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ベルナデットは森で少年と出会う


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 ベルナデットが前世を思い出してからあっという間に1年が経った。

 最初の頃はあまりの別人っぷりに本当に大丈夫だろうかと周りは心配していたが、ひと月もすればみんな成長として受け入れた。

 ベルナデットは宣言通り勉強も運動も頑張っていたが、じっと座っているのが苦手なようで勉強はなかなか思うようには進んでいない。

 一方運動の方は向いていたらしく、もう屋敷中を走り回ってもあの日のように動けなくなることはないし、剣術もマティアスから少し年上の少年にも勝てるだろうと言ってもらうことができた。

 未だにジェレミーには勝てないが、ベルナデットが稽古をしている間ジェレミーも同じようにがんばっているので追いつけないのは当然だった。

 むしろジェレミーはベルナデットと言い合いをした日から絶対に負けたくないとそれまでより一層真剣に取り組むようになったため、今では並みの大人なら勝てるようにまで強くなっていた。



「今日は近くの森に行ってみましょうか」

「ほんとう!? やったぁ!」

 

 マティアスの提案にベルナデットは飛び跳ねて喜んだ。

 近くの森、というのは屋敷から馬車で10分ほど行ったところにあるグラースの森と呼ばれる場所で、ちょっとした魔物が住んでいる。

 ディアマン領はなかなかに広大であり、森や山、湖に荒野など自然も多くある。

 それらの場所には大抵魔物が住んでおり、さらに年に数回は人の住処に入ってきてしまうこともある。

 そのためディアマン領の人々は最低限身を守れるように鍛えており、子供たちはある程度力がついたら弱い魔物しかいないグラースの森に魔物退治の訓練をしに行くのが習わしとなっている。

 ちなみに表向きは子供だけでとなっているが、実際はほとんどの親が心配してこっそりとついて行って見守るというはじめてのおつかいのような行事でもある。

 

 ベルナデットはメイド長のセリーヌが12歳の時に初めて森に行ったと聞いていたので、まさかこんなに早くに許可がでると思っていなかった。

 実際ディアマン領に住んでいるといっても少女は基本的に守られる側であり、身につけるのも護身術程度。何かあっても困るので、大抵12歳前後にするのが一般的である。

 ひとつ年上であるリディはまだ森へ行ったことはない。

 少年であれば6歳で森に行くことはそう珍しくもないが、それでも一般的には7歳前後とされているため少年であっても早い方となる。

 ちなみにランベールとジェレミーは共に5歳の時に森へ行って30分もしないうちに魔物を退治して戻ってきている。



「なにがでるかな♪ なにがでるかな♪」

 

 ベルナデットはごきげんに歌を歌いつつ、ガサガサと茂みを掻き分けながら進む。

 その背後には、他の親たちと同じように心配したベルナデットの両親から頼まれて後をつけるマティアスの姿があった。

 マティアスは気配に敏感なベルナデットに見つからないようにだいぶ離れたところから尾行しており、ベルナデットは尾行に全く気付いていない。


「うん?」


 と、突然これまでごきげんに突き進んでいたベルナデットが疑問の声をあげ足を止めた。

 同時にマティアスも止まる。後ろから見ているので正確にはわからないが、遠くの方を見つめているように見える。マティアスも目を凝らしてみるが、彼の位置からではベルナデットが見ているものを確認することができなかった。


「!!」


 マティアスは焦った。

 立ち止まっていたベルナデットが突然走り出したからだ。

 ベルナデットは子供とは思えないほど足が速い。

 対してマティアスはもう初老と呼ばれる年齢であり、その年にしては速いがベルナデットにはとても追いつけない。


 幸いにもそれほど長い距離を走らなかったのでマティアスは何とかベルナデットを見失わずに済んだ。

 見失わずには済んだのだが、立ち止まったベルナデットがその手に掴んでいるものを見て、思わず自分が隠れていたことも忘れてベルナデットに駆け寄った。


「あら先生、ちょうどよかったわ。この子、だいぶ弱っているみたいなの。連れて帰っていいかしら?」

「……お嬢様、犬猫じゃないのですよ?」

「何を言っているの? わかってるわよ」


 自分は何もおかしなことを言っていないとでもいうようにベルナデットが言った連れて帰りたいもの――それは逃げようとしたことで気絶させられたベルナデットより少し年上の少年だった。

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