ベルナデットは予想外の訪問を受ける2
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「ベル! リディ!」
寮の食堂でどこに座ろうかとリディと話していると、近くのテーブルから声をかけられた。
見るとグレースとエステルが手を振っていたので、2人はそのまま彼女たちの隣に座った。
「随分遅かったわね?」
「お嬢様がいつまでも訓練場で遊んでいたもので」
「否定はできないけど、もうちょっと言い方がないかしら?」
リディの話を聞いてパッと顔を輝かせたグレースは、悪気無くベルナデットにとっての爆弾を落としてきた。
「そういえばベル! エリック様に勝ったって本当?」
「……エリック様?」
「あれ? もしかしてデマだった? エリック・グルナ様、シャルル殿下の紹介で騎士団長のご子息様と手合わせをすることになって、挙句勝ったらしいって噂を聞いたんだけど」
止める間もなくグレースに全てを暴露されてしまい、ベルナデットはぐるんとリディから顔ごと目を逸らした。
後頭部に「説明しろ」という視線をビシバシ感じながら出来るだけ穏便に済ませるにはどう説明するべきかベルナデットが必死に考えていると、更に別の方向からベルナデットにとって絶望的な声が聞こえた。
「デマじゃないですよ! 私その場でしっかり見ましたから! とっても恰好良かったんですよ!」
「えっと、どちら様?」
「あ、すみません! 私エマ・クワーツと言います。ベルナデットと同じクラスです!」
「そうなんだ。私はグレース・トゥルクワーズ、こっちは私の侍女のエステル。よろしくね」
「私はベルナデットお嬢様の侍女のリディです。お嬢様がお世話になっております。ところで、今のお話もう少し詳しく聞かせてもらっても?」
「勿論です!」
「あ、私たちにも敬語はいらないわよ」
ポンポンと目の前で進んでいく話に割り込むことも出来ず、ベルナデットはもう成り行きに身を任せることにした。きっとどう説明しても怒られることには変わりはないのだからと諦めたとも言う。
「まずきっかけとなった一昨日の出来事からかしら。ベルナデットは授業中にも関わらず窓の外から何の前触れもなく飛んで来た矢に瞬時に気が付いて、それを軽々と素手で掴み取ったの! しかも窓が割れて周りの生徒が怪我をしないように、矢が飛んでくる前に軌道上の窓を開けるという配慮まで完璧だったわ!」
それを聞いてリディがひくりと顔を引きつらせた。素手で掴み取ったところはリディには誤魔化していたので、怒られる内容が更に1つ追加されてしまったとベルナデットは蒼褪めた。
「それで昨日、事件の事を知ったシャルル殿下がベルナデットに会いに来たの。ほら、うちのクラスってカロリーヌ殿下もいらっしゃるでしょう? ベルナデットのおかげでカロリーヌ殿下も無事だったから、お礼をさせてほしいって話になって。それでベルナデットとエリック様が今日の放課後手合わせをすることになったの。私はそれを聞いてクラスの子と一緒に見に行ったのよ」
ベルナデットは最初王子に手合わせを申し込んだことや、ベルナデットからお礼の内容を指定したことを飛ばして説明してくれたことにホッとした。最もお礼が手合わせということから、ベルナデットから言い出したことであることなど聞くまでもなく明白であることにベルナデットは気づいていない。
「沢山の人が見に来てて、ちょっとしたお祭り状態になってしまっていて驚いたんだけど、それ以上にベルナデットの動きに驚いたわ。まるで動きが見えなかったんだもの! 気づいたらエリック様が倒れていて、皆予想外の結果にしばらく何も言えなくなっていたわ」
ベルナデットは、「とっても恰好良かった」とその時のことを思い出しながらうっとりするエマをひたすら見続けた。怖くてリディの方を向けない。
どうすることも出来ずそんなことを考えていると、また予想外の出来事が起こった。
「まあ! ベルナデット様がエリックに勝ったって本当だったのですね!」
「ベルナデット嬢、強いのね」
声につられてそちらを見ると、3人の女子生徒が立っていた。
しかも最初に声を上げたその人は――
「カロリーヌ殿下?」
ベルナデットが驚いて思わず零した名前に、カロリーヌは楽しそうににこりと微笑んだ。




