ぎの用事を頼んだのは私なの。リディには来て欲しくなかったから……」

「お嬢様……それって……」


 アランが驚きながらも期待を込めてベルナデットに尋ねると、ベルナデットは笑顔で頷いた。


「ええ! リディの誕生日プレゼントを買おうと思うの!」

「…………ああ、そうですね。ええ、ええ、分かってましたよ……」

「お土産と一緒にしておけばあのリディでもきっとバレないわ! あ! このことはリディに言っちゃダメよ?」

「分かってますよ。さあ、早く行きましょう」


 少し沈んだ様子のアランの声に、ベルナデットは首を傾げた。


「アラン? 疲れたかしら?」

「はははそんなことないですよ。それよりリディの言っていた『朝の約束』って何ですか?」

「ああ、約束って言うのはね、今日お土産を買いに行こうと思うのって朝リディに伝えたら、リディが『せっかくだから今日一日身体強化を使わない練習をしましょう』って言いだして」

「何が『せっかく』なんですか?」

「ええと、私も良く分からないのだけど。リディ曰く『そんなに危ない事もないだろうし、何かあればアランに守ってもらえばいいから』って言っていたわ」


 本当に何も分かっていないベルナデットに対し、アランはどんな顔をしていいか分からず微妙な顔をした。

 アランはリディが絶対ベルナデットが彼女に用事を頼んだ理由も分かった上で、全力でこちらを揶揄いに来ていると確信した。


「ということで、私は身体強化を解くから何かあったらよろしくね」

「じゃあ、ついでに僕は身体強化の練習でもしましょうかね」


 そんな会話をしながらも、ベルナデットは先程からずっとどの店がいいかしらときょろきょろとしている。

 興味津々に浮かれている彼女とはぐれない為にも手を繋ぐべきかとアランは考えたが、結局その勇気は無く、守るためと自分に言い訳していつもより近い距離を歩くことしか出来なかった。

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