従者たちの報告会2
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side:アランとリディ
「……遅い」
「仕方ないでしょう? お嬢様に説教していたんだから」
「ああ、聞いたのか」
「第三者からですけどもね」
リディはため息をつきながらそう告げた後、アランを見て首を傾げた。さっきから返答に覇気がない上、表情もどこか暗い。
「どうかしたの? 元気がないみたいだけど」
リディの指摘にアランは気まずそうな顔をした後、少し言葉を探してから口を開いた。
「リディは、今日の事どこまで聞いてるんだ?」
「どこまでって、たぶん大体全部聞いたんじゃないかしら? 見てたっていう子がそれはもう嬉しそうに順を追って話してくれたから。たしかシャルル殿下がお嬢様へのお礼としてグルナ様との手合わせの場を提供してくださって、お嬢様がグルナ様を瞬殺したのよね?」
頷くアランを見て、リディはこの話の中にアランが落ち込む要素があるかしらと考えたが特にそんなものは見当たらない。
以前のベルナデットがシャルルを気にしているかもしれないという誤解は既に解いた筈だし、瞬殺したというエリックにベルナデットが興味を持つこともないだろうと思い、リディは視線でアランに話すよう促した。
「……手合わせの後、次の約束をしたんだよ」
「約束? 誰と?」
「グルナ様と、また手合わせしましょうって」
「聞いてないのだけれど」
アランの話を聞いてリディは顔を顰めた。
「ちなみにそれはどちらから言い出したの?」
「お嬢様からだ」
リディの中でベルナデットへ追加の説教をすることが決定した。
「それで、貴方はお嬢様が自分以外の男と手合わせをすることが気に入らないの?」
「ち、違う! その、グルナ様がお嬢様を見る目が……なんて言うか、熱がこもっていたような気がして……」
言いながら分かりやすくしょげてしまったアランを見ながら、リディはアランの言うことが俄かには信じられなかった。
「瞬殺された相手に? 勘違いじゃないの?」
「いや、僕も最初はそう思ったんだけど……お嬢様と話してる時の顔が負けた直後とは思えないくらいめちゃくちゃ嬉しそうだったし、手合わせを願い出たのはお嬢様からだったけど嬉々として日付を決めていたのはグルナ様の方だった」
「それは……待って、グルナ様はジェレミー様の奥様の弟よね? と言うことはお嬢様の義兄ということになるわよね? なら義妹として可愛がってるっていう可能性の方が高いんじゃない?」
リディの指摘を受けて、終始暗かったアランの表情がやっと少しだけ明るくなった。
アランの周りの兄妹と言えばジェレミーとベルナデットだが、ジェレミーもなんだかんだ言いつつよくベルナデットのことを優しい目で見ている。
「けど、それとはちょっと、違う? ような??」
「まあグルナ様の心境なんか私たちが考えたところで分かるわけがないんだから、貴方の都合のいいように考えてたらいいんじゃない? 別にお嬢様がグルナ様に気がある感じだったわけじゃあないんでしょう?」
「それは今のとこないと思う……けど、もしグルナ様が本当にお嬢様に好意を持っていてアプローチされてしまったら、お嬢様が絆されるのも時間の問題だと思うと……」
再び落ち込んでしまったアランにリディはため息をついた。
生い立ちのせいか使用人という立場故かは知らないが、アランは自己評価がとことん低い。そのためエリックがベルナデットのことを好きならば自分に勝ち目はないと思っているようだが、リディからしてみればよっぽどアランの方が優勢である。
普通の貴族であれば使用人である時点で主人と結ばれるなどあり得ないだろうが、まずディアマン家は普通の貴族ではないし、ベルナデットの家族も反対していないどころかアランを応援している節まである。
リディとしてもベルナデットが幸せならばそれでいいし、アランのことも同僚としてそれなりに気に入っている為、背中を押すくらいしてあげてもいいとは思っている。
「そう思うなら、そうなる前にお嬢様を口説き落とせばいいでしょう」
リディの言葉にアランは一瞬ポカンとした後、一瞬で首まで真っ赤になった。
「な、ななな、何言って……!! 口説き落とすとかそんな……出来るわけないだろ!?」
(ああ。これ自己評価が低いとかじゃなくて、ただのヘタレだったわ)
途端に面倒くさくなったリディは、それでも激励の意味を込めてアランの背中をばしんと叩くと、そのまま女子寮の方へ歩き始めた。
アランは暫くその場でリディの後姿を見つめていたが、やがてひとつため息をついてから自分も男子寮へと足を向けた。




