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「悪い。テストのことをすっかり忘れていたんだ」
約束の手合わせの日、訓練場にやってきたエリックはベルナデットの顔を見るなりそう謝罪した。
テストはもう来週に迫っており、訓練場は貸し切り状態である。
「大丈夫ですわ。今もアランと毎日訓練は行っておりますし、夜に勉強会もやってますのよ」
カロリーヌの部屋での泊りの勉強会をしたのはあの日だけだが、毎日自室でリディとの勉強会は続けている。また、気分転換にと談話室で勉強をする日もあるのだが、そういう日はあの勉強会のメンバーも来て一緒に勉強したりもしている。
「私はいいのですけれど、グルナ先輩のご迷惑になっていませんか? もしそうなら後日改めてでも構いませんわ」
「良かった。オレも構わないぜ。元々勉強もあまりしてないしな」
「まぁ! 優秀なんですね!」
「いや、潔く諦めるようにしてるんだ」
「まぁ……」
ベルナデットは爽やかに言い放ったエリックの意見に力強く賛成したかったが、アランの視線を感じて思いとどまった。アランに知られることは即ちリディに知られることと同義らしいので、ここ数日は殊更言動に注意している。
しかしベルナデットが中途半端に言葉を切ってしまったため、エリックにはベルナデットが呆れてそんな反応を返したという風に捉えられてしまったらしい。
「やっぱりベルナデットも勉強はきちんとした方がいいと思うか?」
「え? え、ええ、そうですわね。大事な事だと思いますわ」
「そうか……」
ベルナデットは質問をしたエリックに、というより、後ろで聞いているアランを意識して優等生的回答をした。
するとエリックは眉間に皺をよせ苦悶の表情でしばし顎に手を当て考え込んだ後、眉をへにょりと下げ申し訳なさそうな顔でベルナデットを見た。
「悪い。やっぱり手合わせは再来週に延期してもらってもいいか?」
「え? ええ、それは構いませんが……」
「ありがとう。お互いテスト頑張ろうな。じゃあまた再来週に」
そう言うとエリックは爽やかな笑顔であっという間に行ってしまった。
何故エリックが突然テストにやる気を出したか分からず戸惑ったベルナデットがアランの方を見ると、こちらはこちらでエリックが去った方向を難しい顔で眺めて何やら考え込んでいる。それを見たベルナデットは「やっぱりアランにもグルナ先輩の態度は不可解に見えたわよね」と一人納得した。
「あっ!!!」
その日の夜、リディと2人で自室で勉強していたベルナデットは、エリックにエルネストのことを聞くのをすっかり忘れていたことを思い出した。
突然の大声にリディは驚いた後、怪訝な顔でベルナデットを見た。
「どうしたんですか?」
「なんでもないわ! 分からなかった答えを突然閃いて思わず叫んでしまったの!」
「心臓に悪いので急に叫ばないでください」
「気を付けるわ」
ベルナデットは誤魔化せたことにホッと息をついた。大声を出した理由については「エリックにエルネストのことを聞き忘れた」という特に隠す必要もないことなのだが、それを言ってしまえば「今日エリックと手合わせをしようとしていた」という隠し事が芋づる式にバレてしまいそうだと思ったのだ。
まあ結局はこの後のアランとリディの密会中に凹んだアランから話を聞き、翌日全てを知ったリディから内緒にしていたことも含め苦情を言われることになるのだがこの時のベルナデットは知る由もなかった。




