ベルナデットは友達と勉強会をする
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「ここってどういう意味だったかしら?」
「それは『無理やり聞き出す』ですね」
「あ、そうだったわ! ありがとう」
「これどうやって解くの?」
「この計算を使うんですよ」
「何故?」
「この計算はこれとこれをまとめて省略したものだからこの問題の意味を考えると……」
「ちょっと待って。もうちょっとゆっくりお願い」
「あー、何年かが覚えられない!」
「それはもう覚えるしかないですね。頑張りましょう」
「語呂合わせとか考えるといいですよ」
只今の時刻午後9時20分。ベルナデットたちはカロリーヌとイザベルの部屋に集まってテスト勉強中である。
きっかけは本日朝の食堂での会話だった。
「お嬢様、お部屋でしているところを見たことが無いので確認なのですが、きちんと勉強はされていますか?」
「リディ、それはきっと爽やかな朝に美味しいごはんを食べながらしていい話じゃないと思うわ」
先程まで今日の朝ごはんも美味しいわねと平和な会話をしていた筈なのに、不意打ちのように耳が痛い話をされベルナデットは口を尖らせて不満げな声を出した。
「たとえ夜にこの話をしたとしてもお嬢様は『リラックスしてるこんな時間にする話じゃないと思うの』とか言うでしょう?」
「全くその通りね」
「テストまであと2週間です。図書室通いは続けているようですが、1日30分では十分な勉強は出来ていないのでは?」
「何故知られているのかしら?」
「アランが知っていることは私も知っていると思ってください」
「それは困るわ」
リディの言葉を聞いてベルナデットは焦った。アランなら呆れながらも許容してくれることでもリディだったら確実に怒られるようなことも少なくないからだ。
「聞かれたら不味い話でも?」
「えっ!? いいえ!? そんなことないわよ!?」
「無いというのも……アランにはもう少し頑張ってもらいたいところですね」
「悪い事なんてしていないわよ?」
「そういう意味じゃないですよ。それに悪い事をしているとは思っていないので大丈夫です」
「?? ならいいわ」
ベルナデットは自分がアランの目を盗んで悪い事をしていると思われているのかと思い否定したのだが、リディにため息をつきながら否定され良く分からないながらも納得した。
「それで、どうなんですか?」
「え?」
「勉強です。していますか?」
「い、一応しているわ」
「ではテストは問題ないのですね?」
「うっ……そうよ! 私リディとやりたいことがあるの!」
「やりたいこと?」
「ええ! 私、友達と勉強会がしてみたかったの!」
リディはベルナデットが勉強の話が嫌で話を逸らそうとしてそんなことを言い出したのかと思ってジトっとした目で見ながら尋ねたのだが、予想外の返答が帰ってきてキョトンと目を瞬かせた。
「勉強会?」
「ええ! 友達で集まって分からないところを教え合うの! どうかしら?」
「お嬢様と私が友達かと言われると違いますが、勉強会はいいと思いますよ」
「そこは友達で良いじゃない」
「侍女ですから」
ベルナデットとリディがそんな話をしていると、グレースとエステルがやって来て隣に座った。
「おはよー。なんか盛り上がってたね」
「おはよう。うふふ、リディと勉強会をするのよ!」
「成程。そういえばもうすぐテストだね。ベルもリディも勉強は得意なの?」
「うっ……身体を動かすことは得意なのだけれど……」
「あはは。ベルはそんな感じだね」
「そ、そういうグレースとエステルはどうなの?」
グレースにまで見破られていることに居心地の悪さを感じたベルナデットが自分から話を逸らそうと尋ねると、グレースは軽く肩を竦めた。
「あー、私もエステルも教科によるんだよね。出来る教科はめちゃくちゃ出来るけど駄目な教科は壊滅的でさ」
「ああ、そういえばエステルは音楽と美術と経済学の時間はいつも唸っていますね」
「えっ!? 本当ですか!?」
「無意識だったんですか?」
「うぅ、恥ずかしい……!」
「私、音楽と美術だったら比較的自信があるわ!」
「芸術はお嬢様の数少ない令嬢らしい特技ですもんね」
「ええ、まかせてちょうだい!」
「ベル、褒められてないわよ? ねぇ、その勉強会良ければ私たちも参加させてもらえない?」
「もちろん! 皆と勉強会出来るなんてとっても嬉しいわ!」
グレースの申し出にベルナデットが喜んで返事をした時である。
「あら、とっても楽しそうな話をしているわね。私たちもご一緒させていただきたいわ」
背後から聞こえたその声に、彼女たちは頷く以外の選択肢は用意されていなかった。
かくしてベルナデット、リディ、グレース、エステル、カロリーヌ、イザベルに、カロリーヌが誘ったクロエとベルナデットが巻き込んだエマを加えた8人での勉強会の開催が決定した。
大人数になってしまったからと、カロリーヌが「場所は一番広い私たちの部屋にしましょう、ついでに週末にしてお泊り会にしましょう」と提案した為誰も反対出来るわけもなく。
約束の週末、各自食事と入浴、着替えを済ませて集まり、ベルナデットにとって念願だった『友達との勉強会』が実現した。
最初こそ緊張していた面々であったが、分からない問題に悩み、質問して、解けた時に嬉しそうに笑うカロリーヌの自分たちと同じような姿を見て、次第に緊張も解れ普通の友達同士のように質問をし合えるようになっていった。




